第7話 殺害動機

 今回殺されたのは、

「晴彦青年であり、殺害したのは、親父である光彦氏」

 だったのだ。

「目の前で、息子が倒れて死んでいるのを仁王立ちになって、逃げることもせず、震えながら立ちすくんでいた」

 というのが、第一発見者の言葉であった。

 父親は完全に憔悴していて、

「あれでは、自殺をする勇気もないくらいだった」

 というほど、

「意識があるのが不思議なくらいだ」

 というくらいに見えたのであった。

「第一発見者というのは、郡司親子とは家族ぐるみでの付き合いだった人であり、結構いろいろと、面倒を見ていたのだった。

 母親は、晴彦が小学生の頃に亡くなった。

 晴彦が、中学時代に、

「雄二の親友になった」

 というのは、

「晴彦にも晴彦なりの事情」

 というのがあったからだった。

 晴彦は、小学生の頃、友達が数人はいたが、母親が死んだ時、子供とはいえ、その時に、友達の言動が、

「容認できない」

 と思えるような理不尽さを感じたことで、

「友だちとして一緒にいる」

 というのがいやだった。

 ということで、友達関係を解消したのであった。

 相手も、

「何のことか分からない」

 ということで、きっと理不尽に感じたことだっただろう。

 だから、お互いに相手にしないということで、友達が自然消滅したかのようになっていたのだった。

 だから、晴彦は、

「友だちは当分いらない」

 と思ったことだろう。

 ちょうど、

「オリンピック選手になりたい」

 というような思いを抱いた時だった。

 これは、晴彦が、きっと、

「母親の死」

 というものに直面した時、何かを感じたことで、そう思ったのだろうと感じたが、その感じたことが何だったのか?

 ということは、分かっていなかった。

 ただ、その頃から、

「何かがあった時、連鎖的に、自分が感じたことが、考え方や行動に影響してくるのではないか?」

 と感じるようになっていた。

 だから、

「親友となった雄二との関係」

 というのも、

「自分の中で見えない何かに操られてのこと」

 と感じた。

 だから、晴彦自信も、

「雄二のことを親友だ」

 と思うようになったのだ。

 そこで話を聞いてみると、

「父親が医者で、自分の去就について悩んでいる」

 ということを聞くと、

「俺と似たようなところがあるんだな」

 と思うようになり、晴彦とすれば、

「俺は連鎖を感じるようになったことで、人と絡むのであれば、相手のことが、よくわかる」

 というような相手になるはずだ。

 と感じるようになったのだった。

 だから、

「雄二が死んだ」

 と聞いた時、

「自殺しかないだろうな」

 と思ったのだ。

 確かに、他殺の可能性がゼロだとは思わなかった。

 殺人というものは、

「動機として、恨みなどの直接的なものだけとは限らない」

 と思ったからだ。

 というのは、

「誰かの犯罪を目撃してしまった」

 などということで、

「相手に狙われる」

 ということもあるはずだからである。

 それを考えると、

「ゼロかそれ以外の可能性なのか?」

 あるいは、

「百か、それ以外のパターンなのか?」

 ということが考えられる。

 それが、

「一般的な他の人のような関係」

 というものと、

「親友としての自分たちの関係」

 ということの違いとなるのではないか?

 と考えるのであった。


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