転生者殺し

@tadashiikoto

第1話

朝日が眩しい、あたりは静かだった。シャドーハートは、鍬を持って畑に出る。小さい畑には、多種多様の

野菜が植えある。盛土に肥料をかけるために鍬を振るう。野菜の周りには、虫などは寄り付かない。

薬草を調合した自家製の害虫ポーションを降ってあるので害虫への耐性を野菜は、持っていた。

「今日は、これかな」朝どれ野菜を取り。家に持って帰る。家は、お世辞にも多きものではなく、

さらに新品のものでもない中古の家だった。そして、なにより家が立つここは、非常に標高が高く

土地としても非常に不便な場所だった。

「ありがとう……そうだね。これはスライムスープにもにでも入れようかな」笑顔でパートナーが、

迎える。やすい布でエプロンを着た美少女のモルガナは、台所で朝食の準備をしていた。

「いただきます」古びた木製のテーブルには、質素な朝食が並ぶ。全て自給自足で生活をしていた

ため野菜は畑のもの、肉は近所の森にいる魔物のジビエを捌いたものだった。ジビエの魔物は、

シャドーハートが、森に罠をかけ、その罠にかかった魔物をシャドーハートが捌いていた。

毎週火曜日は、街の市場で、魔物のジビエや野菜を販売するために山を降りていく。

「じゃあいってくるよ」

「いってらっしゃい」街までかなり距離の高低差があるので街で物を販売するときは、シャドーハートが

荷物を持って1人で出ていくことが多かった。


「これは、また珍しいねミストガーリーックじゃないか」

「うちは、標高が高いんでミストガーリックが取れるんですよ」



シャドーハートは、路面店を開いていた。毎週火曜日は、街に多くの商人や農家の人々が集まって

市場が開かれる。シャドーハートの並べる商品は、僻地でしかとれないような特別なものが多かった。

高山野菜や、高山でしかとれないジビエの魔物を並べていた。街は、活気に溢れていた。

「帰ったよ」

「おかえり」街には、活気があり野菜もジビエもしっかり売れた。しかし、手に入ったお金は、

わずかな額だった。この国自体が非常激しい経済的に格差がありその格差の影響でお金を稼げない

貧乏な男性スライム男子と呼ばれる男性たちで溢れていた。シャドーハートもそのうちの1人だった。

そして彼女もいない結婚する金もないましてや子育てなんて決してできないお金がないからだ。

そのためシャドーハートは、街から離れ山で自給自足で暮らしていた。そこに偶然冒険者として

クエストで山奥まで来ていたモルガナと出会うこととなる。


「ねえ、神社にいかない」

「ああ」山の頂上付近に街を一望できる古びた神社があった。

「すまないな。お金もなんもなくてこんなところに連れてくることしかできなくて」

「いいのよ。もう冒険者として激しい競争の日々にはうんざりしてたからここでゆっくり暮らしていくは」

結婚もしていなければ、結婚式をあげる金銭的余裕もなかった。


翌日いつものように、罠の様子を見に行っていた。罠は、雷の魔法を施してあり罠に魔物がかかると

雷の力により魔物が捉えるといった仕組みになっていた。

「お! いるぞ!」罠には、大物グランドがかかっていた。自分たちが食べるにも売るにも申し分ない

大物だった。シャドーハートは、その場で大物を血抜きし捌く。


「ただいまー」小さい家にシャドーハートの声が響く。普段あるはずの返事が帰ってこなかった。

シャドーハートは、狭い家を歩き回り探すが誰もいない。

捨てられたか……おかしな話ではなかった。結婚も、子どもも育てる財力もない。いつ捨てられても文句が

言えなかった。はぁ……。正直頭によぎらないことでなかった。全身が脱力する。その日は、

グランドの肉片を焼き塩をぶしてかじり眠りにつく。翌日待てども待てども全くモルガナは、帰ってこなかった。

戻ってきてほしいという気持ちがないわけでもなかったが、このまま畑を耕しながらスライム男子らしく

山奥の自給自足生活をするのも悪くないと思うシャドーハートだった。またいつもの日々に逆戻りか……。


お金を稼ぐために街に下りる。もちろん育てた野菜やジビエを売るためだ。市場の路面にシートを引き

商品を並べる。

「今日も、頑張ってるね」

「どうも」いつも買い物に来てくれる老人に声をかけてくれる。

「一番高い商品はどれだい」

「え? 一番高い商品? そうですね……穫れたばかりのグランドのサローインなんかどうでしょう」

「ああ、いいねそれにしよう」

「ありがとうございます」希少性の高い肉だが高すぎてあまり売れる肉ではなかったので驚く。

「今日は、祝い事かなんかですか?」もともと有名ギルドの顧問を勤めていた老人なのでお金は、そこそこ持って

いることは知ってはいたがしかし、それにても高い肉。なにかあったのだろうか。

「大変だったね……」

「え?」

「モルガナちゃんがあんなことになって……」


ふざけるな……。一目散にシャドーハートは、走り出す。老人から聞いた情報がまりにもひどいものだった。

シャドーハートは、奴隷市場のBブロックに到達する。もともとこの世界には、奴隷制度は、存在しなかった。

しかし、転生者たちがやってきてから奴隷制度が突然でき次々に女性が誘拐され奴隷にされる事件が起きていた。

「おや、お兄さん。お探しの商品でもあるのかい?」あるお店の前で、シャドーハートは、立ち止まる。

「この女性は……」

「ああ、最近入ったばかりの商品でね。おすすめだよ」モルガナだった。しかし、金額が高すぎて

全く手がでない。

「シャドーハート!」

「返してもらうぞ!」

「ん? 何を言ってるんだい?」

「返してもらうと言ってるんだ」

「どちらさんかな」

「レオ様……」奴隷商店がやとっている騎士が現れる。人相は、非常に悪い。奴隷ビジネスは、騎士たちの

重要な収入源だった。騎士たちは、他にも高い関税や強盗などで生計を立てるものも多く。

人々は、敬意を込めて強盗騎士と読んでいた。非常に凶悪で危険だった。

「俺のパートナー返してもらうぞ」

「金は」

「ない」

「じゃあ死んでもらう!」騎士は、治安を乱すと判断したものを斬る権利が与えられていた。俺は、

武器を取り出す。普段ジビエの魔物を捌いているナタだった。奴隷商人の護衛をしている騎士よりも

腕には自信があった。こっちは、普段から自分よりも遥かに大きな魔物を相手にしているんだ。

シャドーハートは、ナタを構える。離れた距離で騎士が剣を振るう。剣筋も非常に悪く。構えも弱々しい

ものだった。いかにも初心者と呼べるようなものだった。しかし。

あたり一体に何本もの黒い線が入る。縦横上下四方八方に黒い線が入る。そしてその線がシャドーハートの

体を切り刻む。

「シャドーハート!」戦いを見ていた。モルガナが目を見開き絶叫する。血しぶきと肉片が散らばる。

誰がどう見て非道な戦いだった。しかし、野次馬の中に騎士を咎めるものなどいない。咎めれば

次は、自分の番であることをみなわかっていた。

「さすがでございます」消えゆく意識の中奴隷商人と騎士の会話が耳に入ってくる。

「やっぱり、現地民は弱いなぁこれじゃ勝負にならないよ」

