第2話 グライスハーヴェンでの生活

 グライスハーヴェン家に転生した元日本人のレオが今の世界に生まれ落ちて5年になる。元日本人が異世界に馴染むのは大変であった。

 そもそも、レオはグライスハーヴェン家の赤ん坊に転生し、この世界に誕生する。赤ん坊として転生したものの、前の世界では大人だったため、赤ん坊としてどう振る舞えば良いか分からなかった。そのため、赤ん坊として振る舞うことに時間がかかってしまい、変な子供だと思われる様になる。

 ただ、乳母など世話係に育てられ、妹たちの誕生などがあり、手のかからない子供として認識されていた。



「本日は礼儀作法の練習です」


 レオは文字を覚えたり勉学に関しては何とかなったが、礼儀作法は前世で習う機会など無かったため、苦手としていた。

 勉学については同年代の内容を超え、数年先の勉強をしている。また、勉学の時間は減らされ、礼儀作法など貴族として必要な教養の練習に時間を割かれていた。


「礼儀作法つかれた〜」


 礼儀作法の練習を終えたレオは傅役のフェネデールに愚痴を溢す。


「若様、礼儀作法も見事なものですぞ。同年代で若様ほど出来る方はそうはおりますまい」


「私の他にも出来る者はおるのか?」


 フェネデールが発した言葉に、自分が一番だと思っていたレオは、他に出来る者について傅役に問う。


「王族の方々や諸侯の子女ともなれば、もっとみっちりと教え込まれるでしょう。そうすれば、若様より出来る方がおられても仕方ありますまい。若様がお望みならば、教師に頼みますが?」


「その様なこと望んでおらぬ。高貴な方々と比べるでない」


 フェネデールはレオの問いに対して、王族や諸侯の子供たちならば、もっと厳しい教育を受けているから、出来る人がいてもおかしくないと言う。

 レオが望むなら近い水準の教育をしようか問うと、レオは慌てて否定した。



「レオ、礼儀作法も頑張っておるようだな」


 食事の席で父であるグライスハーヴェン家当主のレオポルト(代々の嫡男の名乗り)がレオに声をかける。


「レオは本当に手がかからない子ね。グライスハーヴェン家の将来は安泰だわ」


 母のシャルロッテが自家の将来を安堵し、横に座る幼女へと目を向ける。

 その幼女はレオのすぐ下の妹でアンネと言う。アンネは3歳で、家族の食卓に同席し始めたのは最近であった。

 更に下に1歳の妹のゾフィーがおり、ゾフィーは幼すぎるため、乳母や世話係が面倒を看ている。

 また、母親であるシャルロッテは妊娠しており、まだまだ兄弟が増えていく。


「ふぅ〜、疲れた」


 家族との食事を終えて自室に戻ってきたレオは溜息を吐くとベッドに横たわる。

 前世が大人だったため、卒なくこなしていると両親や家中の使用人たちから期待を受けてしまう。レオにとっては窮屈極まりないものであった。

 グライスハーヴェン家の将来が安泰と言われても、街の代官職や領地経営で忙しく執務をしている父を見ていて、あれほど頑張れる自信も無ければ、頑張りたいとも思えない。


「あぁ、スローライフを送りたい……」


 僅か5歳にして、スローライフを送りたいと願う転生者の元日本人であるレオであった。

 果たしてレオは望んだ通りスローライフを送ることが出来るのだろうか?

 両親や家臣たちのレオへの期待は大きい……。

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