第二楽章 ④ 『全諜報員は速やかに起ち上り内部より浸透せよ』
街の空に信号弾が光る。
奪い取った王国兵の【コルネット】を使い、ルチアが音響弾に色をつけて発射するための曲を吹いたのだ。
光弾符丁の意味は、『陣地確保』。
市街地区の城門を奪ったときに上げる合図だった。
すぐに帝国軍の陣営に認められたようで、支援砲撃が
さらにはルチアが立つ市街地区の城門を、反対側の城門地区から攻撃していた部隊にも伝わったらしく、壁の向こうの発砲音も
ルチアと数人のホルン兵が開けた門を最初に通過した上等兵は、ルチアに銃剣を向けながら
彼が驚くのも無理はない。こんな最前線の真っ
そのうえ、周囲にはルチアが【フルート】の演奏によって気絶させた王国軍の
上等兵に続いて門から入って来た帝国陸軍
ルチアも反射的に敬礼で応じる。
この士官はルチアより階級が上なので、こちらに対して自分から敬礼する必要はない。
しかし、彼は評価されない功績を成し
それでも名を残さず、国の捨て石になることが諜報員の基本理念であるから、これを
それを承知の上で、士官の男は人として特別な態度をとったのだろう。
「長きにわたるお務め、ご苦労様でした」
「ルチアーナ特務少尉です。
「お待たせして申し訳ありません」
もちろん初めて会う男なのだが、ルチアは
「教会には攻撃しないよう、くれぐれも兵に厳命を願います」
「承知──ですが、この地区の教会は、すでに……」
その言葉にルチアは駈け出した。
近くの家の屋根に飛び乗ってエーカが収容されている教会へ目を向ける。
収容塔を含む、いくつかの建物から煙が上がっていた。
「エーカ……ッ!!」
教会に戻ると、民間人が収容された部屋は音弾に引っ
だがエーカは無事だった。
彼女が倒れている血溜まりは、すべて彼女の母親から流れ出たものだ。母親の遺体は首から下は綺麗で、まるで娘に
ただ、首から上は無かった。
エーカの両手には、自分で
半狂乱になって散った母親を集めているうちに、幸運にも気絶できたのだろう。
ルチアの様子を見に来たホルン奏兵は、その光景を見るや泣きながら謝った。
国際法を破ろうとしたのではなく、
これは、自分の罪だ。
味方にも敵にも罪はない。
どちらも必死に住民だけは守ろうとした。守れなかったのは、自分だ。
だから恨むなら私を恨めと、ルチアは思った。
そして、その代わり。
「エーカ、あんたは生きなさい」
*
その後。ルチアを含め、カマールに潜伏していた諜報員たちの協力で、速やかに要塞は攻略された。
《国王の27挺のヴァイオリン》──
だが、一部の高級将校の
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