正義の味方の俺が悪の組織を壊滅したのだが、異世界王女に召喚されて、勇者たちと(主に俺が)魔王と戦う事になった件

吉高 都司 (ヨシダカ ツツジ)

第1話 彼の名は、闘装超人 オメガイザーα。

 闘装集着変身!


 そう叫び、空中高く舞い上がった。

 そして最高到達点に達すると、伸身宙返り三回転したのち抱え込みながら、回転して光の束が収束していき一点に集まると、その光は四方に弾け、閃光を発しもう一度、輝き始め、その光の陰は次第に人の形になっていった。

 その形とは。


 変身戦闘ボデイアーマー!

 最後の閃光を四方に発し、そう叫ぶと、メタリックに身を包み、騎士の甲冑に似た、それでいてそれとは異なる、凛とした者、それは風にたなびくマントがそう思わせるのだろうか。


 その者は着地し、頭上正面で両手を交互に構え、こう叫んだ。

 闘装完了!


 周りの者、そして対峙しているモンスターたち、そして、勇者一行。

 一連の現象は何が起こったのか、勇者一行以外、初めて見る光景に戸惑っていた。


 正面にいる、モンスター群、スライム、スケルトン、バーゲスト、サラマンダー、タイタンも同様に混乱していた、大抵は定石として、魔法使いが全体に攻撃魔法、もしくは勇者に攻撃補助魔法により攻撃を仕掛けてきて、何合か打ち合ったのち、僧侶、もしくは回復アイテムで体力を回復し、再び攻撃のターンに移る。当然モンスターの素早さが勝ればその間の隙に、勇者一行に対する攻撃が入る。

 そうして、勇者対、モンスターの攻撃防御の戦いの一連の流れになるはずなのだが、一体目の前で起こっているこれは一体何なのか、何を見せられているのか。


 そういえば、これに似た魔法があったはず、そう人型に近いスケルトンとタイタンは耳打ちし合っていた。多分新しい魔法で、変わり身、変身魔法か何かのはず、特に気にすることは無い、という結論に達し、改めてそのメタリックのマントたなびくそれに向かい攻撃を開始した。


 モンスターたちも、相手が勇者だろうが、なんだろうが、魔王様の命令ならば、敵対する者たちは駆逐する以外には道はない、そう彼らは強い意志があった。


 サラマンダーは火を噴き、スケルトンが剣を振りかざし、タイタンは持っている棍棒を叩きつけ、バーゲストが噛みつきつつ火を噴き、スライムが纏わりつこうとした。

 が、そのメタリックの者はトウ!と高くジャンプし、まずタイタンの振り下ろそうとした棍棒を両手でクロスし、受け止め、そしてすかさず、パンチ!と叫びながらタイタンの顔面に拳を打ち込んだ。

 すると、その巨体が、枯葉の様に、まさに風の前の枯葉の様に、その重量を感じさせないほどの軽さで、街の城壁に激突し崩れた城壁の下敷きとなった。

 一瞬の出来事で、スライム、スケルトン、バーゲスト、サラマンダー、は飛びかかる寸前、振り上げた剣、炎を吐き出しかけて口の周りに残り火をまとわりつかせたまま、モンスター群は固まってしまった。

 その光景を見た、勇者一行、そして、遠巻きに見ていた街の人々、群衆も同様だった。

 辺りは、シンとして、次の場面はどうなるのか固唾をのんでいた。

 静寂を破ったのは、メタリックの者だった。

 行くぞ!

 怪人!

 そう叫んだかと思うと、サラマンダーと、バーゲストに向かって走り出した。

 そこで、我に返った二体のモンスターは吐きかけた火を飲み込み、もう一度灼熱の炎として、向かって来るそれに向けて渾身の爆炎を吐きつけた。

 が、メタリックの者はマントを翻し、炎を、爆炎を遮りつつ突進し、ボデイアーマーアタック!と叫び、体当たりを敢行。

 その直撃をまともに受けたサラマンダーは飛んで身を躱す暇もなく大地に叩きつけられその体を大地にめり込ませた。

 バーゲストは同僚二体のモンスターの弔いとばかりに、渾身の炎を吐こうと口を大きく開けた途端。

 瞬時に間合いを詰め。

 ジェットアッパー!と叫びながらメタリックの者はバーゲストの顎を天高く打ち上げた。

 バーゲストは回転しながら、高く打ち上げられ、タイタンの傍に大地に叩きつけられた。

 スライムと、スケルトンは、ほぼ勝ち目がないと分かっていながら、突撃するしかなかった。

 スライムが纏わりつき、動きを封じ込め、スケルトンの剣で止めを刺す。

 それ以外、方法は無く、万分の一に賭けるしかなかった。

 スライムは何とか、メタリックの者の足元に辿り着き動きを封じた。

 そして、一瞬の隙を作り、後はスケルトンの攻撃に賭けるしかなかった。

 が。

 陣風チョップ!

 メタルの者の叫び声と共に

 スケルトンは粉々になって大地にその骨をバラまいていた。

 スライムは、今までの勇者とは違う、異質な者だ、そう思い、恐怖に駆られ、すかさず逃げ出した。

 魔王様に知らせなければ、新たな敵がやって来たことを。

 そう思いながら必死にもがいた。

 だが。

 後からメタリックの者は、瞬時に追って来た。

 逃げるな!悪の手先め!悪の組織は必ず滅ぼしてやるぞ!

 そう叫んでいた。

 スライムは思った、確かに我々はモンスターだが、我々は悪の手先だの、悪の組織だの、悪者ではない、悪いのは・・・。

 そこから先は、メタリックの者に迅速キック!の叫び声と共に全身の伝わる衝撃で意識は掻き消された。


 魔王様、ヤバい奴がいます。お気を付けください。スライムは消えゆく意識の最後に魔王に拾われた頃の風景が走馬灯のように流れ、やがてプツリと途切れた。


 一連の戦いを見て、一方的な戦いを見ていた勇者、魔法使い、僧侶の勇者一行はこんな戦いは見た事が無い、セオリー、定石など全く関係のないこんなバトル一体・・・。


 勇者達の側にいた助手、山元ケーコ(29歳)は彼の強さは本物よ、と彼らに念を押すよう言った。


 周りの群衆もこんな圧倒的な戦いなんて初めて見た。

 が、モンスター群を倒した今、街に平和が訪れた事の方が大事であって、自分たちを守ってくれる救世主ならなんであろうと関係はない、今は享受する。

 隠れていた家屋から、バラバラと人々が出てきた。

 歓びで、包まれていた。


 メタリックの者はディスガイズ!闘装解除!と叫ぶと、今度は不規則の光の色に包まれ、閃光がその身を包んだかと思うと、一人の青年が立っていた。

 それを見た助手、山元ケーコ(29歳)は駆け寄りお疲れ様と、腕にしがみ付こうとした、が。

 彼は、顔を真っ赤にして、彼女を振り払いその距離を取ろうとしつつ、半分強引に勇者たち一行の元へ歩いてきた。

 やあ!どうだったかな!お役に立っただろうか?

 そう、声を掛けてきた、先ほどのメタリックの者、勇者一行、魔法使い、僧侶、そして聖女。

 彼等、彼女らはこの男の名は知っている。

 王女が命じ聖女が連れてきたこの男の名は、五十嵐 ジン。

 聖女がこの世界に召喚したという、彼は異世界からやってきた男。

 異世界では正義の味方をしていたという彼。

 そして、最近悪の組織を壊滅し世界平和を成し遂げたという。


 その名は闘装超人 オメガイザーα。


 現実世界で悪の組織を壊滅した、正義の味方。

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