「さすが、転生者様でございます。これからもよしなに」奴隷商人は、金貨を騎士に渡す。

「なんで、こんなに強いか知りたいか?」

「いえ、いえ、そんな恐れおおおい、私みたいな下々のものお話されずとも……」

「俺はな、1万年剣術の特訓をしたんだよ」

「?」あまりにも意味不明の発言に一瞬さすがの奴隷商人も素に戻る。

「俺がいた世界で近所のお寺でお賽銭を投げたら、仏様の声がして特別なスキルを付与されたんだよ。

そのスキルは、1万年の剣術修行を体感時間1秒で終わらせるスキルだ。どうだ、お前にもそのお寺

教えてやろうかこんなところでこんな臭い商売せずに世界一の冒険者になれるぞ」

「いえ、恐れ多い。私なぞ、一介の奴隷商にすぎまんせゆえ」


「ふ、ふざけるな転生者……こままで死ねるか……必ず貴様を殺してやる!」バラバラの肉片に怨念が

集積し始める。そして……。

「こ、これは……」薄れていた意識が急に元に戻る。しかし、動くのは千切れた右手だけ。

「ゆ、指は動く」拳を握りしめる。ステータス画面を見る。

「ロー、アンデット……」人間では、なくロー、アンデットというカテゴリのモンスターとして

復活すること成功していた。しかし、本体はわずか右腕だけ。それも手のひらと指だけで腕は存在しなかった。

「こ……こうか……」指を順番に動かしながら、ゆっくりと移動を試みる。

「い、行ける……」大声で自慢を続ける転生騎士とそれを全力でおだてる奴隷商人が建物の中に入った

瞬間、指を足代わりにしてその場から立ち去る。

「モルガナ……いつか必ず迎えに来る。それまで待っていてくれ……」今のシャドーハートでは、到底

チートスキル持ちの転生者などに決して勝つことはできなかった。



正直ロー、アンデットのことも良くわかってなかった。色々やってみる中でいくつかのことがわかってきた。

まず、食事と水分補給を基本的にいらないということ、まぁ口がないので当たり前といえばあたりまえだが、

そして栄養補給は、空気中にただよっている微弱な魔力で可能だということ。そしてこれもあたりまえだが

レベルアップしなければ、ずっと手のままだということ。まずは、せめて人になりたい。そのためには、

クエストをこなさなければならなかった。しかし、手だけの自分だけではあまりにも効率が悪かった。

仲間が必要だった。とりあえず、クエスト紹介所に向かう。

「い、いらしゃいませ……」紹介所の受付嬢も一瞬固まる。無理はなかった。手がやってきたのだから。

もちろん、初めてではなかった。この世にロー、アンデットはいくらでもいたからだ。

「あのギルドを作ろうと思っていまして。誰か、メンバーになってくれる人はいないでしょうか?」

「そうですね……正直ロー、アンデットの方だと非常に……その難しいですね……」

「なんでもいいです。なんとかならないでしょうか?」



「あの……なんとかならないでしょうか……」隣でも同じように所属パーティーを探している冒険者がいた。

しかし……。が、眼球が浮いてる……。

「……」

「……」隣ということもあり目があってしまう。といっても今の俺は、手だけで目など存在しない。そのため

気配があったといえるのかもしれない。

「どうも……」

「もし、お二人がよろしければ……」

「はい」二人は、ハモる。


「よろしくお願いします」

「こちらこそ」さっそく二人の顔合わせになる。彼女? の名前はセルフィナ自分と同じくローアンデット

だった。パティーを組もうにも相手が見つからず右往左往していたところ。シャドーハートが偶然

見つかった。


しかし、問題があった。そもそも

攻撃力が弱すぎた。ローアンデットが好まれない最大の理由は、なんといってもとにもかくにも攻撃力が弱い。

しかし、それと引き換えに不死身という特徴がある。あらゆる種族に利点と弱点があるようにローアンデットにも

弱点があった。しかし、その弱さは折り紙付きでスライムすら倒すことができなかった。そこで最初に二人で

やったことは、魔力の強い場所を探し出しひたすら魔力を吸収することだった。来る日も来る日もひたすら

魔力を吸収し続けた。ただ、森で魔力を吸収するのも一苦労だった。スライムにすら瞬殺されてしまうので、

草葉の陰に隠れながら移動しなければならなかった。まともな戦闘が行えないのでひたすら隠れながらの

移動となった。スライムから全力で逃げることも多々あった。


「シャドーハート君!」

「ついに来たか……」そんな低レベルな命がけのレベル上げによりワンランク上の存在に進化することができた。

とりあえず、体が手にはいった。しかし、宙に浮いてた。ローアンデットからゴーストへと種族が変化した。

攻撃力は、やや上昇しやっとスライムぐらいは倒せるようになった。

「どうしたのです……」

「あ、いや……」俺の目の前に今まで眼球だけだった。生き物が、真っ白な髪に美しい青い目の美少女として

姿を変え現れたのだから。幽霊なのだがいい香りもする 気 がする。心臓の鼓動が激しくなり緊張する。

「よ、よろしくお願いします」緊張してもりながら白銀の姫のごとく美少女に再度挨拶する。

「何……はじめましてみたいに水臭い!」


「何あの2人」

「奴隷じゃない」

「ああどうりで美人なわけだ」高い武器を身につけてないシャドーハートに対する世間の目は非常に

冷ややかだった。その目は、隣に美少女がいるせいでさらにひどくなっていた。


しかし、まだ、クエストをするには弱すぎたしかし、強力すればスライムぐらいは倒せるようになった。

その後は、ひたすら雑魚モンスター相手に戦い続けた。

そして……。

「やっと、肉体が……!」二人とも肉体を手にすることに成功する。




セルフィナは、美少女として幽霊の時代の美しさそのままに実体化。シャドーハートもほぼほぼ昔の姿を

取り戻すことに成功した。


人の姿を取り戻しまずは、ときにもかくにもスキル診断をすることにした。

「いらっしゃい」巨大な宗教施設を尋ねる。ここでは神託全般をやっておりスキル鑑定も基本的に聖職者

たちの独占業務になっていた。ただ、スキル鑑定をする個別スキル自体は、比較的簡単に手に入ったが

教団のお墨付きがなければクエスト紹介所や商会、ギルドなどでは全く役にた立たなかった。

そのため、クエスト紹介所でクエストを受託するには基本的に教団のスキル鑑定が必要だった。

「では、お願いします」信者からの寄付によって贅の限りを尽くした広間に通される。

「ご寄付は……」今まで、スキル鑑定にはお金がかからなかったが転生者が現実世界から来て以来

異世界に資本主義制度が導入されスキル鑑定でもお金が非常に重要な意味を持つようになった。

スキルガチャなどとも言われ、寄付金でスキルの能力が左右されるようになっていた。

「いえ……お金が……」

「え……あの二人寄付金なしで、スキル鑑定を受けるのですって……」

「まぁなんて破廉恥な……」

「不敬な……」

「まさか無課金!」

「きっと罰があたりますは」周りでその様子を見ていた他のしずくめの教団信者が陰口を叩く。

「ごめんな……俺が稼げないばかりに……」

「いいよ! 目玉のときから私を選んでくれたのはあなただけなんだから! ほ〜ら元気だして!

