「ここは、終いにして、同じ場所を始める」という言葉。
この作品は、ただ伝統を守る話ではなく、一度終わるものをちゃんと終わらせたうえで、同じ場所から新しく始め直す話と受け取りました。
鍛刀の描写もとても良かったです。
火の色、金槌の音、土置きや焼入れの感触が細かく描かれていて、技術を言葉で説明するというより、主人公がおじいちゃんの背中から少しずつ感覚を盗んでいく過程として読めました。
「見て、盗め」という言葉が、ただの頑固職人の台詞で終わらず、最後には本当に主人公の中に火の声が移っていくのが印象的でした。
また、お父さんの存在も単に嫌味な人ではないですね。
「刀なんて、もう飾りやぞ」という言葉は冷たいようで、現実としては確かに重い。だからこそ、完成した刀を「人を斬るための刃」ではなく「火の声を記録した一本の記憶」として捉える終盤が効いていたと思います。
トドロも、ただの泥ではなく、削られたものや作業の痕跡ごと隣にいるものとして描かれていました。
「タイトル先行の安易な小説だろう」と一瞬考えてしまった自分を後で𠮟りつけたくなる――深い読後感や満足感がある作品でした。