第5話「お昼休みに」
「そうでしたか。お三方は姉妹だったのですね」
そうなんですよ。
上から順にキウ、セン、ルイの三人は、三姉妹ということもあって当ギルド海猫邸の花形ギルド嬢なんですよ。
特別に百合百合しいとかそういう感じの
「ルイが一番下、三女っす! ハタチっす!」
「ウチは次女のセン・シン二十四! よろしくね♡」
「長女キウ・シン。二十八」
朝の忙しい窓口業務も終了し、本日『通し』で入るエルとルイのお昼休みまであと少し、というタイミング。
ハンター様方が窓口にいらっしゃらないのを機に、どうやら四人ようやく落ち着いて自己紹介らしいです。
依頼書掲示板の方にはちらほらハンターさんがいらっしゃいますけど、こちらに来る様子は今のところございません。
ですのでそれぞれ、椅子をカウンターから離して後ろにやって車座です。
新参者ですからと、エルがキチンと立ち上がり腰を折ってご挨拶。
「エル・ボガード、三十五のアラフォー、でございます。どうぞよろしくお願い致します」
自虐めいてそう言ったエルに対して、長女のキウが応じます。
「朝は『おばさん』なんて言ってごめんなさいね。おばさんってより超仕事のできるベテランって感じ。大したものだわ」
今朝はツンケンしていたキウがそう言ってくれるとホッとしますね。
お
やっぱり一緒に働くって良いものなんでしょうね。
「そんで三十五はアラフォーじゃないよエルさん。私だってアラサーのつもりないしね」
二十八歳のキウ。
当ギルドでも一番美人と評判ですが、その美人さんの中に漂う
「あら、そうなんですか? 山狗亭ではアラフォーだから受付嬢はちょっと──なんて言われたんでそういうものかと思ったんですけど」
「あー! そういうのいけないんだ〜! 女の敵だぞ山狗亭〜! ぷんぷん!」
そう言ったのは二十四歳のセン。
最近のお若い、えと、ギャルっぽい中にあざとさが見え見えして可愛らしいのが彼女です。
見え隠れじゃなく、見え見えしてます。突き抜けてて逆にもうそれが素敵なんだと評判です。
人間の好みってもうワケが分かりませんよねぇ。
「エル先輩エル先輩! 任せてくれたらルイが火矢でも放ってくるっすよ! 山狗亭に!」
と、そう言ったのはルイ──
「──だ、ダメですよそんなことしちゃ。めっ、ですよ」
不穏なルイの発言を喰い気味に却下するエル。
頼もしいです。
初日にして彼女をお
若干ハタチのルイは元気者。妹キャラというより後輩(しかも男子)キャラって感じです。
この三姉妹とエルの四人に加えてあともう二人のギルド嬢がいるのですが、午後から出勤致しますのでエルも今日中に全ギルド嬢に顔見せできるというワケです。
「さ、十二時だ。ルイ、エルさん、昼休み取りな」
時計に意識をやれば、確かにぴったり十二時です。
「では行って参ります」
「どこ行くんすか? お昼一緒しましょうよエル先輩!」
「お話があるとのことですのでギルマスのところへ。その後でも良ければ是非ご一緒させて下さいませ」
「分かった待ってるっす! 先輩のこともっと教えて欲しっす!」
良かったです。
ロジンのあの小さな声でも聞こえてたんですね。
ホッとしました。
◻︎◇◻︎◇◻︎◇◻︎◇◻︎
ギルド二階の突き当たり、ギルマス・ロジンの執務室前。
コンコンコン、とドアを叩いてエルが
「エル・ボガードです」
「どうぞ!」
その声に応じてドアを開いて──どうやらエルもホッとした様です。
いつものあのとぼけた瓶底丸メガネは掛けていますし、鼻に詰められていたティッシュは抜いても平気な程度には鼻血も止まった様でしたから。
「すみません、お昼休みに」
そう告げつつもさりげなく、掌でソファを示すもんですからエルも大人しく腰を下ろしました。
さらに続けて流れる様にポットへお湯を注ぎつつ、当ギルドはどうでした? 午前中の業務に困った事はありませんでしたか? なんて聞いてみせたんですよ。
「正直言って気に入りました」
「早いですね。ちなみにどんなところが気に入ったか聞いても良いですか?」
こくりとひとつ頷いて。
「ええ。まず建物が良いです。重厚な造りなのに木造の優しさがしっかりあってとても良いです。あと海猫を模した風見鶏もチャーミングで素敵ですね」
まぁ! エルったら! 良いセンスされてますね!!
当ギルド海猫亭のマスコット、海猫の風見鶏にまで明言して貰えて大変嬉しいです!
私だけでなく、そう言われたロジンも嬉しそうにしてらっしゃいます。
「さらにルイさんたち受付嬢さんたちが良いです。ハンターさま方からの信頼厚くもざっくばらん。バランスがとても良いです」
「他にはどうですか?」
「えぇ。最も良い点が、利用者さま方です。時折いらっしゃる横柄なハンターさんも、実は気さくな
それはひとえにこのギルマス・ロジンの考え、教育、人柄。そういったものの集大成と言っても過言ではないように思います。
何かと苦労してきましたものね。
「こちらに比べれば山狗亭はあまり良いギルドとは言い難いかも知れませんね」
「でしたら良かった! 五年前にこのギルドを開いて以来、なんだかんだと苦労してきましたから」
そうでしたね。当ギルド海猫亭を開いて苦節五年。
そう言えばエルが勤めに出始めた頃には山狗亭か、エルの自宅から遠い
「そこでエルさん」
「なんでしょう?」
「僕と一緒になって貰えませんでしょうか?」
え──!?
なんで? まさか求婚? 唐突過ぎるんちゃう!?
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