9話

 スタッフが俺を呼び戻しに肩を叩くまで、ただ立ちつくしていた。最後の曲の途中だったが仕事なので仕方なく会場を出る。広いハコな故長い廊下を進みながら明瞭になった考えを思い直す。

 アイドルは理想像じゃないと駄目で、弱みは見せてはいけないと思っていた。

 スポットライトのもとという、アイドルが最も輝く場所で涙を流した珊瑚を思い出す。

(けど…。泣いても、辛いって言っても、良かったんだな。飛び降りる前に…知っていたか…った──!)

 照明とはまた違う明るさを横から感じ、顔を向けると、舞台裏からたくさんのペンライトの灯がよく見えた。赤と青だけじゃない。


推しはそこに居なくても、たしかに光り続ける俺の色があった。


(ごめん…。俺、あそこにいなきゃいけないんだ)


 ファンのため、メンバーのため、どこかの誰かに、そして自分に__灯を灯すため。


「もうちょっと…生きたい…」

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