良いスキルが手に入るかもしれないよ!」セフィーナが励ましてくれる。

「チッ」仮面中から舌打ちが聞こえる。

「わかりました」全身白ずくめに仮面姿の教団の聖職者がスキル鑑定を始める。

「まずシャドーハートさん……スキルは、ありません……」

「は?」

「ありません」

「そんなことあるんですか?」

「はい」

「セルフィナさん……スキルは……無効化です」

「無効化?」

「戦闘時にスキルを無効化することができます」


「おお! 良いスキルじゃん」

「そうかな?」パット聞き悪そうなスキルでなかった。


スキル鑑定が終了したので

さっそくクエストをこなすためにクエスト紹介所を訪れる。

「こんにちは、ご要件は?」受付嬢が愛想よく出迎えてくれる。

「ギルドメンバーを増やしたいと思っています」

「では、こちらの部屋にどうぞ」通された部屋には、自分たち以外にもギルドのメンバーを探している冒険者

たちがいた。

「こんにちは、ギルドのメンバーを探してますか?」メンバーを増やそうとしていた他のギルドから

声をかけられる。

「はじめまして」

「はじめまして」

「実は、今新しいメンバーを探してましてまして。もし良かったらどうですか?」

「ほんとですか? 私たちまだレベルが……」

「大丈夫私達のギルドは、伸びしろがあればしっかりと評価するギルドですので」

「ひょっとして……星詠旅団?」服の肩に付いてるワッペンから推測する。

「よくご存知ですね」星詠旅団街でも有名な巨大ギルドだった。

「ぜひ、仲間に入れてほしいです」

「じゃあ今から簡単な試験を行いたいんですがよろしいですか?」

「ええ」断る理由がなかった。

「では、お願いします」近くの試験場を利用する。ここは、戦闘のお試しなどに使用できる場所だった。

点線だけが入った無機質な空間に人事担当の星詠旅団の魔術師が立つ。ブラッドフォーンが召喚される。

「さあ、試験内容はお二人のスキルや戦闘能力みさせてもらいます。今から自由にブラッドフォーンを

倒してください!」狼のモンスターが立ちはだかる。スキルが発動し身動きが穫れない。ブラッドフォーンの

スキル威嚇が発動したためだった。

「セルフィナ俺はスキルが……だから……」

「うん任せて! スキル発動! コードキャンセル!」その場のスキルが打ち消される。人事部の魔術師が

険しい表情でその様子を腕組みして見守る。

「ありがと! 行くよ!」シャドーハートが拳一つでブラッドフォーンに突っ込む。ブラッドフォーンは、

激しく動揺する。普段スキルで釘付けになる冒険者ばかりなのに全くそれが効いていなかったからだ。

セルフィナのスキルがブラッドフォーンのスキル完全に打ち消していた。それに加え人事の魔術師が

普段行っている強化魔法も全て打ち消されていたため、シャドーハートの攻撃が鬼のように入った。

あたりに打撃音が響き渡る。シャドーハートのワンサイドゲームとなる。

「はい、終了!」やれることは、全てやった。手応えはあった。しかし、人事部の表情は非常に険しかった。

「どうでしょう……」

「申し訳ありません。今回の話はなかったことに……」

「え!? でも、あれだけ攻撃が入ったのに……」

「残念ですが、セルフィナさんのスキルですが、かなり問題がると言わざる終えないですね……。

彼女のスキルのことよくわかっていですよね」

「え?」スキルを無効化にする超強力スキルとしか思っていなかった。

「この無効化は、自分たちのパーティーにまで影響を及ぼしています」つまりこういうことだった。

もし星詠旅団に入ることができたとしても戦闘の際他の星詠旅団のメンバーのスキルが打ち消されて

しまうということだ。

「そんな……」もともと、スキルのないシャドーハートとの相性はいいが他のメンバーを受け入れるとなる

最悪のスキルということになる。その後もさまざななギルドをあたったが全てスキルが原因でどこも

受け入れてもらえなかった。

「私と離れる?」

「そんなわけ無いだろ! 一番最初に俺を得られてくれたゆいつの人間を見捨てるかよ!」

「ありがと……でも、どうするの……」

「2人でクエストにい挑もう」


「クエストに挑戦したいです」クエスト紹介所の受付でクエストの紹介をしてもらう。

「わかりましたクエストに挑戦ですね。こちらにスキル、レベル、身分、レベル、所持金をお書きください」

「はい、これで」

「では、どのクエストに挑戦したいですか? ストリー、イベント、サブクエスト」

「あのストーリーに挑戦したいです」

「ストーリーですねでは、お金の支払いをお願いします」ステータス画面に入金金額が表示される。

「10万jpy!」ここにも資本主義が陰を落としていた。もともとこのようなことはなかった。

資本主義が、導入されてからクエストに挑戦するのにもお金がかかるようになっていた。

「た、高いね……」受付嬢は、終始笑顔だった。というか、現実世界の女性とは違うのでこの世界の受付嬢は

常時笑顔だ。姿勢も全く変わらない。というか微動だにしない。今の自分たちは、生活するのに精一杯で

とてもじゃないけどクエストにお金は払えなかった。

「無課金だと……」

「そうですね……このサブクエストなんかどうでしょう」進められたのは、ランク外の簡単サブクエストだった。

「このサブクエストなら無課金でもできますね」報酬が良さそうなサブクエストにシャドーハートは、

食い下がる。

「申し訳ありませんが、お二人のスキルではこのサブクエストは、攻略困難なためそのクエストは、紹介

できません」

「他に方法は」

「他には、メンバーを増やしてクエストに参加するという方法があります」

「実は、どこのギルドからも断られて……」

「なら、メンバー派遣制度はどうでしょう」

「それは、どうやってつかえるのでしょうか……」

「はい、3万jpyを支払ってメンバーを一時的に派遣してもらう制度です」何もかもお金がかかる。

諦めるしか他なかった。


最初のクエスト選り好みはできなかった。

与えられたクエストは、なんでもやるつもりだった。しかし、二人の低いレベル、無課金だと

やれるクエストには限りがあった。その中でも数少ない無条件のクエストにたどり着く。

輸送のクエストだった。

「やったね」

「ああ」


街なかで、どこにでもいる町人に話しかける。

「平和の小麦粉をくれ」平和の小麦粉は、現実世界にある会社で大手製粉メーカーだった。異世界では、

現実世界のものが破格の価格で取引されており。この平和製の小麦粉を運ぶの今回の任務だった。

「……」無言で平和の小麦粉を渡される。

「どこに運んでいけばいい」

「グランハルトのルグナの館」

「分かった」

「小麦粉を運んでいくだけなら簡単だね」




ルーンの街道を歩いている最中だった。

「おい! 物をこっちに渡してもらう!」どこにでもいそうな強盗騎士に行く手を阻まれる。

「金か……まいったな……金ならないぞ!」

「違う! お前がもっといいものを持ってるだろ!」そばのブラッドフォーンが唸っている。

どうやらこの小麦粉にその優れた嗅覚が反応しているらしい。

「とぼけるな! 早くその粉をよこせ!」異世界では、ただの小麦粉が非常に高価に取引されていた。

味が非常によく人気があった。

「悪いがクエスト中なんで渡すことはできない」

「なら! 無理やり奪うまで! いけ! ブラッドフォン!」セルフィナのスキルが発動する。

ブラッドフォンのスキルを抑え込みシャドーハートが、ブラッドフォンを暴力で圧倒する。

「馬鹿な……ブラッドフォンが……」ブラッドフォンのスキルが全く通用しないことに騎士たちが

困惑する。強盗騎士がスキル完全強盗を発動する。このスキルは、相手の能力のいかんにかかわらず

相手のアイテムを盗むというものだ。

「なぜだ……」もちろんスキルは、打ち消される。

「何をしてるんだ?」正規の騎士が通りかかる。

「やべ、逃げるぞ!」スキル絶対逃走は発動して、強盗騎士たちは逃げようとする。しかし、

スキルは完全に打ち消さえれているのですぐに、警察犬の代わりをしているブラッドフォンがすぐに

強盗騎士たちに追いつく。


その後も時折強盗騎士に襲われながらもなんとか目的の街リューセリアにたどり着く。

「なんだこの街……」そこら中ゾンビだらけだった。現実世界であれば衝撃的光景だが、異世界では

ゾンビ自体はそこまで珍しくなかった。しかし、この街はゾンビが多すぎてもはやソンビに占拠されている

様相を呈していた。

「なんか、怖いね……」

「そうだね……」ゾンビを刺激しないようにしながら目的地のルグナの館に到着する。ルグナの館に

到着するとローブを着た魔術師から話しかけられる。

「平和の小麦粉を持っていませんか?」

「持ってます」

「交換してもらえませんか?」

「ええ」途中強盗騎士に追われたものの何とかクエストをクリアすることに成功する。

「この街気味が悪いからすぐにでも出よう」

「そうだね」クエストを終えるとすぐに街から出ようとする。しかし、街でゾンビに話しけけれる。

「この街の人じゃないね」

「ええ」

「この街は、昔こんなんじゃなかった」

「え?」

「昔この街は、とても繁栄していたんじゃよでも、あの男がやってきてからすっかり変わってしまった」

「あの男」

「そう、Mr高橋。あの男が現れてから……」

「道を開けてくれないか?」シャドーハートがセルフィナに目配せをする。戦闘の合図だ。セルフィナが

迷わずスキルを発動する。あたりを歩くゾンビたちの目が怪しく光る。

「あの男が、薬物を広めてからこの世界はおかしくなった」

「薬物?」あたりを歩くゾンビたちがこっちを見つめ一瞬止まった気がしかたが、気のせいだった。

周りのソンビたちは、目的もなくただ歩いているだけだった。あたりの異様な空気に飲まれて被害妄想

囚われていただけだった。

「ソーマイグニス、この薬を飲むと何も考えなくていい天国にいるような気分を味わえる。

ああ、そうだ私は世界を救った勇者なんだよ。奴隷? ああ、私の嫁のことだないっぱいいて

忘れちゃったよ」時折薬物の副作用だろうか、妄想が入り交じる。ソーマイグニス、アメリカなどで

流行っている薬物でもちろん世界のどこでも違法のものだった。どうやら転生者がこの世界に持ち込んで

新しいビジネスにしているようだった。

「無駄だよ。ここにいる人はみな薬物で完全に壊れてしまってる」女性に話しかけられる。

「あなたは?」この街にはめずらしいシラフの人間だった。まだゾンビ化していなかった。

「私は、トワ、ジャーナリストよ」現実世界から異世界に違法薬物に関する取材をするために

日本から来たジャーナリストに話しかけられた。

「こんな物騒なところに良く来たね」

「そしらこそ、なんで? もしかしてあなたもソーマを吸いに?」

「いや、僕は薬物は……」

