冒頭の予言の格調高さと、膝枕の場面の柔らかさの落差が、この作品の雰囲気をひと息で伝えてくれる。
「眠るたびに記憶を失う」という設定は、哲学的には同一性の問いに直結するはずなのに、この第1話ではそれを重たく扱わない。ニジカが目覚めるたびに「ここはどこ?」「僕は誰?」と聞き、ルナが「おはようございます、神子様」と何度でも笑顔で答えるこの繰り返しの中に、記憶よりも深い「信頼」が宿っていることが自然に伝わってくる。
ルナの「例えまた忘れても、何度でも私は変わらない関係を築くために努力をします」という言葉は、物語全体のテーマを最もシンプルに要約している。記憶がなくても絆は壊れないこの命題を、説明でなく日常の場景として見せる構成が巧みだ。
ピクニックとサンドイッチに目を輝かせるニジカの反応がかわいらしく、壮大な預言と災禍の予感をした直後にこれが来るので、思わず笑ってしまう。このバランス感覚が、17話以上にわたる連載を支える力だと思う。
連載中22話・13万字。ハイファンタジーとして世界観の骨格もしっかりしており、ニジカとルナの関係がこれからどう変化していくかが気になる。
天使の世界を描いた美しい世界観をもつ作品ですが、読み進めると登場人物たちは決して神聖一辺倒ではなく、それぞれが人間らしい感情や葛藤を抱えて生きていることが丁寧に描かれています。
主人公ニジカは、その特別な立場ゆえに誤解を受けることも多い存在ですが、悲観も楽観もせず、冷静に自分という存在を受け入れながら生きている様子が丁寧な描写で描かれており、読者としてニジカを応援したくなります。
物語が進むと、何故ニジカがまわりから誤解を受けやすいのかも徐々に明確になっていくため、登場人物たちの言動への理解も変わっていき、読み進めるほど世界観の作り込みが感じられる作品です。
目が覚めると、すべてを忘れている——。
天使たちが暮らす天界で、たった一人の人間として生まれた神子ニジカ。
桜色の髪と碧色の瞳を持つニジカは、眠るたびにすべてを失い、見知らぬ世界で目を覚ます。
それでも白天使ルナは、何度忘れられても微笑みながら「おはようございます、神子様」と呼びかけ続ける。
しかし、この穏やかな日常は束の間のもの。
天界を滅ぼすと予言された「七つの災禍」が迫り、ニジカは救世主として、あるいは神が作り出した器として、その運命に立ち向かうことになる。
記憶を失いながらも、彼だけに見える「虹」が示す道とは。
毒に冒されながら覚醒した神子の力とは。
そして、「魂の救済」という言葉の真意とは——。
これは、すべてを忘れる少年が、忘れられない絆と共に世界を救う物語。