パーソナルスペースに、土足で入られることが、嫌だったそうです。
私は相手の事を知りたい時に、「好きな音楽は?」と聞いてしまうことがあるのですが、
それを嫌がる人もいる……という事を初めて知りました……。
自分を知られるということは、裸にされる感覚になる。なるほど。そうなのかもしれません。
本屋では、挙動不審……という言い方があっているのかは分かりませんが、
あたりを警戒しつつ、ご贔屓の作家先生の本を買うのだそうです。
これも、クラスメイトに、普段の自分を見られるのが嫌だったからだそうなのです。
それは、他人を寄せ付けたくない。独りでいたい。
そういう気持ちでは決してなくて、
どうやらこの作家先生なりの、願望と言いますか、希望があったみたいでして……。
軽妙な文章はまるで、綿矢りさの作品を読んでいるかのようで、非常にスッと心に文章が入ってきます。
いろいろな人が、いるんだナ……。
ご一読を。
将来の夢も決められない、「置泥になりそこねた」主人公の一人称が、とにかくうまいです。
軽口まじりの自虐なのに、ところどころでグサッと刺さる一文があって、読んでいるうちに気づけば自分の黒歴史まで勝手に思い出させられます。
交通事故も、古本屋バイトも、雨の日の記憶も、どれも「大事件」じゃないのに、描き方ひとつでここまで愛おしくて、苦くて、可笑しい出来事になるんだ…と感心しました。
ビニール傘という“どうでもいい消耗品”を通して、
「人生なんてこんなもんかもしれない」という諦めと、
「それでも誰かと笑いたい」という小さな希望がちゃんと残る。
派手な展開はないのに、読後感はびっくりするほど豊かです。
雨の日に、静かに一気読みしたくなる一冊でした。