落ちたら腹ペコゾンビ
エルス
第1話 プロローグ 荷物持ちカービー(改稿)
嘆きの迷宮……迷宮秘宝「神のかけら」を手に入れた者は巨万の富を得られると言われ、命知らずの迷宮ハンター達が今日も危険を承知で足を踏み入れていく。
……
「この迷宮には死者を蘇らせる悪魔の欠片があるらしいッスよ」
中級ハンターの聖職者ルナと剣士リリスの二人の少女は不幸な死者が出ぬよう迷宮の巡回中だ。
「迷宮秘宝なの?巨万の富を生む神の欠片なら有名だけど」
「死者を蘇らせるッスよ」
「もし本当なら権力者達がこぞって探しにくるわね」
奥が騒がしい。
「ゾンビが出たぞ!」
「1階層でも時々出るのよね、ルナが悪魔の欠片なんて話をするからじゃない?」
「リリス言いがかりッス。こんな時のために私みたな聖職者が巡回しているッスよ」
声の方へ向かう二人。しかし彼女達が戻ることはなかった。
・・・・・
迷宮前の広場で若いハンター達が迷宮秘宝について語っている中。
「迷宮秘宝? 俺には関係ないけどな」
男はぼやきながら背負ったリュックのひもを締め直す。
男の名前はカービー。
中年の荷物運び屋だ。
彼の特殊スキルは「アイテムストレージ」魔力があれば沢山の荷物を持ち運べる誰もが羨むスキルだ。ただ、彼は少し変わっていた。
「スキル持ちだが、これ目当てで殺されかけたこともあるからな……めんどくせえがこのリュックで今日も荷持ちだ」
そう思いながらカービーは大きなリュックを背負い、ただの荷物持ちとして偽装して働いていた。
・・・・
カービーの今日の仕事は捜索パーティの荷物持ち。
迷宮で消息を絶った若いハンターの捜索だ。
ハンターの生死を確認し、可能なら救出するというもの。
……もっとも、嘆きの迷宮で行方不明になった時点ですでに手遅れの可能性が高い。
そう思いつつ、「俺の仕事はあくまで荷物持ちだ」そう自分に言い聞かせながらパーティの後を追う。
彼はまだ知らなかった。
この捜索が自分の運命を大きく変え、「迷宮に囚われる側」になることを。
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