名もなき村
海藤日本
名もなき村
ある日の蒸し暑い夜、男性二人でドライブをしていた時に起きた話である。
二人は行った事のない道をドライブするの好きで、今夜も知らない道をただひたすら車で走っていた。すると、徐々に車通りのない場所へと入って行き、気付いた時には全く車通りも、人通りもない田舎村に辿り着いていた。
ナビで検索しても住所が出てこなかった為、二人は少し「気味が悪い」と思っていた。
すると助手席にいる男性がある物を見つけた。
「あの看板に何か書いてるよ」
そう言い、二人は車から降りてその看板を見に行く事にした。
その看板には、平たく言うと今の政治を批判するような文章が、赤い文字でたくさん書かれてあった。
二人はそれを見て背筋がゾッとした。
何故なら、この文字からは何とも言えぬ程の怒りと、憎しみのようなものを二人は感じ取ったからである。
二人はすぐに車に戻り、この村から出ようとしたが突然後ろから、猛獣に見られているような恐ろしい視線を感じた。
二人は恐る恐るバックミラーへ目をやると、村の人間かどうか分からないが、最低でも十人は居るだろう。
こちらへ向かって走って来ていたのだ。
暗くて顔等は見えないが、影で人間だと分かった。しかし、その人間達は多勢で走って来るにもかかわらず、足音が全くしない。
車の窓は開けていたのにだ。
「普通の者達ではない……」
そう思った運転席にいる男性は、慌てて車を発進させたが、人間達はまるで猛獣のような雄叫びを上げて追いかけて来た。
田舎道で道路が狭かった為、五十キロくらいしか出せなかった。
しかし、逃げるには十分な速度である。
だが、人間達はそれにも関わらず、離れずついて来るではないか。
「化け物だ……」
そう思った二人は、後ろを振り返る事をやめ、只ひたすら前を向いて車を走らせた。
やがて対向車線から車が出て来た。
二人は後ろを振り返ると、追いかけて来ていた人間達の姿はすでに消えていた。
「あの村は一体何だったのか? あの、人間離れした足の早い者達は一体何だったのか?」
その真相は謎のままである。
名もなき村 海藤日本 @sugawararyouma6329
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