第8話「噂の新人ギルド嬢ちゃん」
「亡きお父様からも教えていただいたんですよ。わたくしの様な女は、
わたくしの様な女?
ザマ──フォックスタイプメガネを掛けて?
それってどういう意味なんでしょう?
「え? エル先輩それどういう意味すか?」
「亡くなった父の言葉なんですよ。『ギルド嬢こそ女が就くべき職業のナンバーワンだ』って」
「なんか
確かに。
ルイが言う通りにそう思われてもおかしくない内容な気がしますね。ジェンダー意識が低いというか。
「わたくしエル・ボガードが就くべき職業、という意味で言ったんだと思います。父も」
「それはめっちゃ分かるっすね。めっちゃ活き活きギルド嬢してたすもんねエル先輩は」
んでも──とひと言つづけたルイが、腕を組んで顎に手をやり何事かを考えている様子です。
「んでも、ギルド嬢やる前から適性とか見抜いてたんすかね、エル父ちゃん」
「どうでしょう。父は腕利きハンターだったので、何か感じるものがあったのかも知れませんし、単にギルドでお見掛けするギルド嬢に憧れでもあったり──かも知れませんね」
本日
普段のルイは一旦帰ったり休憩室で昼寝したりするんですが、本日は親交を深めるという事で一緒に過ごしてエルの来歴など話す事になった様なんです。
なのでどうせなら、という事で両親のことから話しちゃおう、なんだそうです。
まぁ、たっぷりと時間もありますしね。
「現役時代の父は────
ここボルオエスベを拠点としてはいませんでしたから、この街では父のハンターとしての知名度はほぼありません。
けれどここより東の街カサではそれなりに名の通ったハンターだったそうです。
けれど早々と引退してこの街に移り住み、ここで母と出逢って再びハンター稼業を始めたんですって」
「ははぁ。さてはエル母ちゃんに良いとこ見せようと思って?」
「そうかも知れません。母も女だてらにハンターでしたから」
「パーティを組んだ二人でしたが────
そのあと割とすぐに二人揃って引退したんです。詳しく何があったかは知らされていませんが、この街のダンジョンで
「特殊な罠、っすか? あんま聞かないすけどね」
「かなり深い階層らしいですから。大きな声では言えませんが、海猫亭をご利用中のハンターさま方はまだ挑まれていないかと」
残念ながら居ませんねぇ。
ずいぶんマシになって来はしましたが、ギルマスのロジンを抜いたらまだまだパッとしませんもの。
「ウチの連中、討伐と採集メインすもんね。
ここでルイが言った『ゲトゥのおっさん』という方。
先程エルがクエストの斡旋をしたおじさまハンターさんの事ですよ。
フルネームはゲトゥ・ホ──
「なんだいなんだい? ウチのヤドロクの話で盛り上がってんのかいルイちゃん?」
「ありゃランさん。居たんすか」
突然現れた、こちらの年配の女性。
年配の、と言ったってエルと
「そりゃ居るわよ。あたしゃここの看板お給仕兼オーナーなんだから!」
むん! と胸を張って腕を組み、そのふくよかと言うよりは
「ウチのヤドロクがお世話になっております〜、ってかぁ!?」
「エル先輩。この『えっへん』ってしてるのがこの店の
「
ですからこちらの彼女、ゲトゥの奥様です。
なんだかちょっぴりですけれど、彼女を見るエルの視線に羨望が含まれている気がしますね。
もちろんゲトゥと結婚が羨ましいという訳ではなく、結婚そのものがちょっぴり羨ましいってことでしょう。
エルだって女の子ですものね。
「ちょいとルイちゃん。噂の新人ギルド嬢ちゃんじゃないのかい?」
「噂の新人ギルド嬢ちゃんすよ? なんで? 変すか?」
「いやだって先輩って呼ばないでしょうよ、新人を。普通は」
ごもっともですねぇ。
ややフレッシュさには欠ける新人ギルド嬢ちゃんではございますものねぇ。
というかまだ半日しか働いていませんのに、新人ギルド嬢ちゃんもう噂になってるんでしょうか?
「ぱんぱかぱーん! 何を隠そうこのエル先輩、キャリア十五年の超ベテランギルド嬢なんだ〜!」
両の掌をクルクルひらひらやるルイが雑に紹介してくれました。
それを受けてエルは椅子から立ち、しっかり目を合わせてニコリと微笑んで──
「初めまして、エル・ボガードと申します。どうぞお見知り置きを」
──両手をお腹あたりで揃え、しっかりと体を倒して最敬礼。そして再びにっこり笑顔。
「そのメガネと言いこの挨拶と言い、こりゃベテランだわ。てことはまだまだ
あぁ、まぁそうなりますね。
新人なんて言ったって、キャリア十五年のエルに対して、あのコはまだ半年かそこらですもの。
当のエルはというと、コテンと首を傾げて『あのコ? どなた?』という顔してますけどね。
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