魔王殺しRTA ~転生したけど妹ちゃんにご飯を作るため、手っ取り早く帰ります~

わたあめとは哲学である

魔王殺しRTA ~転生したけど妹ちゃんにご飯を作るため、手っ取り早く帰ります~

 妹がいる人いない人、誰であっても構わない。ここに問おう、妹は好きか? もちろん、そう聞かれて、頷かない者などいないだろう。


 だがしかし、ここにいる若者はそれとは少し違った。違うと言っても、嫌いという訳ではなくて……


「大好きです! はい」


 頷き過ぎて首が360°回ってしまったのだ。




「そういう訳で貴方は死んだの。でもその時にユニークスキルに覚醒したから、異世界で魔王を倒してきてくれない? 倒せたら望みを一つ叶えてあげる」


 享年16歳、兄頭・妹唯アニガシラ・メイ。死因は新作アニメに関する街頭インタビューに答えたことによる、出血死。


「妹に会わせろ」


「それも魔王を倒してくれたら良いわよ」


「いいから妹に会わせろ。飯を食わせたい」


「だーかーら、倒せって言ってるでしょ!」


「話が合わん神だな! もういい会わせろぉぉ!!」


 その瞬間アニガシラの体は宙に浮かぶようにして高速回転し、女神へと突撃する。


「グフォッ! ……そうよ、それが貴方のユニークスキル妹への愛ローリング・ラブ、よ」


 女神は自身の胸元に突撃してきたアニガシラへ向けて告げる。 


「あれ……どこ?」


 しかし、その時には既に彼の体はどこかに消えていた。


「まさか……」


 女神は気づいてしまった。アニガシラの通った空間に大きな裂け目が発生していることを。


「光速を遥かに凌駕しているって言うの!?」


 それらは、アニガシラが自分の力だけで異世界へ行ったことを示していた。


 

 

「おおー! 勇者よ、召喚に応じてくれたか! 遥か北にいる魔王が……」


 とある国の王は、ようやく召喚に成功した勇者へと話しかける。しかし、その方向には 誰も いない。


「おぉん? あな? ……ブフォー!!」


 誰もいないことに疑問を抱いた瞬間、天井に空いている穴に気づいたその瞬間、途轍もない風圧が王を襲う。


 そうこの時、勇者アニガシラは既に妹への愛ローリング・ラブを使い、光速を持ってして北へと飛びたっていたのだった。


(ではまた会おう! 勇者アニガシラよ!)


 そんな中でも心優しき王は、風によって城ごと吹き飛ばされながらも勇者による魔王討伐を願っていた。


  

 

「ふむむ……ん? まずはこっちだ!!」


 魔王ではなく、あくまでも妹を探すために空を飛んでいたアニガシラのレーダーに、一体の敵が映る。


妹への愛ローリング・ラブ!!」


 見えないけれど、敵は大きな建物の中にいるようだ。敵は倒さなきゃならないとアニガシラは中へ強硬突破する。



「ゲフッ……ゲフッ! 随分とド派手な登場じゃない……貴方が勇者アニガシラね。そう私がマォ」


「貴様!! 姉だな! 姉というのは妹を虐める存在! 時間は惜しいが倒さねばならん!」


「あら、よく分かったわね。私に妹がいることを……、でも良いのかしら? 私を倒してしまって」


 その時、アニガシラのレーダーに新たな反応が。


「まさか……いや、まさか……!!」


「そうよ私、妹なの。ね、お兄ちゃん?」


 魔王の言葉の直後、瓦礫の下から一人の男が出てきた。


「あ、ああ、ソウダネー」


「いや、でもさっきまで……貴女は妹じゃ無かったはず。俺のレーダーは……」


 アニガシラはショックを受けていた。先ほどまで貶していた存在が妹だったことに。そして、間違えてしまった自分の愚かさに。


「魔王軍をあまり舐めないでくれる? 貴方がこの世界に来た瞬間から私達は情報収集していたの。勇者アニガシラが妹好きだって事くらいすぐ分かるわ」


「でも、それだけじゃ、さっきの質問の答えにはならないはずだ!」


 その言葉に、魔王は少々気まずそうにしながら答える。


「ちょうど今、親にして貰ったのよ、その……離婚と結婚。まあだから正確にはお義兄ちゃんと義妹な訳だけど、それでも貴方は妹と認識するでしょう?」


「ぐぅ、そうだ、そうなんだよぉー!!」


 勇者アニガシラは葛藤していた。魔王を倒し、自身の妹の元へとすぐに向かいたい。ご飯を食べさせたい。しかし、魔王は姉かつ義妹とは言え妹。手を出すにはいかなかった。


「さぁ! これで世界は私たちの物! 勇者アニガシラ、諦めることね」


 城の階下から、勇者を捕らえるべく多くの兵がやって来るなか、アニガシラはある事実に気がついた。


「ハッ、そういうことか! もう迷わんぞ! 妹に会わせろ、妹への愛ローリング・ラブ!」


 その事実はアニガシラにとってもやや予想外、そりゃあレーダーも誤認する訳だった。


「なん……で、妹の私に……」


「知らんのか? 妹への愛ローリング・ラブ! 日本国の法律だと、妹への愛ローリング・ラブ! 再婚しただけじゃ妹への愛ローリング・ラブ! 兄妹にはならないんだ」


「ニホン? 何よ……それ……グホ」


「来世では……妹になるんだな」




「そういう訳で、貴方の願いは妹に会いたい、つまり死ぬ直前に戻るで良いのよね。ならこのゲートを潜って」


妹への愛ローリング・ラブ


「でも今、地球は……あ」


 女神がゲートを出した瞬間にアニガシラの姿は消えていた。




「妹ちゃぁーん! 今行くよー!」


 妹が数多くいるこの星では、周囲に被害が出てしまう妹への愛ローリング・ラブなど使うことは許されない。できる限りの全力疾走で我が家へと向かう。


「ふう……ふう、ついた。たっだいまー!」


「あ、お兄ちゃん! お帰りなさい」


「久し振りの妹だー! 今ご飯作るからね」


「久し振りって……コンビニ行ってただけじゃん。……ん? どうしたの?」


 魔王との戦闘により研ぎ澄まされたアニガシラのレーダー。それは、確かに目の前の存在を妹と認識しているが、どこかおかしい。


「お前、妹ちゃんではないな?」


「そんな訳……」


妹への愛ローリング・ラブ


「グフォ……ああ、そうだ。DNAは全く同じなのによく気付いたな、私は妹ではない。本物はある場所にて預かっている」


「それは、どこだ?」


「言うわけ無かろう! 返して欲しくば、憎たらしい神どもを抹殺してこい!」


「分かった。妹への愛ローリング・ラブ


 妹の為ならば何でもやる。アニガシラはこの世が割れるほどの怒りを抑えながら、光速による空間転移にて神界へ向かう。


 こうして、勇者アニガシラ・メイの新たな戦いが始まった。




~~~

読んでくれてありがとう、終わりです。

わたあめ先生の次回作にご期待ください。 


星とかハートとかブクマとか感想とか二週目読むとかしてくれたら喜びます。無料の募金だと思ってやってください。





 

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