どれだけ結んでいても、いつかは壊れるだろう。

若い頃、理不尽なことやどうしようもない絶望が世界の全てだった。
しかし、年を重ねると、今度は自分の心を掴めなくなって、空っぽな人間になったような気がする。
人生とは形のない喪失の連続だと思う。
ただ、失うこと自体は別にどうでもいい。
何より怖いのは、失っているという感覚すら失うことだ。
栞はそうやって大人になる途中で、失っているという感覚すらを失った人かもしれません。

二人の関係性に、なんとなく「蝶々結び」の歌詞を思い出した。

「ほどけやしないように
と願って力込めては
広げすぎた羽根に戸惑う」

どれだけ結んでいても、いつかは壊れるだろう。