9日目

「お兄さんお兄さん。」

「…………ん……?どうしたの。小さなお嬢さん。」

橙色の空がまるで太陽の明度を明るくして写したかのように輝く夕方。いつもの場所で2人は雑談をしている。

「ん〜……まぁ、元気だよ。いつも通りにね。」

「そっか。」


「ねぇ、ねぇ、お兄さん。」

「?」

「お兄さんって、よく見ると紐を着けてるんだね。」

「…………あぁ、これね。姉様あねさまから貰った御守り……みたいな物だよ。」

「へぇ〜、お兄さんのお姉さんって手先が器用なんだ。」

「……あんまり器用じゃあないよ。これは寝ず食わずで無理して作ってたみたいだから。」

「…………そうなんだ。」


「ねぇ、お兄さんって_________」

切り落とした。斬り落としてしまった。ゴトリと音を立ててそれは転がり肉塊を固めて作られた床に落ちた。そしてその床に栄養として残され倒れた肉体ごと吸収されてしまった。

斬り落とした人物は後に続く言葉を知っていた。だから殺してしまうしかなかった。

それに、この世界を1番安全で、1番平穏に視えている今のうちに殺してその認識のまま此の世を去ってもらった方が楽だと知っているからだ。

(視えた瞬間、発狂に憤怒…………何時の世の中でも人間の相手するのは面倒くさい。)

(でも、この子は視えなくてよかったよかった。)



これの唯一の誤算と云えば、その人物は姉が来る前に殺してしまった。…………まぁ、これはいつも通りだ。彼は少し早とちりをしてしまう時があるのであんまり気にしなくてもいい。

彼女がお兄さんと呼んだ人物は自分の部屋へと帰った。













まぁ、いつもの流れだ。

(この子も……あんまり変わりなかったなぁ。)

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