「クエストをやりに来たの」事情を話す。

「あ……あなたも……それ……多分、ソーマよ……」

「え?」

「やられたわね。運び屋をやらされてたの。途中強盗騎士に襲われなかった?」

「ああそいうえいえば……」

「あれ、ギャングよ」

「え?」どうやら、薬物を運ぶ闇バイトをやらされ途中で遭遇した強盗騎士は、薬物を目的を目的と

したギャングだった。

「実は、面白い情報があるんだけど」

「え?」

「実は、Mr高橋がプロポーズをするらしいと、そして私は取材を申し込まれたらOKされたの

もしよかったら一緒にこない」

「え? ほんとに?」

「でも、クエストでもないし……」セルフィナがやや消極的になる。

「報酬なら護衛費として私が出すは」トワが申し出る。

「ところで、Mr高橋ってどんな人物なんだ」

「Mr高橋は、転生者でこの街を支配するギャングよ。この街は治安が悪くどの騎士団も手をだそうとしないし

どの王国の支配も及ばなくなっている。そのためギャングの高橋がこの街を支配しているの」


「あれは……」プロポーズが行われる会場に向かう途中で、橋の周りに人が集まっていた。集まっている

人たちも皆目が虚ろだった。おそらく薬物の影響だろう。

「う……」セルフィナが顔をしかめる。全裸の女性の遺体がロープで吊るされていた。そこには、

裏切り者に鉄槌をと書かれていた。そしてNS13の文字がそこら中にかかれていた。

そして、路面には騎士の甲冑の頭が無造作に転んでいた。そのうちの一つの顔の甲冑が転がり

顔が見える。

「この顔……!」平和の小麦粉を運んでいる途中襲いかかってきた強盗騎士の男だった。

「ギャング同士の対立よ。ギャングの愛人がああやって殺され晒されるの」Mr高橋は、

こうやって恐怖でこの街を支配していた。


「超女神祭?」デカデカと看板が出ていた。

「そうねミスコンって分かる?」どうやらガチャを回して女性を出していき。もっとも美人の女性を

決めるコンテンストらしい。もともとガチャをまわすなんて概念は異世界には、存在しなかったが

転生者たちが勝手に導入しガチャをまわすことによって女性を呼び出すことができるようになっていた。

全身白ずくめの以前スキル鑑定の時にお世話になった教団の信者がガチャを回して次々に女性を

呼び出していく。その度に会場に集まった人々から声があがる。女性は、一言いって次々に

交代していく。そして最後に審査委員たちの投票になる。その結果、1人の女性が女神に選ばれる。

美人だ……。選ばれた女性は、女神ふさわしい女性だった。ちなみにガチャは300連回された。

すると1人の男性が勝手に壇上に上がってきた。

「おい! 全員退出しろ!」武器持った魔術師が大声で叫ぶ。それに呼応するように他の武装した

騎士たちも会場の人間を追い払い始める。誰も逆らわず会場を後にする。司会者すらも追い出される。

「おい! お前! とっととでろ!」魔法のステッキをこちらに向けられる。

「私、現実世界から取材にきたジャーナリストのトワです」トワは、携帯の画面を見せ招待状を

表示する。

「そうか」こちらの方に魔術師が視線を向ける。




「この2人は、私の護衛です」

「そうか……」若干納得が言っていないような雰囲気だったが、魔術師は黙認してくれた。

「結婚してください」Mr高橋は、突然女神祭で選ばれた女神に跪き結婚指輪を取り出す。会場には、

ギャラリーは残っていたが今までとは全く雰囲気が違った。皆凶悪な雰囲気を醸し出しており普通の

異世界の住人でないことは明白だった。会場は、NS13のメンバーに占拠されていた。もはや

女神に拒否権は存在しなかった。拒否すれば橋から吊るされるのは目に見えていた。女神に選ばれた女性は、

プロポーズを受け入れることにした。いや、せざる終えなかった。Mr高橋は、現実世界から輸入した

薬物で巨万の富を得てその富で街の支配者となっていた。そのため今回の結婚に文句を言うやつなど

1人もいると思わなかったのだが……。


クエスト紹介所に向かう。期待は、してなかった。

「今度は、しっかり選ばないとね……」

「ああ……」うっかり闇バイトに応募してしまった。しかし、条件を厳しく選り好みするとほぼ

クエストがなくなる。

「何かクエスト……」

「実は、オファーがあります」

「オファー?!」まともなクエストなどほぼ見つからないなかまさかのオファーだった。


「ってまたあなたですか」

「何よ。Fランクの冒険者にクエストを発注するお客様に向かってその態度はなに?」指定された場所に

向かうと待っていたのトワだった。

「ねえ。また薬物のクエスト……やめようよ……」リスクが非常に高かった。セルフィナは、難色を示す。

当然だった。しかし、俺は転生者に復讐しなければならなかった。

「すまない。俺をローアンデットまで叩き落としたのも転生者だったんだ。だから同じ転生者に

苦しめられている人たちを頬追っておけない。無理にとは言わない俺1人でもいく」

「シャドーハート君がそこまでいうなら……」

「で、依頼の内容は」目線をトワの横の女性に目を向ける。

「はじめして、アリアといいます。私の娘アリアナを取り戻してほしいのです」依頼者は、トワではなく

超女神祭のガチャで召喚された女神アリアナの母アリアからのものだった。娘をギャングのボスMr高橋

から取り返してほしいというものだった。ステータス画面に難易度と報酬が表示される。

「難易度Sで報酬が100jpy!! ちょっとこんなの馬鹿げてるよ……」難易度と報酬が釣り合って

いなかった。セルフィナの反応は最もだった。

「アリアナは貧民街の人間でこれ以上は出せないは」

「分かりました。引き受けましょう」結局シャドーハートの決意は揺るがなかった。

「なんで、こんなクエスト受けるのよ」

「転生者全員殺したいから」シャドーハートの恨みは本物だった。


「汝は、永遠の愛を誓いますか?」教団の白装束の男がウェディングドレス姿のアリアに尋ねる。

しかし、拒否は許されなかった。というかできるはずはなかった。なぜなら今この境界にいるのは

ギャングのメンバーで通常の結婚式のような親族や友人などというぬるい人間は誰一人として存在しなかった。

「はい……」アリアが涙を流す。

「汝は、病める時、貧しい時も、妻を養い、部下たちを養うことを誓いますか?」こんどは、Mr高橋に

尋ねる。

「はい」ここに新たな家族が生まれた。

「では、誓いのキスを……」アリアの顔にかかていた白いベールを白装束の教団スタッフが払いのける。

「……!」アリアは、目を見開き。固まる。眼の前の顔は、シャドーハートのものだった。

教団の白装束姿のシャドーハートは、仮面を投げ捨てる。

「ほう、結婚式の余興にして少し遅すぎるな……」結婚式をぶち壊しにされた。Mr高橋は不敵な笑みを

浮かべる。その顔には一切の焦りはなかった。街の全てを支配している男の余裕だった。

「貴様!」教団の戦闘員がすぐさまシャドーハートを殺そうとする。

「全員下がれ!」Mr高橋の怒号が響く。

「しかし!」高橋の手元の槍が口答えした教団のアサシンの体を真っ二つに切り裂く。アリアは、その場に

崩れ落ちる。

「いいか、下がれ」教団関係者だけでなく、ギャングたちも下がっていく。


「NPC風情がおもしろい余興をしてくれるじゃないか。当然たのしませてくれるんだろうな」高橋は、

騎士の甲冑を装備する。

「実は、お金に困ってまして……」

「そうか……じゃあおもしろい余興の後に報酬をやろう。まあもっともその金貨を手に入れる前にお前は

死ぬことになるがな」眼の前に金貨をばらまく。

「それに転生者たちが死ぬほど嫌いでして……」

「ハハハ! ちょうどいい。じゃあ転生者を殺したら報酬を貰えるクエストがあるとしたら」

「それは、大変面白うございます」


「……!」突然槍が切りかかってきた。全く想定していなかった。攻撃にシャドーハートは、焦る。

「ハハハ! そんなに驚かなくてもいいだろ」そう槍が甲冑武士を槍のように振りかざしてきたのだ。

「本体は、槍」

「御名答私は、槍に転生した。この甲冑騎士は、武器で本体は槍なんだよ」甲冑騎士がシャドーハートの

頭上に振り下ろされる。



シャドーハートは、とっさにかわす。床に甲冑騎士が叩きつけられる。

「逃げているばかりだと俺には勝てないぞ!」シャドーハートは、防戦一方になっていた。

床は粉々に砕け散っていた。凄まじい破壊力だった。

「面白い戦い方をするな」

「そうだろ。俺のスキルはな教団に金を払って手に入れたものだなんだよ。お前のさ

スキルも見せてみろよ俺が相手してやるよ」

「すまない俺は、あいにく課金、無神論なんでね。スキルはない」

「それじゃあこの世界では通用しないな。俺には守らないといけない家族がある。部下もある

なんにも背負わない人間などに俺は決して負けることはない!」

「家族? どこにそんなのいるんだよ。家族と思っているのはあそこの人間オナホのことか?」

「お前、もうもう一回言ってみろよ」

「何度でもいったやるよオナホってな」

「雑魚が!」シャドーハートに死の文字が浮かび上がる。この一撃が最後の一撃になるサインだ。

突然、騎士がその場に崩れ落ち、全身から血が吹き出す。

「馬鹿な!」

「相方のスキルだよ」セルフィナのスキルが発動して高橋のコントロールスキルが打ち消される。

宙に浮いた無防備な槍から声がする。

シャドーハートが、宙に浮いた槍を手に取る。

「や、やめろどうするつもりだ!」

「現実世界に帰れ」

「え?」

「聞こえなかったのか現実世界に帰れ」

「わ、分かった」スキルを失った槍はただの槍だった。

「そして、伝えておけ二度と異世界に転生するなと」槍は、ただの槍となり床に落ち。カランと教会に

槍が落ちる音が聞こえる。


その後、高橋を失ったNS13は、解散すると思われたが、仲間割れをしながら今も組織は存在している。

今、組織を存続させているのは、転生者ではなく現地人との噂だった。高橋の持ち込んだ薬物の影響力は

凄まじく。今現在も現地人の売人を中心に取引が行われている。


「何かクエストはありませんか」クエスト紹介所に訪れる。受付嬢から提示されるはいつ通りひどい内容の

ものばかりだった。どれも闇バイトまがいのものばかりだった。

「こちらんてどうでしょう。即日報酬受け渡し、無条件誰も簡単、持ち物なし」

「依頼主の情報は」

「ありせん、匿名での希望になります」

「やります!」

「?!」隣から声がする。隣には声の主のエルフがいた。えらい美人だった。

「危ないですよ」過去に闇バイトを経験したばりのセルフィナは心配して忠告する。

「どうしてもお金が必要なんです!」

「あ」

「あ」そばにたトワと目が合う。





「で、なんでまたあなたがここに」

