俺の名前は佐藤浩市(笑) ~あの名優と同姓同名ですが、嫁と元カノも同名で、免許センターに行ったら俺が20人いました~』

志乃原七海

第1話:【佐藤浩市の悲劇】同姓同名の罠





**タイトル:【佐藤浩市の悲劇】同姓同名の罠**


俺の名は**佐藤 浩市(さとう こういち)**。

そう、あのダンディな名優と全くの同姓同名だ。顔面偏差値の格差はさておき、名前負けしない人生を送ろうと頑張っている。


そんな俺にも春が来た。長年付き合った彼女とついに結婚!

幸せの絶頂……のはずだった。


婚姻届を出して数日後、ふと気づいてしまった。

嫁の旧姓は「鈴木」。下の名前は「しおり」。

つまり、結婚して**「佐藤 しおり」**になったわけだが……。


「……待てよ?」


俺の背中に冷たい汗が流れる。

実は俺の**元カノ**、名前を「佐藤 しおり」という。

そう、まさかの**【嫁と元カノが同姓同名】**事案が発生してしまったのだ!!


スマホの連絡先リストを見る。

『佐藤 しおり』

『佐藤 しおり』


……どっちがどっちだ!?

アイコンを設定していなかった俺の怠慢が、ここで牙を剥くとは。


ある金曜日の夕方。

仕事が早く終わった俺は、上機嫌で嫁に電話をかけた。


プルルル……ガチャ。


「あ、もしもし? しおり? 今日早く終わったからさ、これから会えないか? たまには外で食事でもどう?」


電話の向こうで、少しだけ沈黙があった気がした。

でも、すぐに明るい声が返ってきた。


『……うん! いいよ! 久しぶりだね、嬉しい!』


「(久しぶり? 今朝も会ったけどな……まあ、外食が久しぶりってことか)じゃあ、いつものイタリアンで19時に!」


『分かった! 楽しみにしてる!』


――そして、運命の19時。

予約したレストランの前で、俺は花束を持って待っていた。今日はサプライズも仕掛けてある。


カツカツカツ……ヒールの音が近づいてくる。

俺は満面の笑みで振り返った。


「しおり! 待ってた……よ……?」


そこに立っていたのは、嫁のしおり……**ではなく、元カノのしおりだった。**


「浩市!!」


「えっ、あ、えええ!?」


彼女は感極まった様子で駆け寄ると、俺に勢いよく抱きついた。


「ありがとう! まさか電話くれるなんて……! 私もずっと会いたかったの! もう離さないんだから!」


「ちょ、え、あ、あの、しおりちゃん? これは……」


俺の脳内はパニック。

そうだ、俺は履歴の「もう一人の佐藤しおり」にかけてしまったんだ!

「いいよ!」というリターンは、復縁OKのサインだったのか!?


元カノの香水の匂いに包まれ、冷や汗が滝のように流れる俺。

「へ?」と間抜けな声を出すのが精一杯だ。


その時だった。


「……あら? 浩市?」


背筋が凍るような、聞き覚えのある声。

恐る恐る視線を横に向けると、そこには買い物袋を下げ、友人と偶然通りかかった**「現・佐藤しおり(嫁)」**の姿が。


嫁の視線は、俺と、俺に抱きつく女(元カノ)を鋭く捉えている。

その目は笑っていない。


「あ、あの、これは……人違いで……いや、人違いじゃないんだけど、間違いで……」


俺のダンディな人生(予定)は、ここでエンドロールかもしれない。

この先の俺の行方(ゆくえ)は、誰にも読めない――。


(完)

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