第8話 駅でレベリング

 大阪駅。 ウィキによると西日本で最多の乗降客数を誇っており、世界的にもトップクラスの駅だとか。

 地元の人間としては人が多くて入り組んでいるので迷い易いぐらいの感想しか出ないわ。

 私も頻繁にいく訳じゃないから案内を見ながらじゃないと迷う――っていうか案内見ても迷う。


 そこそこの時間が経過した事もあって人はすっかりいなくなっており、代わりにゴブリンやコボルトがうろうろしているダンジョンもどきになってるわ。

 

 「電車は動いてないのか?」

 「さっきも少し触れたけど、大きな乗り物は専用のジョブに就かないと動かせなくなってるわ」

 「ならこんな有様になったら事故とかになっているんじゃないのか?」

 「詳しくは知らないけど、こうなった時に勝手に止まったって話は聞いたわね」

 

 だから高速道路では車も追突しておらずにそのまま並んでいるらしい。

 どうやらそれまでにかかっていた力や運動エネルギーが根こそぎ消えたとか何とか。

 飛行機も墜落せずにその場に着陸したらしいわ。 不思議ー。


 だから空港の近くのビルの上に飛行機がそのまま乗っかってるらしいわ。

 乗ってた人達は脱出に難儀したけど、ケガ人もほとんど出なかったとか。

 世界をこんな有様にした奴らは一体、何をしたいのやら。 


 「で、このまま抜けるって事でいいのか?」

 「それでもいいけど、先々の事を考えるとここでちょっとレベルを上げて置きたいわ」

 「具体的には?」

 「蓑鋤は最低でも10、できるなら15は欲しい。 後、そろそろ一回はスキル奪取を試しておいた方がいいと思うからそれも込みで」

 「数字の目安は?」

 「15ぐらいまでがゴブリンやコボルトで上げられる現実的なレベルだからよ。 私も『回復』でサポートするからそれで出来れば10ぐらいまでは上げときたいわ」


 狩場になっていない今なら比較的、安全にレベルを上げられる事もあってスタートダッシュを決めておきたいのだ。 10まで上げられたのなら私もスキルが二つ解放されるし、蓑鋤も三つ目が解放される。 それに運がよければレベルの高いゴブリンと遭遇できる可能性もあって可能ならそいつからそこそこ使えるスキルを奪えれば最高だけど、そこはあんまり期待しない方がいい。


 「分かった。 なら行くか」

 

 蓑鋤は即断。 わぉ、私の事を信じてくれるのは嬉しいんだけどちょっと判断が早すぎてびっくりよ。

 将来、変な奴に騙されないか心配よ。 私が守らなきゃ(使命感)



 グシャリ。 ゴブリンの頭が果物か何かみたいに中身と血をぶちまけて地面に散らばる。

 蓑鋤がさっき拾った消火器でぶん殴った結果だ。 ひぇ、グロいよぉ……。

 場所は変わって大阪駅前。 到着するや否や近くで不良学生のようにたむろしているゴブリンに近づくとおもむろに消火器で殴り殺したわ。


 残りには消火剤を吹きかけて怯んでいる隙に更に殴る、殴る、殴る。

 レベルが上がって身体能力が上がっている事もあって一撃で仕留めているわ。

 あっという間に10体以上のゴブリンを血祭りに上げると、派手にやったお陰か駅から次々とゴブリンが現れたわ。 5、10、20――って多すぎぃ!


 「蓑鋤! 流石に数が多い」

 「大丈夫だ。 見てろ」


 そう言うと蓑鋤は群れに飛び込んでいく。 ちょっとー!?

 前の時も割とイケイケだったけど覚悟決まり過ぎてませんかねぇ!?

 タイムリープした私の方が引いてるのってどういう事?


 ……それにしてもびっくりするほど強いわねぇ。


 初手でジョブを取った事で無駄なくレベルが上げられたけど、それを差し引いても強すぎる。

 普段から体を鍛える事に力を入れているのも知っているし、同級生との喧嘩でも負けなしだったのも知ってけど、ちょっと躊躇なさすぎじゃないですかね?


 でも、好き♡ 

 見ている間に囲まれて棍棒やらでボコボコ殴られ始めたので射程ギリギリの所に隠れて「回復」を使う。 殴られても構わずに殴り返しているから痛みを感じていないんじゃないかって疑いたくなるけど、ダメージは入っている筈なので治療は出来ているはず。


 ちなみに「回復」の射程は20メートルぐらいだから隠れながらでも案外、使えるのよ。

 距離がある所為でよく見えないしゴブリンの叫び声の所為でよく聞こえないけど、ゴッとかバキッ、みたいな鈍い音ははっきり聞こえるわ。 


 途中でレベルが上がった所為か生きているゴブリンの足を掴んで振り回し、私の方に行かせない為か追いつけるぐらいのスピードで移動すると今度は近くの自販機を持ち上げて叩きつける。

 ふわぁ、しゅごい。 見ている間に20は居たゴブリンを全滅させた蓑鋤は小さく息を切らせていた。


 流石に疲れたみたいなのでそっと「回復」を使って傷を癒して疲労を抜く。

 鑑定が使えたら状態を細かく確認しながら管理が出来たんだけど、今は分からないからヤバそうになったらどんどん使って行けばいい。 


 無尽蔵って訳には行かないけどMPは時間経過で回復できるから何かあった時に備えて二回は連続で使えるだけを確保しておけば後は吐き出しても問題ないわ。

 蓑鋤がこちらを振り返ろうとして足を止める。 理由は聞こえた足音。

 

 これまでのゴブリンの物と違い、重量感のあるズン、ズンって感じの音だ。 

 流石に騒ぎ過ぎたわね。 ヤバそうなのが出てきそう。

 ただ、この時期だと精々上位互換のホブゴブリンか何かだろうと思うけど……


 現れたのは想像通りのホブゴブリンだった。 

 ゴブリンと違って体が大きい。 個体差もあるけど大体身長は170から2メートルぐらい。

 大きかったら3メートルに届くのもいるみたい。 今回現れたのは2メートルとちょっと。


 モリモリの筋肉はプロレスラーとかボディビルダーみたいだ。

 ただ、この世界のシステム上、見た目はそこまで当てにならない。

 いくら筋肉があっても数値が下なら普通に力負けするし、上なら普通に勝てるわ。


 腰布一枚の蛮族スタイルにどこかから引き抜いてきたのか折れた道路標識を棍棒替わりに持っている。

 後は――全身が血塗れ。 多分だけど人の血だと思う。

 ホブゴブリンは強者の貫禄っぽい物を漂わせ、蓑鋤の前に立つ。


 蓑鋤はゴキリと首を鳴らした後、ホブゴブリンに対してかかって来いと言わんばかりに手招き。

 ヤダ、蓑鋤ちょーかっこいい。 

 遠目にも分かるぐらいにホブゴブリンはイラついたのか反射的に拳を振り上げた。

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