サルビア-父のメッセージー

るなねこ

第1話

サルビアー父へのメッセージー


沢山後悔してるからこそ

大事な人を失ってからじゃ遅い。

失う前にちゃんと伝えないとって

思えるようになりました。

お父さんいつもありがとう。


古いマンションに娘と二人暮しをしている。

妻は娘が産まれて来る時に命を落とした。

出産は命懸けだと俺は気付かされた。

娘とは産まれた時から共にいる。

大切に育ててきた娘は高校に進学した。


私は、母がいない。

私が産まれた時に亡くなってしまった。

赤ちゃんの頃から父と二人暮しだ。

今は高校一年で友達と高校生活を送っている。

しかし、所謂(いわゆる)反抗期に入っていた。


仕事と家事の両立は大変だが娘のことを思えばなんてことはない。

だが、最近は娘が素っ気ない。

娘が帰ってくると、「おかえり」と声をかけるが、

無言で二階へ駆け上がってく。

「かおり、弁当箱出しといて」

「うるさいなー!わかってるよ!」

「そんな言い方しなくても…」

俺はこういう時期も大切だろうと思っていた。


私は勉強が忙しい。

毎日深夜まで勉強をしている。

そうすると父が声をかけてきた。

「かおり、まだ起きてるのか?」

「別にお父さんには関係ない」

「おにぎり作っといたから、置いとくぞ」

「いらない。」


娘は、可愛い。

きっと学校では人気者なのだろう。

そう思っていた。


またあくる日の朝

「かおり、弁当忘れてるぞ」

「…。」

「行ってらっしゃい!」

「…。」

「はぁ…。今日もか…」

朝早くから弁当を作り、仕事に行き、夜は娘が寝るまで起きている。


ある日、仕事中かおりの学校から電話がかかってきた。

「かおりさんの件で伝えたいことがあるのですが…」と言われ俺は嫌な予感しかしなかった。

俺は仕事を早退させてもらい、学校へと向かった。


「お父さん…わざわざ来て頂きありがとうございます。」と校長先生が挨拶をしてきた。

「あの、うちの子が何かしましたか…?」そう聞いた。

すると、かおりは学校でクラスメイトから虐められていたとのことだったのだ。

「そんな雰囲気は…そういえば最近何かと反抗してくるが、反抗期なのかと思っていた…もしかして」

俺は、校長先生にお礼を言い家に帰った。


私は、実はクラスメイトに虐められてる。

机の上の落書き。

ゴミ箱に捨てられた教科書とノート。

私が何をしたというの…。

この事は父には言ってなかった。

いちいち聞かれたら面倒臭いからだ。

だから、帰ったらすぐ二階へ上がって自分の部屋で泣く。


今日帰ったら何故かいるはずのない父が家にいた。

「おかえり」

「…!なんでいるの!」

「今日学校から電話があってな…」

「うるさい!お父さんには関係ない!」

私は鞄を父に投げて自分の部屋へと引きこもった。

そして、膝を抱えて泣いた。


娘から事情を聞こうとしたが鞄を投げられ二階へ駆け上がってく娘に何も聞けなかった。

俺はどうしたらいいのか悩んだ。

今は、そっとしておくべきなのか…。

と考えていたらまた、学校から電話が来た。

「もしもし…」

「あの、かおりさんの事なのですが…」

「虐められてた子を助けたら、ターゲットがかおりさんにいってしまったらしくて」

俺ははっとした。

「今、虐められてた子から話を聞きました。」

「なのでかおりさんを怒らないであげてください。」

俺は、後悔した。

なんで気が付かなかったんだろうと。

「あの…ありがとうございます!」

そう言って電話を切った。


「かおり…?今学校から電話があって」

「私の事聞いたんでしょ、ダサイって思ってるんでしょ?もう関わらないで」

「そんなこと思ってない。今まで気が付かなくてごめん。」

「もう、いいよ。」

「…。」

その日から娘は学校を暫(しばら)く休んだ。


俺が娘の傷を癒してあげなければ…。

娘になにか出来ないかと思っていた。

俺は、娘に手紙を書くことにした。


学校を休んで半年が経った。

殆(ほとん)ど自分の部屋に引きこもっていた私。

すると、ある日一通の手紙がドアの隙間から入ってるのに気づく。

私はそれを開いた。

それは父からの手紙だった。


「かおりへ。」

「こんなお父さんでごめんな。お父さん失格かな」

「かおりが学校で何を言われたかは分からないけどお父さんはずっとかおりの味方だから。」

「ただ、ちゃんと笑おうとしなくていい。」

「せめてお父さんの前では耐えなくていいよ。」

「大丈夫、大丈夫。」

「かおりは一人じゃないから。お父さんがついてるから」

「逃げてもいい、泣きたい時は喚(わめ)いていい、耐えなくていい。上手く笑えなくてもいい。」

「かおりはかおりらしくいてくれればいい。」

「頼りない父より。」


私はその場で号泣した。

私が学校に通って、ご飯が食べれて、字が書けて、人と話せて、笑えるのは

父が育ててくれたおかげ。

いつも反抗してごめんなさい。

なのに父は今日まで一日も休まずに毎日私を育ててくれた。

私が赤ちゃんの時は一時間ごとに起きてご飯あげて、泣く度に抱っこしたり、言うこと聞かなかったり…

お父さん。

こんな私でごめんね。

私は改めて父の大切さに気づいた。


私はその日から学校へ通った。

髪もバッサリ切って父が背中を押してくれたから、虐められることも少なくなり今は大丈夫だ。

「大丈夫。大丈夫。」

この言葉を大切にし私は毎日を生きている。


今日は日差しが強い。

天気が良くいい日になるといいなと願う。

「お父さんおはよう!」

あの日から話しかけてくれる娘。

「かおり、おはよう。お弁当だ!」

「ありがとう!お父さん!行ってきます!」

そして、前みたいに学校へと行けるようになった娘

そんな娘を誇りに思っている。


今日は、父の日。

今までお世話になった父へ何かプレゼントしたい。

何がいいだろうと悩む私。

そうだ!花!

そして、一つの花を買って家へと帰る。


「ただいまー」

「おかえり。」

「お父さん…」

「ん…?」

「あの、お父さん、いつもありがとう。」

「これは…俺にくれるのか?」

「今日父の日だよ!忘れてたの?」

「ありがとうな、かおり。お父さん嬉しいよ。」

俺は涙ぐみながらかおりにお礼を言った。


私は父にちゃんと花を渡せて嬉しかった。

渡した花は「サルビア」。

大好きな父への私からのメッセージだ。


サルビアの花言葉『感謝』

 

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