君と未来が交えた世界で
@yasu_0202
プロローグ
2018年7月21日16時29分………
ながき時を越え、今まさに彼女はそこに立っていた
そこは彼女の眼前いっぱいに広がるひまわり畑だ
彼女の背は高く、背中まで伸びる黒い長髪と端正な顔立ちは誰もが思わず振り向くほどに整っている
しかしその右頬にはなにかに深く抉られたような傷跡があり、頬の真ん中から顎の下辺りまでくっきりと生々しく残っている
そしてその身には、何度も補修したあとがあり、裾もすっかりボロボロになってしまった白衣を纏っている
黄金色に輝く太陽が、辺り一面に広がるひまわりと彼女を照らしている
ひまわり達も光り輝く太陽に負けじと大きく誇らしげに咲き乱れている
無数のひまわりに囲まれながら彼女は過去を懐かしむような、けれど未来に灯るなにかを探すような静かな眼差しをしていた
ふわりと吹いた涼しい風が彼女の身に纏う白衣の裾と黒髪を優しく撫でるようになびかせている
彼女が浅くため息をつき、一つのひまわりをそっとその細い指先で慈しむように撫でた時だった
「っ…!」
彼女の頭の中から'いつもの音'が鳴りはじめる
秒針が時を刻むようなカチカチという音…
とある日を境に頭の中から鳴るその音は自身の周りで何かが起きることを彼女に知らせていた
片手で頭を抱えながら辺りを見回そうとした時だった
「ねえ!」
自身を呼びかける幼気な明るく澄んだ声にはっとする
その声の主のほうへゆっくりと振り返り、その姿を見た瞬間、彼女は思わず息を呑んだ
麦わら帽子をかぶったまだ幼い少女がひまわりを同じように撫でながらこちらを見上げていた
「お姉ちゃんもひまわりすき?」
「君………は………」
目を見開きその少女を見つめる
心が打たれた鐘のように強く揺さぶられる
動揺のあまり言葉が詰まってしまう
幼い少女はあ然とする彼女へひまわりのように輝く無邪気な笑顔をにっこりと見せた
幼い少女と白衣を身に着けた女
大きな年の差がある二人の友情が広大なひまわり畑の中で小さく小さく芽吹こうとしていた
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