考古学実習中の学生・李翰文は、次の瞬間には“死体の山が積み上がる異界”で目を覚ます。
二つの月、腐敗した戦場、物理法則の欠落――唯一現実を証明するのは、足元の登山靴だけ。
瀕死の異界の少女を救ったことで、彼は「七界」と呼ばれる崩壊した世界の最奥へ巻き込まれていく。
死を巡回する兵器《夜巡る者》、魂をバグに変える霧、神の墓標と呼ばれる黒い塔。
翰文は“存在自体が異物”とされたまま、少女を抱えて深淵へ進むしかない。
唐突に世界の法則ごと読者を叩き落とす導入が強烈で、
「理解できない世界に投げ出される怖さ」 がそのまま物語の推進力になっている。
異界の描写はホラーとSFとダークファンタジーが混ざり合い、
世界設定を説明するのではなく“体験させる”タイプの作品だ。
言語化困難な現象がつぎつぎ襲う一方で、
翰文の地に足のついた反応が読者の視点をしっかり繋ぎ止める。
硬質な文体と感覚描写の密度が、異界の異物感を最後まで支えている。