運命にあらがう俺は、異能でSランク宇宙人をぶっ飛ばす~チート軍人に育ったからには、地球外生命体を駆逐する~
相木ナナ[カクヨムコン参加中]
プロローグ
西暦2026年。春。
霊園の中を、軍服で歩く二つの影があった。
壮年の男が立ち止まると、まだ少年の面差しのある
二つあった花束のうち、一つはもう供えてきた。
「ここだね、不知火兵長。君の母上のお墓は……よく手入れされている」
「はっ! 母も喜ぶでしょう。好意で手を入れてくれる方が多いので」
「私が育て、みんなを救ったヒーロー……。今の幹部の多くは不知火名誉中将に救われた面々が多い」
白髪の男――
過去の思い出が一気に生島の胸に押し寄せてきた。
不知火知世名誉中将は、地球外生命体が押し寄せてきた第一線で活躍していた。
”撤退する時は味方の死体を担いで逃げろ。絶対に置き去りにするな。テキの手に渡るくらいなら、必ず脳を打て”
今や異界防衛軍の標語である言葉を残した、当人でもある。
そして、その
忘れ形見のカガリを溺愛していたが、この春。
防衛高を主席で卒業して、異界防衛軍に入学したカガリを連れて初めて墓参りにきたのだった。
「……カガリ君は六歳だったか。当時……」
「はい、思い出は少ないですが」
「ほとんど軍に尽くしてくれたからな、知世くんは……」
――赦してくれるだろうか。
生島の絞り出した声は、カガリには聞かせたくなかった。或いは、聞こえていてほしかった。
「母は、満足していると思います。VFに脳の知識を奪われることを、最も忌避していましたから――もう、苦しまないでください。生島中佐の選択は、母の意思に沿ったものだと自分は信じております」
その言葉に救われてはいけないと分かっていて、生島は涙を必死でハンカチに吸わせる。
軍に入隊した時に覚悟したはずだった。
人の命は儚いことも、同僚と共に死地に赴くことも。
それでも、愛弟子を殺した弾丸は、自分が撃ったのだ。
瀕死で、撤退もままならなかった。生島自身も死のすれすれだった。
パフィオペディルム型の地球外生命体は、まさに知世の頭を呑む瞬間だった。
だとしても、何かやれたのではないか――その思いは十二年、重い枷となって生島を苦しめてきた。
息子のカガリに赦されたとしても、その枷を外して生きることは許されないのだ。
「東京二十三区以外に、久しぶりに出ました。千葉もまだ肌寒いですね」
カガリの手が、生島の背中に触れる。
その手は、温かかった。
葉桜が、静かに風の音を運んでくる。
生島のすすり泣きは、その風の中で静かに流れ出ていった。
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