「もちろん取材よ。私は、転生者の不正や転生者が異世界にもたらす悪影響について取材を続けているの」

「何?! ということは、今回も」シャドーハートは、転生者という言葉にひかれてすぐに反応する。

またもや取材に同行することになる。セルフィナも渋々ついていくこととなる。

エルフの名前は、モルガナ彼女の話によると膨大な魔力と引き換えに巨大な借金を背負わされ

その返済に今現在苦しんでいるとのことだった。資本主義が導入された異世界では、魔力も投機の対象と

なっていた。近年莫大な借金と引き換えに巨大な魔力を手入れようとする事例が多く報告されていた。


「ここですか……」

「ほんとに?」モルガナについていくとそこには、小さな鍛冶屋があった。とても魔力の売買など

しているようには見えなかった。

「なんだい」中にはいるとガタイのいいおっちゃんが姿を表す。しかし、部屋の中にはほとんど武器らしい

武器は存在しなかった。

「あの取材をさせてほしいのですが……」

「取材?! とっと帰りな! お断りだよ!」

「強力な魔力と引き換えに法外な借金を背負わせていると聞いてるんですが」

「帰りな!」そばにあった古びた斧を取り出し威嚇してくる。しぶしぶその場は立ち去る。

「あんたも魔力を買ったのかい」鍛冶屋のそばで佇んでいた村人Aに話しかけられる。転生者が異世界に

やってきてからは、ステータス画面から名前が消えた。モブの村人に転生して無双するのが流行ったため

よりモブに徹することを村人や町人たちに求められて名前をステータス画面から消されてしまった。

「はい……」モルガナが悲痛な面持ちで答える。

「そうかい……昔は、あんな商売なんかしていなかったのにな……」

「そうなんですか」

「そうだよ。大金持ちということは、なかったけど評判のいい鍛冶屋でよく通な冒険者御用達の武器屋だった

でも、転生者たちが鍛冶屋として活躍する中でどんどん仕事がなくなっていっちゃってね……それで

最近は、めっきんりお客さんを見なくなったとおもっていたんだけどね……」転生者たちの作る武器は、

今までの常識では考えられないようチート級の武器ばかりなので現地の鍛冶屋たちは次々と廃業していた。

確かに廃業した鍛冶屋がちらほらあった。

「廃業した人たちは……」

「見に行く?」


森の中に巨大な鍛冶屋が現れたというより工場といったほうがいいかもしれない。

「この工場で作られた武器が人気でね。もう田舎の小さな鍛冶屋なんか通用しなくなっているの」

トワに連れらてきたのは、巨大な鍛冶屋だった。

「この工場では、どのような人がはたらいでいるのですか」セルフィナが尋ねる。

「この工場では、さっきの村の人たちが働いているは」異世界では、転生者たちによる

現地人に対する搾取が問題になっていた。転生者の圧倒的能力により現地の人々は従うしかなく

異世界の富の90%は、異世界に1%しかいない転生者に独占されるような事態になっていた。

この問題を解決できたら報酬を出すわ」



もう一度村の鍛冶屋の元に戻る。

「また、お前らか冷やかしならかえんな! こっちは真剣にビジネスしてるんだよ!」相変わらず

武器を携え殺しかねないような勢いで毒づいてきた。

「借金をチャラにする方法を教えてくれないでしょうか」

「あるわけなだろ! とっとと体でもうって払いな!」

「近所の工場に仕事を取られたそうですね」

「あ?!」急に鍛冶屋の親父の表情に変化が起きる。

「もし、工場が消えたらどうでしょう」

「ふざけてるのか? 面白いこと言うな。分かったもし本当にできるならチャラにしてやろうだが、

失敗したらお前にも俺の商品を買ってもらういいな」

「いいでしょう」


トワの案内で試験場まで来る。ここでは、工場で転生者の作った武器をお試しすることができた。

「本日は、ようこそ私がオーナーの平井です」転生鍛冶屋の女主人平井が姿を表す。

「ありがとうございます。実は、こちらの商品に興味がありして」

「では、どのような商品にいたしましょう」

「クリスタリオンなんかあるでしょうか」村の鍛冶屋で人気だった商品の名前をわざと出した。

「ハハハまたまた、御冗談をあんな貧弱な商品を今どき購入される方などいませんよ。

それよりこちの商品などうでしょう冥界のリングなど」

「それは、どのような効力があるのですか」

「これは、装備した冒険者の力を最大限引き出すことができます」俯いた女主人平井が目を光らせる。

「いくらですか」

「10万jpyになります」

「10万jpy!!」セルフィナが声を上げる。到底出せる金額でなかった。シャドーハートたち、

低ランク冒険者には非常に重い税金がかけられており。クエストで手にした報酬も重税により

吸い上げられていた。





「別にあなたに恨みはないですが、廃業してもらえませんかね」

「は?」

「あなたたち転生者のチート武器によって現地の鍛冶屋が仕事を失ってしまってるんですよ」

「ハハハ、競争社会で能力のないものが淘汰されいくの自然の摂理。なら、私を倒してみないさい

それができれば私は、廃業してあげましょう。もっとも私自身は戦わないけどね。良い機会だから冥界の

リングの実演販売をしてあげるはなぜこの商品がこの世界でベストセラーになっているのかすぐに分かるは」

平井は、おもむろに森の中にいるリトルケルベロスの首にかける。リトルケルベロスは、狼のような姿を

したモンスターでわりとどこにでも生息していた。しかし、首に冥界のリングをかけられたリトルケルベロス

は、覚醒し巨大化してリングも巨大化した。

「さあ、本日紹介させていただくのは、冥界のリングになります。このリングなにがいいってどんなモンスター

にも使えるんですね」

「あら便利」セルフィナが相槌を打つ。

「……」

「いや、つい……」

「そしてなんといってもこの攻撃力」ケルベロスが地面を踏み鳴らすと地面がめくれ上がりダメージが

シャドーハートにはいる。

「いかかですか、今なら特別価格10万jpyでご提供させていただきます」

「クッソ……」シャドーハートは、起き上がる。

「おおおお!」狂ったようにケルベロスは絶叫する。巨大な岩を持ち上げ放り投げてくる。

「ドーン!」巨大なケルベロスの腕が振り下ろされる。シャドーハートの力では到底太刀打ちできなかった。

力任せの攻撃が、シャドーハートに襲いかかる。さらに、巨体にもかかわらず軽々と飛び上がる。

「どうですか。気に入ってくれましたか?」

「ああ、最高だね。ただあいにく金がないもんでね」

「それでは困りますね……」そばにいた、スライム、月光蝶にもとりつけいずれも巨大化する。

セルフィナが、スキルを発動する。

「これは……」

「すまないね」すべてのモンスターが元の大きさになる。

「どうするまだ続けるか?」シャドーハートが拳を握りしめる。

「おっと、逃げる前に、お前のステータス画面の職業からきっちり鍛冶屋を消しな!」

「クソが!」平井を失った武器工場は、すぐに閉鎖された。作られた武器はいずれも平井のチートスキルによって

製造されたものだったので、平井を失えば閉鎖以外の選択肢はなかった。工場のそばには、豪邸があり

そこで平井は普段生活をしていた。金目のもは工場従業員に略奪され荒れ果ててしまった。


「約束は、守ってもらうぞ」

「ああ」村の鍛冶屋に行きモルガナの借金を帳消しにしてもらう。しかし、厳しいことに異世界全体で

出回っている改造武器市場をコントロールすることは到底できず、村の鍛冶屋は、今現在転生者の

作った改造武器の修理で生計を立てているという。


街なかにお触れが張り出されていた。定期的に禁止のスキルや召喚獣がきめられ。それらを使用することは、

できなくなった。

「嘘だろ……」シャドーハートとセルフィナは、リストの前で固まる。

「コードキャンセル」セルフィナのスキルが禁止されてしまった。

「よっしゃあああ!」

「ざまああ!!」リストの前に集まった人の中にはコードキャンセル禁止に喜びの声を上げるものもいた。

コードキャンセルは、無課金で簡単に手に入るスキルの割の強力なために課金プレイヤーのヘイトを

多く買っていたそのため喜ぶものも多かった。

「嘘だろ……」シャドーハートをさらに絶望さたは、法改正だった。

「スライムランク以下のものは恋愛を禁じる」シンプルだが強烈なものだった。このランクは、

冒険者につけられるもので、最高ランクがドラゴン、そして最低ランクがスライムシャドーハートは、

最低ランクのスライムだった。

「うわ、なにあの男まさか落ち込んでるの?」

「うあぁスライム男子が恋愛しようと思ってるのキッショ」転生者の女性が落ち込んでいるシャドーハートを

見てドン引きする。これらのリストは、円卓と言われるこの世界の支配する人物と教団によって決定される。

この円卓は、この世界で最強の12人によって構築されその12人全員が転生者だった。

「おのれ……転生者め……」そう呟くのはシャドーハートだけではなかった。異世界には、転生者ので

せいで仕事を失うもの、スライムランクまで落とされるの多くの現地人が被害を被っていた

しかし、転生者の圧倒的な力を前になすすべなく屈服していた。

「俺がこの世界を変えてやる……」


「次は、転生症候群のお話です」ニュース番組が始まる。

「石川さんは、転生症候群というのはご存知ですか?」

「はい、実は、以前私もこの症状を抱える家族に取材したことがあります」

「そうですか、今日の探求現代は、転生症候群スペシャルです。今社会で大きな問題を引き起こしている

転生症候群についてです」


「私たちは、息子が転生症候群で困っている仮名Aさんのご家庭を訪問しました」ナレーションがはいる。

母親が取材記者を家へ招きいれる。

「ここです……」二階の部屋に案内される。息子の仮名Bさん某社の有名ソーシャルゲームに去年から

ハマり異世界転生を繰り返すうち言動がおかしくなっていったといいます。

部屋から出てきた息子仮名Bさんにインタビューをする。

「普段は、どうされてすごしているんですか?」

「普段は、円卓の騎士としての業務を行っています。異世界の法律制定やバンリストの作成

その他各国の問題調整などを異世界の支配者として取り仕切っています」Bさんは、5年前の失業から

ずっとこの異世界ゲームにのめり込んでいる。部屋には、ハローワークの求人票が置かれている。

家族によると失業以来仕事はしていない。


クエスト紹介所を訪れる。ただ、今回の禁止リストの発表でただでさえ厳しいクエスト探しは、さらに厳しく

なるのが目にみえていた。

「お手紙が届いています」

「え?」手紙には、クエスト依頼が入っていていた。お手紙が届くのはじめてのことだった。

手紙には、クエストの依頼が入っていた。そして前金も。

「嘘でしょ」セルフィナが驚く。でも、一体誰が? 前金付きの闇バイトか?

