壮大な使命を託された幼児が「困ってる人がいるの?」と首を傾げるその一言で、この作品の温度が全部分かる。救国ファンタジーの骨格を持ちながら、主人公の視野はあくまで「目の前で困っている誰か」だけ。そのズレが愛らしく、かつ物語の推進力になっている。カートン卿のツッコミも絶妙で、重くなりすぎない緩衝材として機能している。読んでいて疲れない、でもちゃんと話は動いている、という稀有なバランス。同じ作者の怪盗令嬢ものとは全く違う顔を見せてくれる一作。