【全年齢版】転生したら職業欄に何も書いてなかった件

@SsRei

無職転生

第1話 無職判定

「くそっ!なんなんだよあいつら!何が無職には用がないだ!異世界に召喚されたのかと思ったが、まさか、転生だったなんてな。それにしても、異世界に転生したのに、職業になんもかいてないとかどうしろっていうんだよ!」俺、空知そらち 創夜そうやは異世界に以前の姿のまま転生した。本来転生ではなく、召喚なのだろうが前の世界で最後にみた光景はバス事故の生を失う体験をした後、石造りの荘厳そうごんな空間が、夢でも幻でもないことを告げていた。

そして、俺の数歩横には、同じ学ラン姿のクラスメイトたちがいた。しかし、仲良くもなければ、ガリ勉というほど勉強ばかりしている奴らで俺とは相性が悪かった。何よりも、アニメ等を見ている俺を嫌っていたガリ勉が勇者やパラディンや僧侶などに選ばれていたのに何故か俺だけが職業に何もかいていなかったことに対してものすごく腹を立てていた。

ここはアースガルド王国。この世界で生きていくために、魂の奥底から特別なジョブが引き出されるのだと。

王の隣に立つ老魔術師が、透明な水晶玉を抱え、静かに告げた。俺の時だけ水晶が光りはするが何も見えないと言われステータスをすぐに確かめたが、確かに職業には何も書かれていなかった。

ガリ勉のクラスメイトたちの歓声は遠くのBGMのようだ。

俺にとって彼らは仲間ではない。ただのクラスメイト。

彼らが輝くほど、平凡な俺の場違い感が募る。

転生者全員のジョブ診断が終わり、王が魔物討伐を命じる中――

俺だけは、邪魔者扱いだった。

「勇者や賢者の旅路に、『無職』など無用の長物! 追放しろ!」

……そうして俺は、城どころか町からも追い出された。

今、俺は森の中を歩いている。

冷たい風がほほをなで、こけむした地面が靴の裏できしむ。

(ふざけるな。俺のジョブが『無職』? 笑わせる。確かに水晶はそう言ったかもしれないが――)

俺は立ち止まり、全身の血液が沸き上がるのを感じながら深く息を吸う。

そして、頭の中で一つのイメージを、強烈に思い描いく。

俺は今、森の中をトボトボ歩いている。冷たい風がほほをなでる。

(ふざけんなよ。『無職』?笑わせるな!)

確かに水晶はそう言ったかもしれない。だが、俺の能力は――。

俺は立ち止まり、深く息を吸った。そして、頭の中で一つのイメージを、強烈に思い描く。

「……『ファイア!!』」

軽い気持ちで、ゲームの技名を大声で叫び、目の前の木に向かってポーズを決めた。

――その瞬間、空中に、巨大な火の玉が出現した。

轟音とともに放たれた火球は、目の前の大樹を一撃で焼き尽くし、跡形もなく灰へと変える。

俺はポカーンと口を開け、ただその光景を見つめるしかなかった。

「……は?」

呆然としたまま、俺は試しに心の中で《ファイアボール》と念じてみる。

手のひらに、オレンジ色の炎の塊がフワリと出現した。

「無詠唱もできるみたいだな。」

そして、ぽつりと笑ってしまう。

「うそだろ……ほんとにできた。

無職って、アイツらが勝手に決めつけてたが正確には何も書かれてないんだ。魔法は関係なく使えるのか!?」

胸の奥から、子供の頃のようなワクワクがこみ上げる。

気分は、まるで大好きなRPGの主人公だった。

火球、風刃、氷のやり――試した数、二十回。

だが、MPは減らない。どころか、疲労もほとんどない。

(マジか……スキル消費なし?)

調子に乗った俺は、その辺に落ちていた木の枝を拾い上げた。

剣を構えるように両手で握りしめ、ニヤリと笑う。

「和道、横一文字!」

思いきり枝を横に振り抜く。

刹那、空気が裂ける音。

想像したとおりの“飛ぶ斬撃”が走り、目の前の木々をまとめて切り裂いた。

「まじか! 剣技みたいなスキルも使えるのか!?」

確認のためにスキルウィンドウを開くが、そこには何も表示されていなかった。

使いこなすには少し練習が必要そうだったが、

少なくとも、“想像した威力で技を出せる”こと、

そして“スキルの使用制限がない”ことが分かった。

――そのときだった。

背後の森から、重い地響きが近づく。

振り向けば、そこにいたのは、ラスボス前に出てきそうな巨大な狼型の魔物だった。

(さっきの爆音で寄ってきたか……!)

反射的に、俺はバリアのイメージを構築する。透明な光の壁が、俺を包み込んだ。

「あ、あぶなかった。」

そう叫んだ次の瞬間、無意識に魔物を二つに切り裂く強烈なイメージが浮かび、巨大な魔物を無意識に風魔法で真っ二つに切り裂いていた。

「……そういう、ありきたりな展開、つまんねーんだよ。はい、サヨナラ。」

怒りとも呆れ(あきれ)ともつかない感情でつぶやく。

この能力は、単なる『想像』じゃない。俺の『願い』、あるいは『キレた衝動』そのものが、この世界の法則をねじ曲げる。城で無職と笑われ、ゴミのように追い出された屈辱くつじょくが、今、マグマのように脳を焼きくしていた。

スキルが使えるという事実が、俺の脳裏に焼き付いたアニメやゲームの知識を限界突破オーバーロードさせたのだ。意識の壁が吹き飛び、この状況なら最強の俺はこう動くというイメージが、トリガーとなり現実へと変換されていく。

気づけば足元には、魔物の素材が転がっていた。俺は無造作にそれをストレージへ放り込む。

「さて……追い出された町に戻る気はねぇし。飯と宿を探すために、次の町を見つけるか。」

そう呟いて、空を見上げた。

「――飛行術!」

ふわりと体が浮き上がる。

重力が遠のき、風が肌を撫でた。

地面と空を行き来しながら感覚をつかみ、数分後。

俺は、迷いなく青空へと身を投げた。

はるか眼下がんかには、大地にへばりつくような光の都市が、かすかに輝いている。

創夜はただ、その光を目指して――

途方もない速度で、青空をけ抜けていった。

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