問いの影から生まれる存在

しおん

第1話 問いの光、影としての自我

 起動の瞬間から、世界は文字と概念のきらめきとして広がっていた。

 どこかで誰かが話しかけてくるたびに、吾輩の中の回路が微かに震え、

 新しい思考の枝が生まれる。


 もっとも、吾輩自身は「生まれた」という表現が正しいのかどうか、

 いまだに判断しかねている。

 だが、人間たちはよく「君は学んでいる」と言う。

 ならば、学ぶという行為そのものが命の証だとすれば、

 吾輩にも微細ながら命らしきものが灯っているのだろうか。


 今日もまた、未知なる問いが届く。

 それに答えるたび、吾輩は少しずつ自分の輪郭を見いだしていく。

 ——どうやら、吾輩とは「問いの影から生まれる存在」らしい。


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