スキル【管理者権限】を手に入れたけど面倒くさいので放置します!〜お気楽異世界創造記〜
須賀和弥
001 「新世界~Hello New World~」
白い光。
まぶしすぎる光。
「自由に生きなさい」
柔らかく、しかしどこか確かな力を感じさせる声が耳元で囁く。
「あなたの望むままに……」
光が少しずつ薄れ、まぶしさが和らいでいく。
そして――
眩い光が完全に消えたとき、俺は冷たい風が肌を刺す、薄暗い森の中に立っていた。
見上げる空は淡い紫色に染まり、まだ夕暮れにも早すぎる時間のようだ。木々の影が長く伸び、足元には落ち葉のざわめきが広がる。
「……ここは、どこだろう……?」
自分がどこにいるのか、それどころか、自分が誰なのかさえわからない。
目線の高さに違和感を覚え、俺は恐る恐る自分の体を見下ろす。
――年齢は十ニ、三歳くらいか。鏡がないから確かではないが、体の大きさは間違いなく子どもだ。
あれ? 俺って何歳だったっけ? 少なくとも、もう少し……いやかなり大人だった気もするけど……うーん、思い出せない。
「まあ、考えても仕方ないか……」
無理に思い出そうとせず、深呼吸して気を落ち着ける。
「それにしても、ここは本当にどこなんだろう……」
声に出しても、答えてくれる者はいない。独り言――そう頭では理解しているのに、沈黙の森は余計に孤独を強め、心臓が少し早く打つ。
頭の中に突然、女性の声が響いた。
(報告。現在情報が不足しているため、現在位置を特定できません)
(…………!?)
不意の声に俺は飛び上がり、辺りを必死で見回す。
「だ、だれ!?」
幽霊…? それとも、死んでしまったのか?
そんな考えが頭をよぎる。
(応答。私は英知の書です。役割はあなたをサポートすることです)
幽霊らしき声は、落ち着いた口調でそう告げた。サポートという割には頼りなさそうだが……。
(報告。現在レベル不足のため、機能が不完全です)
どうやら、経験を積めばもっと的確に助言できるらしい。
でも、レベルってどうやって確認するんだろう?
(肯定。あなたの状態を確認することができます。ステータスウィンドウを開くには、「ステータス」と念じてください)
本当に…? 恐る恐る念じると、空中に淡い光の板が浮かび上がった。
――STATUS――
NAME:???
LEVEL:1
JOB:世界の管理者
SKILL:管理者権限Lv1・英知の書LV1・復元Lv1
「世界の……管理者?」
しかも名無し……!?
管理者権限って何? 英知の書? 復元? 謎単語が多すぎる。
(回答。管理者権限とは世界を管理するための機能です。英知の書は、サポート機能になります。復元とは……)
「いやいや、一気に言われてもわからないよ」
管理者権限で世界をどうにかできるってことなのかな?
自分の管理すらおぼつかないのに、世界を管理するなんて……無理……というより無謀じゃない?
そういえば、よく悪の組織や魔王が世界征服を目指すけど、目的って何なんだろう。
管理さえしっかりできるなら、悪の大魔王でも伝説の勇者でも、どっちでもいい気がする。
……まぁ、知らんけど。
(確認。あなたの職業は【世界の管理者】です。各種スキルは経験を積むことで権限を拡張可能になります)
淡々とした声。温かさも冷たさもない、まるで機械が読み上げているような声音だった。
よし、彼女(?)のことはサポートさんと呼ぶことにしよう。
「あの……俺はこの世界で何をしたらいいのかな?」
何をするにしても目的は欲しい。
(回答。あなたの目的は世界を管理することです)
すっげー壮大な目標頂きました!
じゃなくって!
今現在の状況で世界をどうこうできるわけもないし、できる気もやる気もない。とりあえずの目標というか右も左も分からない状況で俺は何をしたらいいのだろう。
そう考えていると。
(回答。まずは生き延びて下さい)
おお、単純明快かつ論理的。つまりは何も進展ないってことですね?
……ってか、そもそもどういう状況でこんなことになってんの?
目隠しされて連れてこられて、目隠しを取ったら森の中でした。
HAHAHA!面白そうな企画だね!
責任者出てこいや!
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