第十一.五話 仲良くなろう会~それぞれの痛みを添えて~ 其の二
リオの話が終わると、「リオさんほど、重い理由はありませんが」そう言葉を紡ぎながら、次は私の番、とでも言わんばかりに、ツバキが話し始めた。
あれも、リオだけにつらい思いをさせたくないという、彼女なりの優しさだったのだろうか。
ツバキは、、エレジア王国東部の、ミカゲ子爵家の生まれで、
ミカゲ家は、「ミカゲ一刀流剣術」と言われる古流剣術の創始の一族であるらしい。
さらに、道場も運営しており、そこで「ミカゲ一刀流剣術」を身に着けることができる。
もちろん、ツバキの扱う剣術も、「ミカゲ一刀流剣術」である。
「ミカゲ一刀流剣術」は、一子相伝の剣術で、ミカゲ家の次期当主が、道場の師範を任されるのだそうだ。
ツバキといえば、現在は、エレジア内でただ一人の女性の騎士である。
彼女が、王国騎士団に入隊したのには、どうやら理由があるらしく……。
彼女が生まれた当時、ミカゲ家は、クラウス家と並ぶ伯爵家だったそうだ。
ミカゲ家は、魔王が復活していなかった時代に、当時、人族国家同士の間で起きていた戦争で武功を上げ、伯爵家となった、成り上がり貴族であったらしい。
しかし、戦争が終結すると、武功で家格を上げていったミカゲ家にとって、大きな問題が一族繁栄への一途をふさいだ。
それは、エレジア王国には既に、武の名門である、五大侯爵家がいたことだった。
これの何が問題なのか。
単純に、「ミカゲ一刀流剣術」の入門者が一向に増えないのだ。
各侯爵家にも、特定の剣術が根付いているため、入門するのなら、伯爵家よりも、さらに家格の高い侯爵家にしようと考えるのは、普通のことである。
そうなると、ミカゲ家のエレジアへの貢献度は、もちろん下がっていく。
そして、それが長く続いて、とうとうミカゲ家は、子爵家へと、格下げされてしまったらしい。
要するに、ミカゲ家は今、静かに、しかし確実に、没落への道を歩んでいるのだ。
ここで、つながるのが、ツバキが王国騎士団へ入隊した理由である。
ツバキは、剣術の才については、天才の域に近く、現在のミカゲ家の当主、いわゆる、ツバキのおじいちゃんからは、剣術に関して言えば、歴代のミカゲ家当主でも類を見ない才を持っているだろう、と言われていたほどだそうだ。
ちなみにこれは、ツバキが顔を少し赤らめながら、自分で言っていたことである。
ただし、性別を除けば、であるが。
そこでツバキは、父から頭を下げて、こう頼まれたのだそうだ。
「ツバキ、騎士団にいってくれないか。まだ成人すらしていないお前にとって、これがどんなにつらい頼みなのかもわかっているつもりだ」
「でも、ツバキの才能なら、騎士団でも活躍して、ミカゲ一刀流の名を広めることだってできると思ってる」
「自分の娘に頼ることしかできない、情けない親ですまない。でも、こうでもしないと、ツバキの未来も危ないんだ、本当にすまない」
父の目の奥に溜まる涙を見て、断ることはできなかった──ツバキは静かにそう呟いた。
その後、ツバキは、無事騎士団へと入団したらしい。
しかし、結局のところ、「女である」ということと、他の騎士たちとは、「異質な戦い方」であるということを理由に、「私はおそらく、騎士団で浮いてしまっていたと思います」とツバキは語った。
ツバキは、団長がそれをわかっていたからこそ、勇者パーティに参加してくれ、と私に頼んだのだと察して、それを了承したようだった。
「……私は、剣を振るうたびに、あの時の父の涙を思い出します。あの時、断るという選択は、私にはできませんでした」
フィンは、その言葉の奥に、ツバキが背負ってきた重さと、ツバキの家族を思う優しい気持ちが滲んでいるように感じた。
順番的に言うと、この後は、ユリシアだと思っていたが、彼女は、ここでも眠ってしまっていたため、レオが先に話した。
レオは、妹と弟を守るために、勇者公募に応募したのだそうだ。
「え、世界じゃなくて?」
リオがそう質問した。
フィンも正直そう感じていた。
レオは、リヴァルナ村という村で、父母弟妹たちと、楽しく暮らしていた。
村民たちは、みな心優しく、温かい場所だったという。
リヴァルナ村は、付近に美しい湧水が多くあることで有名な村で、若者はあまり多くない村だった。
魔王が復活してからというもの、大陸中に魔物が増えた。
魔物とは、魔族の邪気に汚されたことで、突然変異した動物たちや、魔族からあふれ出る魔力そのものから生まれた狂暴な生物たちのことである。
六年前のある日、村の近くの森に、大型の魔物が現れた。
その魔物と戦ったのが、当時、一番実力のあった、父と母を筆頭とした、村の若者たちだったそうだ。
レオの父は、戦士で、レオの母は、魔法士だった。
なんとかその魔物は倒すことができたが、魔物との戦いで、ケガを負ってしまった者も多かったという。
そのなかには、レオの父と母も含まれていた。
魔物によるけがは、多くの場合、傷口が邪気で侵されてしまって、回復ポーションが効かない。
もちろん村には、聖属性の魔法を扱える者などいなかった。
それが意味することは、彼らの死である。
レオと、弟妹たちは、その日、親を亡くしたのだった。
ずっと泣いている、弟妹達。
レオは、その姿を見て、自分も泣きたい気持ちを我慢して、これ以上、弟妹達を悲しませまいと強くなることを誓ったそうだ。
「それがどうして、勇者公募に応募することにつながるんですか?」
フィンが、もっともな疑問をレオに問いかけた。
すると、レオは、
「魔物は、魔王のせいで増えたって聞いたから」
「魔王を倒せば、もう村が魔物に襲われることもなくなって、俺たちみたいに、家族を亡くしちゃう子もいなくなるかな、て思って」
「なんか、意外。世界を救いたいとか、もっと大きなことを言うと思ってた」
ツバキがそう呟いた。
「くだらねぇ理由で悪かったな!!」
レオはそっぽを向いて、耳の先を赤く染めていた。
「くだらないとは言ってないですよ!」
とツバキが言い返した。
「まあでも、それで勇者に選ばれたんだったら、レオはすごいよ」
とリオが言った。
すると、レオは、
「ああ、そういえば、みんなには言ってなかったっけ」
「あれ、俺が選ばれたんじゃなくて、もともと応募者が俺しかいなかったらしい」
「「「………」」」
「「「えええええ!?!?!?」」」
レオの衝撃の一言に、三人が驚きの声を上げた。
「で、でも、王命の儀の時は、『数多ある』って言ってませんでしたっけ?」
フィンの質問にレオは、
「ああ、あれ、体裁らしい」
「体裁!?」
「体裁ってどういうこと!?」
「体裁ですか!?」
「……うーん………むにゃむにゃ………みんなうるさいよぉ……いまいいところだったのに……」
三人の声を荒げた反応で、ユリシアは目を覚ましていた。
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