第13話『運命を裂く右腕』
「くくくっ...... 王女か、だからなんだというのだ」
うつむいていたディセンタがこちらを見た。
「諦めなさい...... ここにはじき王家の兵が来るでしょう」
「ここは私の領地、国だ...... お前たちなど殺して、隣国【ゼアルード】に属せばよい!」
「そんなことが可能だというのですか......」
「もとより、発覚した場合の対処はしている。 そのための金だ! それに......」
ディセンタは犬笛を吹いた。
地鳴りがして、地下から赤い狼が飛び出してきた。
「ひいっ!! やめっ...... ぎゃあああ!!」
そして足が凍っている黒服を、食い始めた。
「あの巨大な檻、こいつらキリングウルフの檻だったのか!」
「こいつはまだ調教できておらん! だがもうお前たちさえ殺せればよい!」
そういってディセンタは柱に隠れた。
「ガルルルルッ!!!」
よだれを流してキリングウルフがこちらに近づく。
──その凍える、白き息吹よ、あらゆるものをここにとどめよ──
イオリシアの魔法により、キリングウルフの足元が霧に包まれる。 しかし凍りつかず前に進んでくる。
「ははははっ! そのキリングウルフは戦争用に魔法耐性を持たせてある!」
(一応、インターバルがすんで
「ガアアアアッ!!」
キリングウルフは走り、その口が開かれた。 巨大な牙が光る。
──その輝く光よ、そのヴェールで包み、我らを守りたまえ──
半球状の光の膜が俺たちを包み、噛みつこうとするキリングウルフのその牙を防いだ。
「さすが王女、複数の魔法をつかうな。 だがいつまでもつかな」
ディセンタは薄ら笑いを浮かべている。
「くっ......」
イオリシアはかなり苦しそうだ。
(魔法を維持するために、なにかを消費するのか......)
キリングウルフは何度も引っ掻き噛みつこうとしている。
(掌や腕を鉄や剣に変えても、あのモンスターを倒すのは無理だ。 前のやつのように
光の壁に触れる。 外には出られない。
「イオリシア...... この魔法どんなものも弾くのか」
「えっ...... ええ、大抵は......」
「......これは開けられるか......」
「だめです! 開ければ、あなたは死にますよ!」
「このままだと魔法は切れるんだろ...... あのモンスターを倒す方法はあるのか?」
「それは......」
「魔法を維持したまま、俺だけ外に出してくれ、できるか......」
「......しかし」
「そうですよ! 死にますよ!!」
レンドが止める。
「仮に壁をはずしても、その瞬間モンスターがあなたに向かいますよ......」
「かまわない......」
「わかりました。 私にはもう手がありません。 あなたに賭けましょう」
「二人ともなにいってるんすか! 死ぬんですよ!」
「このままなら同じことだ。 それなら可能性に賭ける......」
「......くくく、無駄なことだ。 お前たちは死ぬ運命だ。 どんなにあがいても運命からは逃れられん!! 生まれながらそう決まっているのだ!!」
ディセンタは唇を歪めあざけるように笑う。
「イオリシア...... やってくれ」
「行きます!」
光の膜が横に開き俺は外に出た。 その瞬間、キリングウルフは俺の方に向かって走った。
(しまっ......)
ガンッ
目の前のキリングウルフに石が当たり一瞬、その動きが止まる。 後ろにレンドがいた。
「お前......」
「早く!!」
「ああ!!」
キリングウルフは口をあけた。 俺は左手を防御壁に触れ、その真っ赤な口の中に俺は右腕をいれる。
「
(空気と防御壁を入れ換える! 価値のないもの同士なら生命力を消費しないはず!)
キリングウルフがその口を閉じようとした時、キリングウルフの頭が弾けた。
そのまま頭のないキリングウルフはその体を地面に倒した。
「なっ...... キリングウルフが......」
何が起こったかわからず、ディセンタは呆然としている。
俺はディセンタの前にたった。
「ひぃ...... た、助けてくれ! そうだ! 何でもやろう! 金か! 地位か! お前の望むものをやろう!」
そこにいたのは、あの威厳をたたえた領主ではなく、ただの哀れな老人だった。
「そうか......」
俺は拳をディセンタの顔面に叩き込んだ。
「ぶふっ!!」
ディセンタが吹き飛ぶ。
「......がはっ」
「それなら、お前が全てを失うところが見たい......」
「ま、まて、許してくれ」
「運命に抗わないんだろ...... お前の運命に従えよ」
「や、やめてくれ......」
俺はもう一発殴りつけると、歯が数本宙に舞い、ディセンタは気絶した。
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