ツンとしたスパイスな彼女が甘くなる瞬間。
丸尾累児
第1話
「厳選なるクジ引きの結果、アナタが文化祭実行委員に選ばれました?」
……なんて言われたら、どう思う?
ぶっちゃけ誰もやりたがらないはずだ――オレこと、
やむなく、オレは文化祭実行委員の会議に出席することとなった……もう1人の文化祭実行委員の女子とともに。
「……はぁ~なんかイヤだなぁ~実行委員なんて」
「まだ言ってるの?」
とオレのため息に対して、ツッコミを入れてきた人物。
わがままボディの腰元まで届く銀色の長い髪。
卵形の顔立ちに添えられた目は、切れ長で瞳にターコイズの宝石が埋込まれていた。
そんな市澤は、自ら望んで立候補したもう1人の文化祭実行委員である。まさか自ら望んで立候補するヤツがいるだなんて、いまだに信じられないよ。
でも、市澤は真面目な性格の美少女だった。
「委員会、早く終わらないかなぁ……」
「そうもいかないみたいよ? どうやら、ガラの悪い先輩もいるみたいだし」
と言って、市澤が顔を廊下側の方に向ける。
何かと思って、視線を追いかけると、机に脚をのせて座る3年の男子が目についた。
両隣には、日焼けした金髪ギャルと、ピアスを付けてスマホをずっとイジっている先輩とおぼしき人たち。
「出席している以上は、ちゃんと仕事してくれる……んだよね?」
「さあ、どうかしら……? ちゃんと働いてくれると願うしかないわね――働けばの話だけど」
「辛辣だなぁ~市澤は」
「……別に。思ったことを口にしただけよ」
確かにあの態度からは、そんな風には思えない。
市澤も市澤で、相変わらずなストレートな物言いをするし。もうちょっと空気を読んでほしいな。
「では、文化祭実行委員会を始めます」
やがて、文化祭実行委員長に選出された2年の女子の先輩の合図で会議が始まった。
議題は、文化祭実行委員としての確認事項と役割分担が主な議題だ。
「委員長、ちょっといいか?」
そんな中での突然のトラブル。
急にガラの悪い先輩がなにか言いたげに手を上げたのだ。
「なんですか?
「実行委員会は、なんらかの催し物はやらないんですかー?」
「申し訳ないのですが、実行委員はあくまで文化祭の運営を円滑に――」
「どうせなら、芸能人呼んで派手に盛り上げようぜ~!」
おいおい、ちょっと待ってくれよ……。
小名木と呼ばれたチャラ男な先輩のヘンな提案のせいで、議場がざわついている。みんなも声を上げればいいものの、あまりいい噂のない人だけに目すら合せない。
このまま議場が飲まれてしまうか――と思ったが、なぜかオレの席の隣のヤツだけが違っていた。
「委員長、私は反対です」
これには、委員長も驚いてた。
当然、小名木先輩もそんなこと言われるなんて思ってもみなかったのだろう。
「い、市澤さん……?」
「お~オマエが市澤か~? メッチャカワイイって思ってたけど、マジパネぇな」
「胸デッカ!! 揉んで下さいって言ってるような大きさじゃん!」
「アンタら、スケベ心丸出しすぎ~。市澤ちゃん、泣いちゃうよ~?」
「三馬鹿が何か言っているようですが、私にはカラスかブタの鳴き声にしか聞こえません」
「……あ"?」
刹那、小名木先輩の声色が変わる。
その途端に視聴覚室の空気がピリいた。誰しもが「あ、キレた」と理解したが、当の市澤だけはひるむ様子はなかった。
「そもそも、文化祭実行委員が持てる権限などたかが知れてます」
「だったら、生徒会でも呼んべばいいだろう?」
「『できないものはできない』――っていうのがわからないんですか? それとも、そういう考え方しかできない脳みそしかないんですか?」
「おい、糞アマ。オレが提案してるのに頭ごなしに否定するとは、どういう了見だ?」
「できないのをわかってて、提案するのは『馬鹿だ』と言っているんです」
――ちょっ!! 市澤ぁーッ!!
オレは心の中で叫んじまった。
だって、これ以上ヒートアップしようものなら、いくら小名木先輩でも暴力を振るいかねない。
「小名木君、市澤さん。いい加減にしなさい!」
ところが、矢庭に顧問役の先生が介入してくる。
おかげで、口喧嘩で騒いでいたふたりは沈黙。戦争前夜の空気が一気に静まりかえった。
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