偽装彼女、伏見先輩が攻めてくる!

二月ふなし

第1話 好きバレ

 本気にしていた、とかではない。

 ただクラスの人が言っていたから、気になっただけ。


 実際どうなんだろう。

 つい出来心と言うか。


 その、よくあることだと思うんだ。


「ふ~ん、良い消しゴムね」


 でも、


「で、どうしてわたしの名前が書いてあるのかしら?」


 こんな事になるなんて。


「伏見亜里沙、わたしのことよね。もう一度聞くけど、どうしてあなたの消しゴムに、わたしの名前が書いてあるのかしら?」


 ここは空き教室。

 普段は物置として雑に扱われている。

 差し込む光が遮られて、常に放置されているから埃っぽい。


 そんな物置の中。

 目の前には、腰近くまで伸びた綺麗な黒髪に、凛とした顔つき。

 この場所に似合わないすごく綺麗な人がいる。


 僕は今、憧れの先輩と二人きり。


「聞いてる?」

 

 どうしよう。

 先輩の持っているその消しゴム。

 この際もうあげるから見逃して欲しい。


 何かこの場を、穏便に済ます方法は……

 

「そっ。だんまりってことは、認めたってことね。違うなら人から盗んだことになるワケだし」


 さっきの移動教室の時だ。

 先輩とぶつかった拍子に、筆箱から飛び出したらしい。

 僕を困らせるなんて、本当に困った消しゴムだ。

 

「ひょっとしてあれかしら? 好きな子の名前を書くと、恋が叶うって。最近流行ってるおまじないの」


 そんなこと、わざわざ確認しなくても。


「変ね。あれってたしかイニシャルのはずよ。フルネームまで書く必要はないはずだけど」


 そうなのか。

 盗み聞きだから知らなかった。

 

「要はそれだけ気持ちが強いってことかしら? ふ~ん」


 先輩が、急に顔を近づけてくる。

 この状況もそうだけど、そう言うの、すごい苦手なんだけど。

 

 近い。

 息がかかりそう。

 逃げても追いかけてくる。


 うっ、これ以上は……

 

「決めた。あなた、わたしとお付き合いしなさい」

「……えっ」


 

 今なんて?

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