月を見ていた

@abiti

月を見ていた

私はあの人のことが好きだった

月みたいに輝いていて、私とは違って

物事をはっきりと言えて、優しくて、最後まであっさりしていたそんな彼のことが

でも彼は私ではなくて星みたいなあの子のことを見ていた

最初は私のことを見てくれた、好きでいてくれたのにあの子が近くにいるようになってから

彼は私のことを見向きもしてくれなくなった

あの子も私とは違って物事をはっきり言える

そんな人だった

私はあの子が羨ましかった私の気も知らないで

彼と楽しそうに話しているあの子が

なんで私じゃないんだろうって思ったことも

ある、独りで不安になって泣いてしまった日も

でも、もう月を見るのは辞めにしよう

少しの間だったけれど側にいられて幸せだった

側にいられたらそれで良かった

同じ時間を過ごすことも、暖かい手に触れる

こともできなくなってしまうのは辛いけれど

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