絵がド下手な私が2カ月で、自作ラノベキャラの人形を手づくりした話
鳴尾リョウ
第1話 絵がド下手なら、人形を作ればいいじゃない!
「自分で考えたキャラクターを具現化したい」
創作をたしなむ人間なら、きっと共感してくれることと思う。もちろん、私もその一人だ。方法は様々だが、文章やイラストなどが真っ先に思い浮かぶのではないだろうか。
私はカクヨムで『魔人スカーレットは過労でしんどい』という小説を書いている。人間たちからの仕事を完璧にこなすが、家に帰るとポンコツになる魔人スカーレットが主人公だ。
服のセンスがないことを気にしていたり、しょうもないことで執事のじいやとけんかする彼女の日常を描いているうちに、あることが思い浮かんだ。
「もしもスカーレットにイラストが付いたらどんな感じなのかな」
書店で売られているライトノベルには、かわいらしいキャラクターやかっこいいキャラクターが表紙に描かれ、とても魅力的に見える。こんな風に自分も描けたら……。
そう考えたが、問題がある。私は絵がド下手だ。
小学校の頃、友人がオリジナルのマンガを描いており、自分もやってみたくなり挑戦してみた。だが、下手だ。キャラクターに躍動感がない。それになんか変だ。そんなこともあって私は、あっさりと絵を描くのをやめた。
くそう、昔の自分、もっとがんばれよ。そう言いたくなる。今から努力して描けるようになるというのも手だが、面倒くさがりの私は別の方法を考えた。
そう、『絵がド下手なら、人形を作ればいいじゃない』だ。
何も二次元で表現しなくてはいけないというルールはない。三次元の人形を作り出し、この世界に魔人スカーレットを召喚するのだ! 私はそう決意した。
こうして私の2カ月に及ぶ挑戦が始まった。
人形を作る。簡単に言ってみたが、私は一度も作ったことなどない。「まあ、紙に大体のイメージを描いて、それを布やらに写して切って、縫えばいいでしょ」そんな風に甘く見ていた。
作り終えてみた後になってみれば、あの時の自分に「人形作りなめんな!」とポカりとやってやりたい。……ちょっと強めにね。
話を戻そう。十月上旬。まず私はノートにスカーレットの絵を描いてみることにした。十五センチくらいの人形を想定し、鉛筆を動かす。目は難しいから縦棒みたいにして、髪は長髪で服はワンピースなら縫うのが楽かなとドンドン描いていく。少し物足りないので、袖なしのコートの様なものを描き足し、完成。うん、いいんじゃない! それっぽい!
原本をコピーし、コピーした紙をパーツごとに切り分ける。頭、胴体、角、服と切っていき型紙とする。とりあえず、こんなところかとその日の作業は終了した。
翌日、熱が冷めないうちに人形の材料を買いに行くことにした。
家に針や糸、それに何かに使った綿はあったので、手芸用のフェルトを買いに百円ショップに向かった。以前から手芸道具が売っていることは知っており、万が一失敗してもやり直しがきくと考えたからだ。
自転車で店に向かい、一直線に手芸コーナーに向かう。普段はまじまじと見たことはなかったが、色々なものがそろっている。端切れや綿などはもちろん、羊毛フェルトの人形キットや着せ替え人形の服なんてものも置いてある。
百均、すごい。なんて商品の充実ぶりだ。手軽に創作ができるように、お値打ち価格であらゆるものが用意されている。色々と目移りして商品を見ていたが、目的のフェルトを選ぶことにする。
よく使う色はほとんどそろっている。私はベージュ、赤、黒、白、黄色の四色をかごに入れ、レジで会計を済ませた。
これで材料はそろった。あとはフェルトにパーツを描き写して切り、綿を詰めて縫っていけばいいだけだ。
作業が順調に進んでいき、満足して家に帰った私はこう思った。「よし、あとはすぐできるだろうから、今日はここまでにしよう!」
もちろんこんな考えはフラグでしかないわけだが、誰でもその時にはわからない。
私の戦いはここからが本番なのだった。
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