そして今回に限ってトワがいなかった。

「俺は、やってみたい。セルフィナも来るか?」

「え……まあいっか……」セルフィナは、今回の禁止リストにスキルが入っていたため正真正銘スキルが

存在しなかった。そんな冒険者を他の冒険者が拾ってくれるはずもなく。一緒についてくしか選択肢はなかった。


クエスト名は、スライムの討伐だった。

「スライムの討伐? なんだか簡単そうだね」ここ最近かなりハードなクエストが続いていたので

久々に自分たちのランクに適したクエストだった。マップを見ながら近くの平原まで向かう。

本来ならこのあたりは、低レベルのモンスターたちがひしめきあっているエリアのはずだった。

しかし、あたりには人骨や騎士の装備や魔術師のマントや魔法のステッキが散乱している。さらには、

モンスターの骨も散乱していた。倒されてから時間が経っていないのだろうか? ワイバーンの死骸に

モンスターたちがたかりその死肉を貪っていた。あたりには、透明になってなお存在する

倒された魔術師やモンスターがローアンデットの姿になりあたりを彷徨っていた。雲一つない青空に

和やかなBGMが流れてきそうな平原は、地獄と化していた。

「これはいったい……」

「ここにくるんじゃないよ」透明になった魔術師から話しかけられる。

「何があったんですか?」

「この平原に最強のスライムが発生したんだよ。円卓にスライムが選ばれたせいで転生者たちが

相次いでスライムに転生してしまったせいで、スライムが強キャラになってしまって平原を訪れた冒険者

たちは、軒並みスライムにやらちゃったんだよ」クエストの内容は、ぬしと呼ばれるスライムを撃退

しなければならなかった。

「ぬしと呼ばれるスライムを知らないか?」

「ああ、知ってるよ。でもやめときな命がいくらあっても足らないよ。なんせ最強のスライムだからな」

「あなたもそのスライムにやれたの?」

「いや、そのへんのスライムにやられたよ。ボスまでたどりつかなかったよ」スライムのインフレが

起こっていた。透明になって彷徨っていた魔術師から教えられた場所めざしていあるいていると

当然スライムに遭遇する。スライムぐらいどこにでもいるわけだからおかしなことでないが、

今は、状況が全く違っていた。かわいいこのスライムが凶悪な転生者のチートで強化されていることを

考慮しておかないといけなかった。戦闘が始まるとスライムは、早々にドラゴンに姿を変える。

ドラゴンといっても恐竜のような鱗を持ったドラゴンだ。狩りをするゲームに出てきそうなドラゴンが

立ちふさがった。

「これってもうスライムじゃなくてただのドラゴンないか?」

「ドラゴンじゃないスライムだ!」どうみてもドラゴンの姿をしたスライムがイキる。

「まあどうでもいい、ぬしと呼ばれるスライムを探しているんだ。通してくれないか?」

「それならここを通らないといけないね」

「……」

「通してくれないわけだな」

「1万jpyで通してあげるよ」

「無理だな」ドラゴンは、口から雷撃を吐いてくる。シャドーハートは、攻撃をかわす。ドラゴンは、

巨体を宙に動かしながら。遠方から攻撃をしてくる。宙から降りてきたときに攻撃をかわすが、

巨体に裏付けされた大量のHPがネックになりシャドーハートの攻撃などほとんど意味をなさなかった。

今までならセルフィナのスキルによりこのドラゴンを消滅させて本体のスライムを攻撃してすぐに

戦いを終わらせることができるんだが、スキルが禁止リスト入してしまったので、打つ手がなかった。

「随分弱いね」

「そしちらこそ随分ずるいね」

「あまり調子にのるなよ!」

「大丈夫ですか?」透明の魔術師がよってくる。このスライムに倒された魔術師だった。

「厳しい、このドラゴン強すぎる。なにか弱点は……」実際このままだと到底勝てるとは、思えなかった。

弱点も到底見つかりそうになかった。強いていうなら本体のスライムが弱そうなことぐらい。

「ぬしの弱点は、あのスライムですが……。その前にこのドラゴンをなんとかしないといけません

このドラゴンは、古竜つまり、伝説上の封印されていたドラゴンです。そのドラゴンが娑婆に出てきているのは

正直よくわかりませんが……ドラゴンに勝つのは不可能でしょう」

「え? ぬしってこのスライムがぬし?」

「ああ、そうだよ。僕がこのあたり一帯を支配している。セリムだよ」

「あなたも早くさがってじゃないとやられるよ」シャドーハートは、透明の魔術師を気遣う。

「いや、大丈夫ですよ。もうすでにアンデットになってしまっているので手遅れですよ。

それより私は、ゲームバランスを破壊しつくす転生者に腹が立ってるんですよ。一緒に

戦わせてください」

「そうか……ありがとう……一体何ができるんだ? 攻撃は?」

「できない」

「防御は……」

「できない」

「だよね」透明人間に期待などできるはずもなかった。

「でも、アイテムならあります」

「アイテム?」

「ちょっと! 早くしてよ!」セルフィナが、古竜に追い回されて逃げ回っていた。急いでアイテムを

確認する。

「これならいけるかも知れない……このアイテム借りるよ」

「どうぞ、もうどうせ使う機会もないですし」すぐに、アイテムを発動する。あたりいったいが、

聖なる光に満たされる。しかし、何も起きない。古竜も無傷だ。

「何をしたんだい? なんだ、N(ノーマル)のアイテムかそんなので僕が倒せると思っているのかい?」

たしかに、古竜も本体のスライムも無傷、なんの状態異常にもなっていいない。しかし、古竜は、

大人しくなり動かない。

「おい! ヴォルセウスどうした! くそ! こんな貧弱なアイテムで!」

「リフレクト・ゼロ。これで古竜は動けない」

「馬鹿だなお前、リフレクト・ゼロなんて使い物にならないアイテムをつかって、確かにこれを

使えば高レベルのモンスターの動きを封じることができるか、すべての高レベルのモンスターの

攻撃ができなくなる。つまりお前も僕も攻撃できなくなるということだよ」

「ごめんよ、あいにく俺は負け組でね。最低ランクの冒険者でね」

「は?」

「俺は、スライムランクの冒険者なんでね。だからこのアイテムがあっても攻撃できるんだよ!」

「グハッ!」拳がスライムを襲いかかる。本体のスライムはあっさり敗れる。

「なぜ、トドメを刺さない」

「それが、異世界のルールだからだよ。お前らみたいpvpでイキってる連中と違うんでね。

二度と異世界に来ないとここで誓うならトドメを刺さずに見逃してやるよ」

「……」

突然スライムが喋らなくなる。どいうやら、普通のスライムに戻ったらしい。

「ありがとう……良い夢が見れたよ……」強力してくれた透明の魔術師の体が消滅していく。

「すまない……何もできなくて……」

「いや、いいんだ。どうしても転生者が許せなくてぬしにとどめをさせただけで十分だよ」

その後、平原のスライムは、平凡なスライムしか出なくなった。初心者にやさしいごく普通の

平原となった。


「なんとか、勝てたね。なんの役にもたてなくてごめんね……」セルフィナが、謝る。

「いや、そんあことないよ。ありがとう勝ててよかったよ」しかし、このままだと勝ち続けるの

厳しいと感じるのは正直なところだった。

「パチパチ」拍手をしながら魔術師が近づいてくる。

「見事な戦いだったよ」

「誰だ?」

「私の名前は、ノクターン」

「ノクターン?」

「円卓首席のノクターンだ」

「ノクターン?!」この世界を支配する円卓のボスそれが、ノクターンだった。名前は、聞いたことが

あったが会うのは、初めてだった。こいつを殺せばこの地獄の終止符が打たれる。転生者に

破壊されつくした異世界を救うことができる。シャドーハートは、すぐに相手に向かっていた。どれだけ

無謀な戦いかを考えず突進していく。

「シャドーハートくん!」セルフィナが、止めいようとして無駄だった。

「リバースゲート」魔法陣が、地面に現れる。そしてシャドーハートが、即死する。周りの小さな

モンスターもすべて死んでしまい、植物もすべて枯れてしまった。

「な、何をしたの……」恐怖ですくむセルフィナにノクターンが近づいてくる。

「すべてを殺したんだよ」恐怖でセルフィナは、震える。

「セルフィナ!」透明なアンデットになったシャドーハートが、セルフィナを守るために殴りかかるが、

透明なので通り抜けてしまう。

「君は美しいね……そうだガチャになってもらおう」

「パチン」ノクターンが、指を鳴らす。

「え? どういう……」一瞬でセルフィナが、その場から姿を消す。

「おい! 一体! 何をした!」シャドーハートの声は、ノクターンには聞こえない。

「シャドーハート君、君の思想は大変興味深い円卓で待っているよ」

「おい! 待て!」




呆然と立ち尽くす。圧倒的力の差転生者との力の差は、もはや努力なんかでは到底埋められなかった。

しかし、今自分にできることは……。

シャドーハートは、クエスト紹介所に来てしまった。どのみち重税を支払うためにはこの道しか

なかった。しかし、ローアンデットと成り下がった自分にできるクエストなどまとももなものなどなかった。

そもそも、まずは雑魚狩りから始めないといけなかった。最低限ランクをあげて実体化しないといけなかった。

「なんで、ここに俺はいるんだ……」シャドーハートは、当て所もなく歩き気づけば、そこはあの最強の

スライムを倒した平原だった。シャドーハートは、平原に湧いてくるスライムを他の低レベル冒険者同様に

刈っていく。しかし、目的は今までとは違った。

「ん? ここはどこか教えてくれませんか?」スライムが突然話しかけてきたのだ。きた! 転生者!

