嫌な相手

さて、俺の作ったチャート計画表を確認してみる。

まず最初に誰を攻略するか俺はそれを改めて確認した。


「(まっ、消去法で言えば、ハナイノか)」


最初はやはりハナイノだった。

理由は色々あるが、単純に言ってしまえばもうハナイノには時間がないからだ。

少なくとも後一か月、早くて一週間以内にこいつは死んでしまうだろう。


こいつの家系、その当主である親父の手によって実験物として肉体改造を行っていて、既に粗方の改造は済まされている。

そのクソ野郎は、最終段階に移ったハナイノを化け物として転生させるつもりだ。

だからなるべく早くハナイノを救ってやらなければならない。


「(最終段階になっちまったら、今の俺じゃあなぁ……)」


もしも化け物に生まれ変わったら、その時はハナイノの親父は、ハナイノによって殺されてしまう。

それはいい気味であり、自業自得であるのだが……、問題はそこからでその状態になったハナイノには、最早意識というものは存在しない。


ただ自分の感情に従って動くだけの本能的害獣、いや、害虫というべきだろうな。

そして、その状態のハナイノが優先する感情とは恋慕だ。

そうなると俺に恋慕を抱くハナイノはまっすぐに俺の元へとやって来るだろう。


多くの人を犠牲にしながら俺を殺しにやってくる。

俺はそれによって、最終段階ハナイノに十七回も殺された。

なので、まずはハナイノを救う為にどうすればいいのかを、チャート表を見ながら確認する。


「……やっぱ、経験以外とすれば」


まずは俺に足りないものは力だな。

いくら経験があっても、ハナイノの親父を殺すのには力が必要だ。

だから、まずは武器の回収をしなければならないのだが……これがまた骨がいる作業だった。


「はぁ……あの人に、逢うしかねぇか」


それはとても億劫で絶望的で、出来る事なら二度と出会いたくないと思ってしまう程に、俺はその人間が苦手だった。


だが仕方がない事だ。

少なくとも、あの人と相対しなければ俺はこのループから脱却する為の手がかりすら掴める事はは出来ないし、そもそもこの計画が破綻してしまう。


本当に面倒だけど……物凄く、マジで嫌だけど、会いに行くしかなかった。



俺は重い足取りでグラウンドへと向かう。

その人はいつもグラウンド付近で待機していた。


グラウンドはとにかく広かった。

グラウンドに降りるための階段に腰を下ろしながら手に握り絞めるのはスキットル。

なんともつまらなさそうに……または気分が悪そうに顔をしかめながら酒を飲んでいる。

その姿は年老いた落伍者のようだが、その言い分は言い得て妙かもしれない。

その人はかつて裏社会の精鋭部隊隊長であり……贄波璃々の父親でもある人間なんだ。


名を、贄波にえなみ阿羅あら

俺が知る中で最強の祓ヰ師だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る