屋台 怪奇現象

京丁稚

第1話 屋台のホンネ

屋台をひいて、開業。

一念発起で、ようやくここまで来た。


屋号は 「怪奇現象」。

理由を聞かれても、いつも同じ答えだ。


ホントのことを申し上げますと、

 もう俺の人生そのものが怪奇だからです。


地元には帰らない。

あの街で過ごした時間は、もう過去の廃墟のようなものだ。

踏みしめるたびにギシギシ軋んで、心まで壊れそうになる。


だから決意した。

全国を回って、人の顔を見て、

風に吹かれて、知らない夜を歩いていく旅をする。


屋台の鍋が鳴る音が、合図。

今日もどこかで、俺の屋台「怪奇現象」が灯る。


誰が来るかなんて分からない。

都市伝説が好きな青年かもしれないし、

悩みを抱えたサラリーマンかもしれない。

ただ一つ言えるのは、


“怪奇な人生” を生きてきた俺に話せることが、 まだ少しだけ残っているということだ。


旅は始まったばかりだ。

そして、多分まだまだ終わらない

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