シャドーハートは、興奮を抑えながら優しく話かける。

「ここは、そよ風の平原です」笑顔で、答える。

「そうですか……。あのもしよければ教えてほしいんですが……」若干聞きづらそうに転生者のスライムが

尋ねてくる。

「なんですか」

「この近く伝説の古竜が封印されている洞窟があると聞いたのですが……」

「ええ。ありますよ。もしよければご案内しましょうか?」

「ほ、ほんとですか?! ありがとうございます!」


「暗くてよく見えないですね」

「ええ、暗いですね……」

「なにか、明かりが」

「バン!」轟音が洞窟内に鳴り響く。

「……」スライムが喋らなくなる。巨大な岩に潰されスライムが砕け散る。

「ハハハ! やったぞ」シャドーハートが、高笑いする。そして目を見開いたシャドーハートが、

スライムの断片を食べ始める。

「これで、俺も転生者のチートスキルを手に入れられる。待ってろよ! 円卓! 俺は、もう手段など

選ばないどんな手を使ってでも貴様らに食らいついてやる」真っ暗な洞窟にシャドーハートの

理性を忘れた高笑いが響き渡る。




「……」静寂でつつまれている。洞窟内に侵入者が現れる。

「また! 我を起こすというのか!」洞窟内に怒号が響く。

「お前の力を貸してほしい」眼の前には、封印されている伝説のモンスターヴァルザグナが

存在した。

「もう、うんざりだ。何度目だと思う。我の眠りを妨げるのものよ! 貴様ら転生者は、何度も何度も

私の力に頼ろうとする。失せろ!」

「じゃあ、もし円卓を破壊するのが私の目的だとしたら?」

「は?」

「俺の目的は、円卓の破壊による転生者200万人の現実世界への追放だ」

「ハハハ! 笑わせおる。面白い。お前にできるというのか?」

「力を貸してくれたらやってみせる」

「そうか、ならば力を貸してやろう!」シャドーハートは、転生者から吸収したすきる。適応捕食を

使用し、ヴァルザグナを体内に吸収する。


さっそく、この力を使ってクエストを受けようにもシャドーハート自身のランクが低すぎて

割のいいクエストを受注するのは、現実的に考えて無理だった。

「呆れるぐらいの弱さだな。我を今まで吸収した転生者たちは、みな最初から最強だったぞ」

「すまないこれが、俺の今の実力なんだ……」受注できるクエストは、せいぜい現実世界で言えば、

最低賃金レベルの業務ばかりだ。

「いい方法が、ある私の力で街でも一つ潰してしまえばいい。そうすれば……」

「それは、できない。それじゃ転生者とやってることが同じだ」

「そう言うと思っったよ」




ほとんど、それらしいクエストがない中で、最近勢いをます動画配信でのクエストは非常に多くあった。

市場自体が大き伸びているので、低レベルの冒険者でも受注できる業務が存在した。

結局その中から一つ業務を受けることにした。業務内容は、迷惑配信者の撃退だった。

転生者が、異世界で迷惑配信を繰り広げ現地民に多大な迷惑をかけていた。しかし、圧倒的なチート

能力の前になすすべもなく誰も寄り付かないクエストとなっていた。転生者たちは、より目立とうと

どんどん過激な配信を繰り広げていた。


シャドーハートは、依頼主のグレイスさんのもとを訪れる。

「よく来てくれたね……」半透明の姿のシャドーハートを見たグレイスさんの反応は、微妙なものだった。

それもそのはず、最強の転生者たち相手にローアンデットでは、役不足は明らかだった。

「ここなんです」案内された場所は、巨大な切り株が乱立していた。

「ここは……森だったんですかね……」

「はい、このあたりは非常に豊かな森だったんですが、最近自称農業系配信者とやらが現れてから

すべて刈り取られてしまって……」この森から取れた動植物は、一切採取することだができなくなったらしい。


「あくまでも予想ですが……次は、このあたりなんじゃないかと……」グレイスさんの案内により

比較的新しい村の近郊にある森を案内される。

「私達の村は、迷惑配信者が現れてから村を移転せざる終えなくなってムラを移転させたんですが……

そのムラの側の森が今度は、標的になるんじゃないかのと……」

「そうですか……話は分かりました。私でよければ引き受けましょう」


「ありゃ駄目だな……」

「期待できないな……」陰口がシャドーハートの耳に届いた。無理もなかった。転生者に現地の

ローアンデットが勝てる理由ものなかった。


さっそく配信を確認するとちょうど、ライブ配信中だった。コラボ中で、配信者サムのファンである

と自称する。亡国の姫が現れ。コメント欄は、大盛りあがりだった。

「キター!」

「まじかよ! ユア姫!」

「まさかとは、思ったけど!」今、この異世界では、配信が大流行しており各国姫などももお忍びで

配信をしていたりするが、その中でももっとも人気がるユア姫が配信に現れたということで

配信は、神回の雰囲気になっていた。

「いや、まさかのまさかですよ。今日のゲストは、ユア姫です!」

「こんにちは」

「ハハハ、やばすぎるだろ」配信者サムのマネージャー笑う。

「いや、俺も正直ようわからん」

「ハハハ」ユア姫も笑う。

「ただの田舎の農業配信者にまさかの姫!」

「いや、いや、こちらこそ、サムさんの配信をずっと見ていて大ファンだったんです」

「ほんとに? こんな片田舎のおっさんの配信を?」

「はい!」

「いや、ぜったい嘘やろ!」笑いながらマネジャーがつっこみを入れる。ユア姫とサムは、十歳以上

年齢が離れていた。


「で、今日は何する」

「何するって決めてないかい」マネジャーがツッコミを入れる。

「なんでもいいよ。姫が決めて」

「え!? じゃあ……あの巨大の木とか斬ってるのが見てみたい……かな……」

「あれ? あんなの見たいの?」

「あんなのとかいってるけど、そうとうすごいけどな」マネジャーのツッコミがはいる。


「あんなの草」

「いや、あんなことできるのお前だけだよ」

「まじかあれまた見れるのか?」コメント欄は、大盛り上がりだった。


コメント欄が猛スピードで流れるなかで、投げ銭が表示される。

転生者絶対殺すマン「ルナ村の近くの森の大木を斬ってみろよ」


「煽りキター」

「アンチキター」最強の転生者の敗北は誰もが予想していていないので、コメ欄も煽りに速攻でやり返す。


「転生者絶対殺すマンさんありがとうございます。はい、じゃあ転生者絶対殺すマンさんを殺しに行きます」

サムは、煽りに乗っかる。


「現地人、ビビって逃げるなよ」

「コメ欄スライム臭いな」(スライム臭い、異世界で、転生者が増えてから弱者に転落した異世界の

現地人たちの転生者への僻みのこと)コメ欄も大盛り上がりになる。


「え、ここやばない」ルナ村近くの森にサムたちは、到着する。

「うわー! こんな大きな森あったんですね」巨大な森が現れる。樹齢百年は、固くない巨木が乱立

していた。

「いや、しょぼい木しかないな」

「いや、いや、このでかさでしょぼいはないやろ」

「え? まさかこの木斬るんですか?」姫も驚く。

「だって農業系配信者やからな」





「キーン」一振りで、大木が倒される。

「危ない危ない!」倒れてくる大木から必死にマネジャーと姫が逃げる。

「いやー、いい仕事した」


「やばすぎ」

「どう見ても、間違って追放されたAランク冒険者で草」コメント欄は、大盛りあがりで

配信を1万人ほどの人が見ていた。


「おい! 見てるか? 俺を追放したシルバーフォングのメンバー」サムが配信画面を指指しながら

笑う。

「いや、これ、見てたら追放したやつ絶対後悔してるやろうな」

「まあ、俺ぐらいの天才になると無能なギルドメンバーだと判別がつかないないんだろうな」

「あの……私の王国で、剣術指南をしてみませんか?」姫が勧誘する。

「嘘やろ」マネージャーが驚く。

「やっとか」サムがまたなんかやっちゃいましたという表情をする。

「やっとかって失礼やろ」コメ欄もマネージャーも爆笑する。その後も農業配信と称して

原生林を破壊していく。


「貴様か! 我が森を荒らすのわ!」森の主が巨体を震わせ怒る。

「誰や、おっさんあと、ちょっとダイエットほうがいいで」サムは、逆に煽る。




姫とマネジャー、視聴者が大爆笑する。

「貴様! 口には気をつけたほうがいいぞ!」

「どうするこいつ? はい、アンケートとります」配信で視聴者にアンケートを取り結果で判断することになった。

「天罰!」森の主が足を踏み鳴らし周囲から物理ダメージがサムに入る。

「サム、どうする?」

「そりゃ、死刑一択だろ」サムが大剣で応戦する。森の主の巨体も農業チートの大剣の前には、なす術もなく

一方的にダメージが蓄積されていく。そして、巨体がばったりと倒れ、あたりに地鳴りが響く。


「農家が、森の主倒すとか無茶苦茶で草」

「はやく、冒険出ろ」コメント欄は、大盛りあがりになっていた。


「ということで、雑魚キャラも倒したところで、配信終了したいと思いますありがとうございました。

もしよかったら、チャンネル登録してください。このチャンネルでは、農家の素朴な日々を配信しています

ので、ぜひ見に来てくださいありがとうございました」

「で、この後、姫とセックスするんだろ。もいいよそういうの秋田から」

「?」森の奥から一人のローアンデットが、姿を表す。

「配信終了後に倒しに来たのは武士の情だ」

「は? 何いってるんだ?」

「どこからでもかかってこいよ」シャドーハートは、ヴァルザグナを顕現させる。

「サムあれって……」古竜ヴァルザグナ、封印されているはずの伝説古竜だった。

「大丈夫、俺クラスなら古竜クラスでちょうどいいぐらいだろ」サムは、余裕の表情だった。これまで、

配信で現れたモンスターで殺していたので、今回もなんとかなると過信していた。

「あなた……転生者?!」姫が、シャドーハートに問いかける。

「違う。現地民だ。おさっしのとおり、転生者のスキルを盗んで使わせてもらってる。お前ら転生者も

スキルで様々なものを盗んでいるからお相子だな」

「……」しばしの沈黙が訪れる。

「サム? 驚かせるなよ」マネジャーが、笑いながらなにかの冗談だと思いツッコミを入れる。

「お前一体何を?」

「いっただろ、お前転生者の大好きなチートだよ」サムは、行動不能の状態になっていた。

「か、体が……」

「おい! サム大丈夫かよ!」

「ドンッ!」一瞬の隙をついて巨大な水の塊が、ヴァルザグナを襲う。

「まさか?! この魔法は?!」

「水にある重みを利用した。攻撃だよ。この世界では、水に重力があることなどしられていないからな

この世界で、俺だけが使える魔法」マネジャーが、ドヤ顔で姫に語る。

「え? 嘘でしょ。水に重さがるの?」姫が驚く。

「おいおい、頭のおかしい茶番はそのへんにしてくれないか? それ以上聞かされていると

頭がおかしくなりそうだ」そこには、無傷のヴァルザグナが立っていた。

「バカな……」

「ヒール(スキル全解除)」姫が慌てて回復術を発動する。しかし、何も起きない。

「どうして? 何をして無駄だよ。ヴァルザグナは、5ターン確殺のスキル」5ターンが経過して

全員のHPが急にゼロになり倒れる。





「嘘でしょ……」一部始終を見ていたルナ村の少女が現れる。

「おっと見られてたのか……内緒だよ」しかし、少しして大きな問題に気づいた。配信が終わっていなかったのだ。

「まずい……」


「何が起きたんだ?」

「あれ何?」

「伝説の古竜だろ」

「偽物だろ」

「いや台本乙」

「はいはい、やらせ、サムが負けるわけない」過去最高の視聴数に到達し大量のコメントが流れていた。


「あー、台本ですでは、配信終わります」配信を勝手にぶった切る。

「配信終わってたんじゃないのかよ……」後ろを振り返えると、少女が連れてきた村人たちが、

集まっていた。

「ありがとうございます」村の長老が村を代表して挨拶にくる。

「いえ、いえそんな、ただクエストをこなしただけです」

「私たちの命の恩人です。見た感じソロプレイヤーですかな。もしよければ、私の代わりに村長を

やってはくれないかな……あなたなら転生者が跋扈する現代でもこの村を守っていけるのではないでしょうか」

「申し訳ありません。ありがたいのですが、それでは根本的原因は、解決しません」

「というと?」

「私は、円卓を壊滅させようと思っています」

「え?! 円卓を?!」その場にいた誰もが耳を疑った。最強の転生者たちを壊滅させるといってるのだから

にわかに信じがたかった。

「では、これで……」その場に落ちていた。サムの大剣をクエストの証明代わりに持って帰る。





その日街では、配信にみなが釘付けだった。なんでも円卓の首席だった。ノクターンが、円卓を離脱すると

話題になっていたのだ。

「おい、来たぞ」謎のモスク内からの配信が映る。ノクターンの一挙手一投足は、異世界では注目されていた。

背後では、扇風機が回る。モスク内では、信者が礼拝をしていた。

「教団か?」

「さあ?」配信に集まった人たちも困惑していた。パット見なんの映像かよくわからなかった。

「信者みなさん。今日ここに新たな国の建国を宣言します。ナーロッパ帝国これこそ神から

認められた国にほかなりません。この国では、転生者は神となります。そして不信心者は、

決して許されません。世界の同胞たちよ立ち上がり新の教えを広める聖戦士となれ!」

ついに神か……。配信を見ていたシャドーハートは、呆れる。もうすでに、転生者たちは、

異世界でわがまま放題振る舞っていてすでに神のような振る舞をしていた。


クエスト紹介所にシャドーハートは、クエストを探しに向かう。

「道案内? これならいいな……」シャドーハートは、非常に条件の緩いクエストを見つける。

「条件は……現地の地理に精通していることか……」現地人の俺には、うってつけだな……。

「はじめまして。シャドーハートです」

「よろしくお願いします。佐藤です」

「田中です」転生者か……。疑問を感じる転生者がわざわざ道案内? どういうことだ?

