学校一の美少女が日々キスを求めてくるんだが
早瀬 渚
第1話 ここ最近多い展開
どこにでもいる普遍的な高校生。それが、俺を表すに一番ぴったりな言葉だろう。それ以上でも以下でもなく、高校生全体で一番割合が多い
俺自身、それで良いと思っていたし、目立つこともあまり好きではない。別に何か能力があるのに、わざと隠して狙ってこの位置にいるなんてこともなく、何もかもがおおよそ平均くらいの高校生が俺だ。だから、目立とうにも(そんな考え全くないが)目立てるわけもなく、比較的穏やかな高校生活を送っていた。
今日も適当に登校して、友達とゲームがどうとか漫画アニメがどうとか授業がどうとか先生や生徒がどうとかそんな他愛もない話をしていた。
「はぁ~、彼女が欲しい。」
「お前に出来るわけないだろ。女子と話す勇気もない陰キャのお前が。」
4時間目を終えた昼休みの教室、俺の目の前では番頭を食べながら口論する男子生徒二人がいた。いつもの光景である。
「そんなの分からないだろ!何か劇的なイベントが起こるかもしれない。」
「はっ。そんな他力本願では無理だな。」
「そういうお前はどうなんだよ。やけに上から目線だが。」
「俺はまだ行動を起こしてないだけだ。その気になれば、彼女の一人二人たやすい。」
「現実見えてないし、最低発言してるわ、こいつ。」
一応、友達の
「はぁ~、その点泰輔はいいよなあ。好かれる相手がいて。」
言って、ソフトモヒカンの陽太はこちらに話題を振ってくる。
「はて、何のことだろうか。」
「分かりやすい、とぼけ方しやがって。お前は今、学校中の注目の的だからな。ポッとでのお前があの人と付き合うなんて。」
「全くだ。」
陽太の言葉にインテリ風眼鏡の浩平が同意を示す。
――そう、比較的穏やかな高校生活が送れていたのは一か月前の話だ。あの出来事が起こってから、俺は少し学校内で認知度が上がってしまっていた。
「泰輔君はいる?」
「お、噂をすればやってきたぞ。」
その噂の主は教室のドア付近で女子生徒に俺の居場所を聞き、こちらのほうへと向かってくる。黒髪ロングの彼女は目鼻立ちが綺麗で姿勢も美しく、一挙手一投足が否が応でも皆の注目を集める。そんな彼女がいつも通り俺の目の前にやってきた。
……何で、わざわざ別の生徒に確認を取るんでしょうかねえ。めっちゃ皆俺のほう見てるじゃん。
「泰輔君、ちょっとお話があるんだけど。」
「それは分かったが……何でわざわざ直接呼び来るんだ。電話でもラインでもすれば済む話だろ。」
「?別にどっちでもいいでしょ?隣のクラスだし、さして距離があるわけでもないし。」
「はぁ……、そうですか。」
ここで、長話をしても無駄に注目を集めるだけなので、俺は一旦飲み込む。……あとで、注意しておこう。
「じゃあ、行くか。」
注目を集めている気恥ずかしさから俺は足早に教室を出ようとする。……が、それを止める別の人物が現れた。
「泰輔、どこ行くの?」
言って、金髪ショートの女子生徒が俺の行く手を遮ってくる。快活な彼女はなぜかいつもこの状況のときにやってくる。……面倒だ。
「いや、どこでもいいだろ。」
「泰輔のこと何でもしってる私に隠す必要ないんじゃない?それか言えないことなの?」
怖い。顔は笑顔なのに、目は笑ってない。怖い、そこはかとなく怖い。足が言うこと聞かなくなるくらいには怖い。
「
「
「口調をマネしないでくれる?いつもそんな喋り方じゃないでしょ、長谷さん?」
「別にまねしたつもりはないんですけど!?それで、どこにいくつもりなの!?」
二人の口論が始まってしまった……。ここのところずっとこうだ。最初にここにやってきた雫川は学年のマドンナ的存在で、容姿端麗、才色兼備、皆の憧れの的だ。そのおかげが彼氏が途切れたことはないらしく、そう言ってしまえば遊んでいるように感じられるが、そんな印象はあまりなく(俺的に)、とても真面目な感じを受ける雰囲気だ。相手もいわゆる遊び人的な人とは付き合ってなく、きちんとした真面目な人が多いらしい。まあ伝え聞いた部分が多いが。
そして、その彼女がなぜか俺と付き合っている。……ほんと、何故だろう。万年陰キャ空気の俺にこんな出来すぎた彼女ができるなんて人生は分からないものである。
一方、あとからやってきた長谷は俺の幼馴染だ。比較的穏やかな高校生活と言ったのはこいつのせいで、高校に上がって以来何かと俺にちょっかいをかけてきていた。中学は別々だったのだが、中高一貫のこの学校に高校から入学してきた。雫川と付き合うまでは適当にあしらうだけで良かったのだが、付き合うようになってからはこんな風に二人でいがみ合うことが多くなっている。……本当に面倒な状況だ。
「話にならないわ。泰輔君行きましょう。」
「泰輔!今は私と遊ばない?」
怒りながら立ち去っていく雫川とムッとした表情でこちらに話しかけてくる長谷。
何で毎回、こうなるんだろう……。
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