9話
スタッフが俺を呼び戻しに肩を叩くまで、ただ立ちつくしていた。最後の曲の途中だったが仕事なので仕方なく会場を出る。広いハコな故長い廊下を進みながら明瞭になった考えを思い直す。
アイドルは理想像じゃないと駄目で、弱みは見せてはいけないと思っていた。
スポットライトのもとという、アイドルが最も輝く場所で涙を流した珊瑚を思い出す。
(けど…。泣いても、辛いって言っても、良かったんだな。飛び降りる前に…知っていたか…った──!)
照明とはまた違う明るさを横から感じ、顔を向けると、舞台裏からたくさんのペンライトの灯がよく見えた。赤と青だけじゃない。
推しはそこに居なくても、たしかに光り続ける俺の色があった。
(ごめん…。俺、あそこにいなきゃいけないんだ)
ファンのため、メンバーのため、どこかの誰かに、そして自分に__灯を灯すため。
「もうちょっと…生きたい…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます