自分の寿命は予め決められており、それは体と同化した時計でわかる。
そんな奇跡とも言えるほどの呪いに満たされた時刻みの国。
大人になる前に死んでしまう運命を背負った、ウィジットが全力であがく姿に、胸を打たれます。
幼くして亡くなった妹。壊れた母親に得られなかった家族愛。
人はつい忘れてしまいますが、人生には限りがあるということ。
彼のしていることは倫理的にはいかがなものかと思われるが、そこには切実さがあります。
命の大切さなんて、言葉にしてしまえばチープとなるテーマですが、物語を通じて今一度考えてみても、良いのではないでしょうか。
ウィジットは願っていた、皆に看取られて穏やかに死にたいと。
この国では、皆自分の寿命を知っている。
彼の時間は長くない。
だが、彼の幼い妹ミッティが彼よりさらに短い寿命を終えたことで、願いは狂いだしてしまう……
願いによって呼び出されたもの、生み出されたものは秩序を越えようとし、そのことで秩序を守るものが呼び出されてしまう物語。
そこにあるのは悪ではなくて、ただ切なる願いと守ろうする者の衝突なので、どちらの側に立つべきか迷います。
分かるのは、正論は人を救うわけではないということだけです。
ただ彼が精一杯傷ついて望んだからこそ、罪の記憶と共に慈愛が残されたんだろうなと感じました。