第22話『四大宝玉と古代帝国の影』

 扉を開けるとそこは巨大な棚が置かれていた。 その中には本が並べられており、何人もの人たちがその本を調べていた。


「彼らが学者か」


「ええ、確か【ヒュライド】というルードランド王国の考古学者がいるはず......」


 近くのものたちに聞き、奥へと進むと、大きな机にたくさんの本を積んでいる老人がいた。


「あなたがヒュライドさん?」


「なんじゃ、今忙しい、後にしてくれ」


 そうこちらを向くことなく頭をかきながらヒュライドさんが言った。


「かなり緊急を要する話なんだ。 終焉の宝玉ヴェルム・オーブという......」


「なに!? 終焉の宝玉ヴェルム・オーブじゃと!! 持っておるのか!」


 そういって振り返るとレンドの両肩を持ち揺らした。


「お、落ち着いて、そういうものを探しているやつらがいるんです!」


「な、なに......」


 

「なるほどのう...... あの宝玉を探しておるものが......」


 そう考え込むようにヒュライドさんはつぶやく。


「どういうことかな。 説明をしてくれないか」


 そうゼノフォスが言うと、ヒュライドさんが目を丸くした。

 

「あっ! 王子!?」


「王子!?」


 レンドと俺はゼノフォスを見た。


「ははは、そうなんです」


「王子ということは......」


「ええ、イオリシアの双子の弟です。 あなた方のことは姉上から聞いていたのです」


「イオリシアの弟? そうだったのか」


「なんで王子が、冒険者なんか......」


 レンドが腑に落ちないように言った。


「そうですね。 我が王家は庶民の気持ちを理解するために、身分を偽り町に出るのが、代々の習わしなんですよ」


「......というより、勝手に出歩いとるだけじゃろう」


 ヒュライドさんが言うと、ゼノフォスが頭をかいた。   


「無茶苦茶な王子だな。 まあイオリシアもそんな感じか...... 話を続けてくださいヒュライドさん」


「うむ、古代に【ブレンバルト】という帝国があった。 その帝国がこの世界を制覇するために使ったのが、その宝玉だという」


「終焉と始祖の宝玉......」


「いや、あと二つある。 【運命の宝玉】《フォーチュン・オーブ》、【意志の宝玉ウィル・オーブだ」


(四つの宝玉......)


 そしてヒュライドさんは四つの宝玉の話を始めた。


「宝玉は四大国が作り出した遺物レリックだった。 それを皇帝【ヴェルザグ】は全てを奪い、世界を支配した」


「だが文明ごと滅んだ......」


「......ああ、どう滅んだかまではわかってはいない。 しかしその四大宝玉はとてつもない力を持つという、効果まではわからんがな。 そいつらが集めて何をするのかは知らんが、放置すると危険かもしれんな......」


「ある場所がわかっている宝玉は、ルードランド王国にある始祖の宝玉ファースト・オーブだけなんですか」  


 レンドが聞くとヒュライドさんは首をふる。


「いや、運命の宝玉フォーチュン・オーブが、【リュージュ神殿】のダンジョンにあると文献にはある。 しかし......」


「リュージュ神殿か......」


 ゼノフォスが眉をひそめる。


「なんだ?」


「あそこのダンジョンは入って帰ってきたものがいません」


「なぜだ?」


「......【不死者】《アンデッド》の巣窟となっているからです」


 ゼノフォスは言いづらそうに言った。


「アンデッド......」


「ええ、亡霊や死者がよみがえり、モンスター化したものです。 不死ゆえ死ぬことはなく、魔法や物理的に粉々にするしかないのですよ。 それでも時間がたてば甦りますが......」


「ひぇぇえ......」

 

 レンドは情けない声を出した。


「それなら、簡単には奪われることもないか。 オールバンクを探ってみたがその宝玉は売ってない。 仮に売っていても、買えんしな」

  

「いや、あのリゼルダインたちの力なら、アンデッドたちを粉砕できるかもしれませんね」


 ゼノフォスは眉をひそめる。


「確かにな......」


「あそこは迷宮と化しておる。 道案内もなしでは相当苦労するはず......」


 ヒュライドさんがそう言う。


「それなら放置しておきましょう!」


「アンデッドが怖いだけじゃないのかレンド」


「そ、そりゃ、そんな化物戦いたいわけないじゃないですか!」


「ふむ、しかしな。 そやつらが残り三つのうち何個か手にいれておるやもしれん」


 ヒュライドさんも眉をひそめる。


(......もし、運命の宝玉フォーチュン・オーブを取られたら、本格的に残りを探すだろう。 つまり俺の持っている終焉の宝玉ヴェルム・オーブを...... ルードランドに渡すか、いやいくら二人の祖国とはいえ、ルードランドが悪用しないとも限らないな)


「やはり、確保しておくしかないか......」


「ええぇ......」


 レンドの悲痛な声で答えた。


「それがいいかもしれんな」


「しかし迷宮ですよ。 そう簡単に攻略できるとは思えませんが......」 


 ゼノフォスが疑問を呈した。


「それなら、おーい【ディルセア】!」


「なによ。 おじいちゃん。 そんな大声ださなくても聞こえてるわ」


 そう奥の棚から、勝ち気そうな少女が顔をだした。


「わしの孫娘だ。 古代の知識はかなりのものだ、魔法も使える。 迷宮について詳しいから連れていくといい」


「勝手なことはいわないでよ! 私はブレンバルトを調べてるの! そんな暇ないんだから!」


 そうディルセアは怒った。



「ブレンバルトの資料はほとんどない...... この膨大な文献から調べるのは大変なんだからね」


 そういってディルセアは文献を漁っている。


「ディルセア、もしその文献が見つかれば協力してくれるか」


「はあ? そんなの素人のあなたには無理よ」


「オールバンク」 


 文献を探しだし買った。 


「あった。 これだろ」


 手にした文献を見せると、ディルセアはこちらに走ってきた。


「こ、これ、本当にブレンバルトの文献だわ! あなたどうやってこれを!」


「それより、協力してくれるのか」


「わ、わかったから、それを見せて!」


 俺はその文献を渡すと、ディルセアは食い入るように文献を読み始めた。

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