笠地蔵2

森緒 源

第1話 笠地蔵2(その壱)

 日本の民話「笠地蔵」…お地蔵さんへの優しい愛情を描いた、良い子に聞かせたいありがた〜いお話ですねぇ。


 えっ、知らない?……何だよ、困ったなぁ!

 じゃあかいつまんで笠地蔵のお話をおさらいしますよ。


 雪国の山里にお爺さんとお婆さんがいて、冬のあいだの二人の仕事は菅笠作りだったのさ。


 ある日お爺さんは作った菅笠を持って街に売りに行ったんだけど、思ったように売れず、そのうち日が暮れてしまったのさ。


 仕方なくお爺さんは売れ残った菅笠を持って雪の山里へと引き上げることにしたのさ。


 家のある山里の道にはお地蔵さんがずらずらと並んでいて、お爺さんは通りかかる度に手を合わせて無事の祈願をしてたんだけど、その日は途中から雪が降り、見るとお地蔵さんの顔や頭は雪まみれ、

 「これでは地蔵様も寒かろう」

 お爺さんはそう言って持っている菅笠をお地蔵さんに被せてあげたのさ。


 ところがお地蔵さんの数に笠がひとつ足りず、お爺さんは考えた末に自分が着けてた笠を最後のお地蔵さんに被せ、ホッとして家に帰ったのさ。


 帰宅したお爺さんはこの顛末をお婆さんに話し、お婆さんも

 「それは良いことをしましたねぇ」

 と頷いて、二人は仲良く床に着いたのさ。


 すると二人が寝静まった夜中、お地蔵さんたちは、お餅や食べ物、お金をたくさん持って二人の家の前に届けたのさ。


 朝、お地蔵さんからのプレゼントに喜んだお爺さんとお婆さんは、リッチで幸せなお正月を迎えることが出来ましたとさ。

 めでたしめでたし!



 ……って訳でここから「笠地蔵2」本編に入りますよ〜!


………………………………………………… 

 

 さてここはお爺さんが菅笠を売りに来た街なかの飯処、風体のワルそうな男が3人、酒を飲み飯を食っていた。


 「なぁお前ら知ってるか?…笠売り爺さんの話!」

 「いやぁ、知らん……その爺さんがどうかしたのか?」

 男たちは酔眼のままにそんな話をしていた。

 「年の暮れにここに笠を売りに来たんだが、あまり売れずにしょんぼり帰ったらしいんだ、…だけど噂じゃあ餅におせちにカネをごっそり手に入れてリッチな正月を迎えたって話さ」

 「そいつぁ〜面白い話だな、盗みでもやったのか?」

 「そんな根性の爺いじゃねえよ、何でも村の入り口の地蔵に売れ残りの笠を被せたら地蔵の御利益があったんだってよ」

 「へぇ〜…そうかい、それじゃあ俺たちも地蔵に服でも着せりゃあカネが降って来るんじゃねえのか?」

 「そんな夢みたいなことがある訳ねえだろ!…俺が言いてえのはな、要するにおそらく爺さんの家にはごっそりカネがあるってことさ」

 「…なるほど〜!」


 そして男たちの眼がギラン!と光った。


 翌日の夜……お爺さんとお婆さんはお地蔵さんから施されたお餅で雑煮を作り、お腹いっぱい頂いて幸せに浸りながら布団に入って就寝した。


 ところが眠りにつこうとしたその時、家の戸をダンダンと叩く音がした。

 「こんな夜に誰が来たのかねぇ?」

 お爺さんは起き出して玄関に向かった。


「夜中にすみません!…旅の者ですが、急に雪が降り出して往生しております!…どうか菅笠を売って頂けないでしょうか?」

 戸の外から必死に訴える声が聞こえた。


 「おやおや、それはお困りでしょう!…ちょいとお待ち下さい」

 お爺さんがそう言って戸を開けて見たら、しかしそこに居たのは怪しい3人の男だった……!




 続く



 

 


 

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