念願のカフェ『えるすかれ』を開業した早乙女柊は、初めてのお客様である塩顔の美青年──蒼月奏夜から期待とは違う辛口のコメントを受ける。
店を存続させるために必死な柊は、やけに珈琲に詳しい彼に、珈琲の淹れ方、珈琲そのものについての指導を依頼するのだが──?
店のため、珈琲を淹れる腕前を上げるために必死で頑張る柊は、読んでいてとても応援したくなる素敵な主人公です。
いきなり「普通」と評価されてしまう彼女ですが、ひたむきさ、前向きな性格は一級品で、しかもダメダメな訳ではなく、彼女にもしっかり得意分野や長所が読み進める毎にたくさん出てきます。
心強い相棒、奏夜との掛け合いも軽妙で楽しく、登場する人物は誰もが輪郭がはっきりとしていて、本当に現実世界にいても不思議でないくらい、リアリティがあって活き活きとしています。
繊細に描かれる人間関係だけでも面白い本作ですが、私が特に驚いたのは、珈琲についての描写の本気具合です。
カフェを舞台に展開する物語は多々ありますが、専門的な珈琲の話は殆ど出てこないか、もしくは人間関係の描写がおざなりなものかのどちらかが多く見受けられる中、この物語はそのどちらもを完璧に描き切っている稀有な作品です。
珈琲の淹れ方や焙煎の割合、産地の話や接客の心構えまで、現実世界に愛好家がたくさんいる題材をここまでしっかり描写するには、確かな知識や熱意がないとできないことだと思います。
珈琲の良さは余すことなく伝わってくるのに、押し付けがましくも説明くさくもなく、するりと心地良く頭に入って来るのは、魅力的な登場人物達が努力する過程でそれが描かれているからでしょう。
本当に感動しました。
物語の最後を締めくくる会話と言葉は何ともオシャレで、甘く、ほろ苦く、でも爽やかな、珠玉の一杯を飲んだ後のような後読感を味わえます。
ぜひ読んでみて下さい。
カフェを開店することを夢の頂点に位置付けていた主人公が、とある青年の言葉によって商品のさらなる上達を目指すようになる現代ドラマ作品です。
主人公は度重なる努力によって、若くしてカフェを立ち上げた女性。
けれども、開店数日の盛況ぶりは、すぐさま沈黙。客足が遠のいているのがハッキリと分かってしまいます。
どうにかしなければと考える主人公の前に現れたのは、開店当日にも来店した不思議な青年。
彼は主人公の接客が独りよがりであると断じ、コーヒーに至る全ての要素にダメ出しします。
けれども、その叱咤で目覚めた主人公は、心機一転して本当に客が求める商品開発に専念。
青年もスタッフとして迎え、カフェの未来を切り拓くために邁進します。
果たして主人公のお店は、地域に愛される名店になれるのか。
ぜひ読んでみてください。