「ここなんですが……」マップにピンが打たれる……。

「ここか……」

「やはり危ない地域ですか?」

「ええかなり……」転生者が国の政治に口を挟むようになって揉め事の絶えない国と国の国境地帯だった。



「何? 失敗しただと?」ボスのクロは、部下の報告に激怒する。

「す、すいません。輸送宙に奈落が、作動してなくなく手放さざる終えなくなり……」

ここは、異世界の闇バイトの拠点、そしてこの組織は、奈落のノコギリと言われる。宝具の

遺跡からの窃盗を部下に命じていた。しかし、途中で呪の宝具が暴走してその呪に汚染されはじめたので

メンバーが裏切り途中で、宝具を投げ出し逃げていた。

「すいませんだと? 許されるとおもうなよ!」

「あああああああ」電撃の魔法攻撃ショックブレイクを与える。

攻撃を受けた女メンバーは、白目を剝き口を大きく開け絶叫する。全身の筋肉は小刻みに痙攣を起こす。

「ここは、現実世界じゃないんだよ! 舐めるなよ!」現実世界では、決してできない拷問を失敗した

闇バイトのメンバーにボスのクロが、お仕置きを行う。それを見ていたメンバーは、恐怖で固まる。

「いいな! こうなりたくなかったらお前らも絶対に仕事を途中で投げ出すなよ! いいな!」

電撃の魔法を受けた女メンバーは、全身から煙を上げ失神していた。

「次の業務は、業務は、絶対失敗するのあよ。いいか次は、ないぞ次は、決闘代行だ。

いいか、ここは、現実世界ではない異世界だそれを忘れるなよ」クロは、指先で電撃を見せつけるように

発する。

「死体は、ゴブリンの餌にでもしとけ」このギルドでは、現実世界の違法薬物で薬漬けにした

護衛用のゴブリンを飼っていた。

「それにしてもバカなやつらだな。あんな適当な求人に釣られる奴らがいるなんて」

クロが、幹部と話す。

「そうです。こんなに簡単に騙せるならまだまだ設けられれそうですね」

「じゃあちょっくらギャンブルいってくるは」

「うーっす」クロは、闇バイトで巻き上げたお金でギャンブルをしにいく。このギルド虫の巣では、

現実世界で、求人を出して異世界につれてきて異世界の闇バイトをさせていた。そして異世界の魔法と

暴力により組織を支配していた。


「一応このあたりですかね?」シャドーハートは、佐藤に場所を案内する。

「ありがとうございます」

「道案内で報酬がもらえるのか……ありがたいな……」しっかし、このラズといわれる地域は

治安が非常に悪い。

武装騎士団どうしが、争っており国家の治安維持機能も最低限しか機能していない。

まあ、こんな治安が悪いならトンズラさせてもらろう。

「おい! はじまるぞ!」急に周辺が騒がしくなる。

「ちょっと! すいません!」一気に人が集まったためにその場から移動できなくなってしまった。

「我はジークハルト! クロード卿はおられるか!」貴族同士の決闘が始まろうとしていた。




「……」仮面を被った騎士が現れる。この世界では、決闘が認められており、当たり前のように決闘が行われていた。

「待っていたぞ!」ジークハルトが斬りかかる。もうスピートで攻撃が繰り出される。エルフ系の剣戟を

習得しているためスピートは、現実世界では、絶対あり得ないような速度だった。仮面を被った騎士は、

迎撃をするので精一杯の様子で反撃する余裕など全くなかった。

「どうしたクロウド! 貴様の実力はその程度か! まあいい貴様の不正が全世界に証明されるだけ!」

エルフの剣戟により仮面の騎士は全身から血しぶきをあげるその場に倒れ込む。

「誰だ貴様?」仮面の中からできた顔は、見たこともない男性の顔だった。

「まあいい。我の正義は示さんれた!」勝者のジークハルトは、クロード卿と資産面での争いを抱えていた。



今回の決闘は、その資産面で争いを決着させるためのものだった。

「大丈夫ですか?」佐藤が、クロード卿の替え玉になった。男性に駆け寄る。佐藤とシャドーハートの目が

合う。もちろんシャドーハートは、無視して立ち去ろうとする。もう、仕事は、終わった。

「追加でお金を払うは!」すぐにシャドーハートは、動いた。近くの一軒家に替え玉の男性を引きづって行く。

「もう、助からないな……」血だらけの男性は、もう虫の息だった。

「お願いします」その一軒家では、ヒーラーがすでに待機していた。ヒーラーが、すぐに回復魔法を

かける。男性は、命をとりとめた。

「ありがとうございます」

「お名前は……」

「伊藤健です……」

「私は、電脳化の捜査官です。闇バイトの疑いで聴取させてもらいます」佐藤により聴取が、始まる。

現実世界では、異世界での闇バイトが大きな問題となっていた。命を落とすもの、巨額の借金を追うもの

それらが、社会問題になり警視庁主導により大規模な操作が行われていた。

「きっかけは?」

「はじめは、求人を見て……ギルドの荷物持ちで日給が十万円……時給が非常に良かったので転生しました」

日本は、今現在格差が広がっており去年の出生数10万人家庭を持ているのは、わずかなお金もちだけになっており一発逆転を狙う若者の異世界転生が後を立たなかった。

「ギルドのの名前は?」

「虫の巣……でも、転生したら転生キーを奪われ……闇バイトを強要されるようになり……」




その後も、簡単な事情聴取が続いた。佐藤という男は、異世界闇バイトの一貫として代理決闘を

行ったようだった。

「すいません。ありがとうございました。報酬になります」報酬が、シャドーハートに支払われる。

「ありがとうございます。ちなみに闇バイトって……」

「異世界の方には、馴染みがないですねよ。要は、犯罪行為を行うことです」

「例えば」

「そうですね、強盗殺人とかですかね……」

「え? 強盗殺人もおこなうんですか?」

「ええ、その逮捕ために、この異世界で取締をおこなっています」

「転生者が強盗殺人を……実は、私両親は、転生者に殺害されまして……今もその犯人を追ってるんです」

「ええ!?」

「もしよかったら、その取り知り締まりに協力させてもえませんか?」

「ん……」闇バイトの取締は、非常に危険だった。佐藤は、少し悩む。

「私は、本気です。覚悟はできています。もう、私にはなに失うものなどありません。金もなにもありません」

シャドーハートとしてても自分一人で転生者に復讐するのは

不可能だと薄々感じていた。





「そうですか……わかりました。では、あなたを協力者としてやといたと思います」

「よろしくお願いします」


「何? 佐藤が死んだだと?」虫の巣では、ボスのクロが代理決闘の闇バイトの結果報告を受けていた。

代理決闘とは、決闘制度があるある異世界で、死亡するのを嫌がった異世界の住人が、

闇バイトに依頼して代わりに戦ってもらうという制度だった。

「はい、惨敗しました」

「死体は?」

「それが、人混みに隠れて姿を消していました」

「まあ、いい負けようが死のうが金が入ればいい」闇バイトの転生者たちは、みな捨て駒にされていた。

警察も日本から遠く離れた異世界での取締には困っていた。

「次は、どうします?」

「餌役とかどうだ?」



「いいですね」餌役は、魔物たちの餌になる役割のことで。魔物たちの経験アップが目的で準備

される捨て駒のことだった。


シャドーハートは、佐藤と虫の巣から出てきた。構成員を尾行する。

「また決闘ですかね……」

「いや、何をするかはまだ分からない。闇バイトといってもからなりいろいろな種類があって」

「そうですねか」

「ただ共通しているのは、実行役には、全く利益が入らないということですね」

マリア研究所に構成員は、消えていく。

「ここは?」

「すいません……私にもよくわかりませんね……」シャドーハートもこの地域のことは、よくわかって

いなかった。とりあえず中に侵入していく。魔獣の剥製がずらりと並んでいた。

「すごいですね……」佐藤は、異世界の剥製に目を輝かせる。

「あ……でも……」

「どうしました」

「全部、改造魔獣ですね」

「改造?」

「この世界では、使用禁止されている魔獣があって完全にそれです」召喚獣協会からみとめられていない

脱法召喚獣が並んでいた。




「高橋さんですか?」

「はい」研究員が、姿を表す。

「ようこそ。今日はよろしくお願いします」研究所の全体像は、研究所の建物と巨大な

フィールドで構成されていた。研究員は、自然豊かなフィールドに高橋を呼ぶ。

「02!」ナンバーを呼ぶと見たこともない魔獣があらわわす。胸には禁術の刻印が浮かび上がっている。

体長は、5メーターを優に超えていた。

「では、今から戦闘をおこなってもらいます」しかし、禁術を施された魔獣に転生者したての

闇バイトの構成員が、勝てるはずもなかった。事実上の生き餌だった。

研究員は、特殊な魔力で構成された強力な柵を閉じその外へと対比した。名目は、実験だったが、

違法改造した魔獣に無能力な転生者が敵うはずなかった。

咆哮を放つ魔獣が高橋へと襲いかかってくる。高橋は、覚えたての脆弱な魔法で対抗しようと

するが、全く刃が立たない。研究員は、あくびをしながら立ち去っていく。





「シャドーハートさん、なんとかなりませんか?」佐藤から依頼される。佐藤としては大切な証言者

失うわけにはいかなかった。

「いや…さすがに禁術に対抗するすべは……」禁術は、ランク外の超強力魔力を意味しており

到底シャドーハートの能力では、対抗できなかった。

「賢者レベルの人でもない限りむりじゃないですかね……」

「そうですか……なら、こちらも禁術で対抗しましょう」佐藤は、カードを取り出す。

「これは?」

「TCG」

「はあ?」

「私達の世界では、カードで戦うという概念がありまして」

「魔術書ではなくて?」

「ええ」

「この紙切れであれと戦えと?」

「ただの紙切れでは、ありませんよ。まあ使ってみてください」まあ、どもみち選択肢がなかった。

あいては、禁術魔獣されには、特殊な檻でおおわれているため物理攻撃以外は、ほとんど使用できなかった。



猛獣が、猛スピードで、高橋へと突進してくる。百キロのスピートで移動する猛獣から逃げられるはずもなく。

あっさり高橋は、捕まる。攻撃力の上でも到底猛獣に勝つことなど到底不可能だった。

「じゃあ……試してみましょうか」シャドーハートには、未知のアイテムだったがもう使用するしか

選択肢ながなかった。

「氷の結界壁……」猛獣は、敵の対象を入れ替えてシャドーハートに的を変えて突進してくる。

しかし、猛獣は、シャドーハートの傍で行動を停止してしまう。

「あれ……HPが……」しかし、シャドーハートHPは、確実に削られていた。慌てて、ステータス画面

で氷の結界壁の説明を読む。HPを削る。削ったHP✕100以下の攻撃力の持つモンスターは、

攻撃ができない。でも、これで、攻撃は止まった。さあ、あとは、この猛獣をなんとかしないといけない

わけだが……。違法改造された化物をそう簡単に同行できるはずもなかった。猛獣は、高橋を目の前に

動けなくなる。高橋は、すでに戦意を喪失してうずくまっている。なにか……。他のカードは、ないのか

……。「これでも使うか……」

「誘発する結界壁」発動と同時に大人しくしていた猛獣が結界壁に突進してしてくる。当然突進する

猛獣のHPはどんどん削られていく。自爆状態になる。

「なんだこれ? どうなってるんだ?」壁に白目をむき壁に激突し続ける。猛獣。

「このカードは、敵の攻撃を強制発動とする」攻撃が通らない状態で強制的に攻撃をさせる効果が

あるらしい。あとは、時間が経つのを待つだけだった。HPを使い切った猛獣は、その場に勝手に倒れ込む。

そして、それを確認してから佐藤が、闇バイトの高橋に駆け寄っていく。

「大丈夫ですか?」

「あ……日本人?」

「警察のものです。あなたを救いに来ました」

「そうですか……」




「あの……この人は……」佐藤の事情聴取に同席するシャドーハートに疑問を呈する。

「ああ、この方は、現地の協力者で日本人では、ないよ」

「現地の人……はあ……」高橋は、自分のことをあまり知られたくなかった。

「いや、彼は、同席させてほしい。現地の案内も兼ねているからね」

「今回の闇バイトのきっかけは?」

「マッチングアプリです」

「マッチングアプリで誘われて?」

「はい、儲かる副業があるからどうだと」

「それですすめられたの異世界転生」

「はい……」

「お金を払わされたたりとはかは……」

「100万振り込んでしまいました」

「そうですか……」

「あのギルドとは」

「はい、誘ってきた女性からここのギルドに所属して簡単なクエストをこなすだけですぐに大金が入ると」

この話をしている間も何度もシャドーハートをどかすように佐藤に高橋は、以来していたが

佐藤は、拒否していた。

「あのマッチングアプリで誘ってきた女性の名前とかは……」

「マリって名乗ってました」

「何か写真とかは、あります?」

「これが、マッチングアプリの写真になります」

「こいつ!」

「え? 知ってるんですか?!」普通なら現実世界の人間と異世界の人間の接点などないはずだったが、

シャドーハートには、見覚えがあった。

「エンタクのメンバーですよ」

「エンタク?」

「この世界を事実上支配している転生者たちですよ」この異世界は、今現在異世界における移民である

転生者たちに支配されていた。この女性は、セレナ




自らのことを神と名乗る転生者で仕事は、薬師。

「ご存知なのですか?」

「ええ、この世界では、有名な薬師ですよ」

「会うことはできますか?」

「どうでしょうね。会おうと思えば会えますが直接的なつながりはないので……」

「高橋さんは、どうですか?」

「そうですね……この世界に来る前は、会っていたのですが……この世界に来てからは、

会ってないですね……」

「ちなみにどのような薬師なのでしょうか」

「万能薬を作ることのできる薬師と聞いています。その高い技術により王宮御用達の薬師になった人です」

ただ、その一方で悪い噂も絶えない、それは彼女の能力は、万能薬を作ることでななく病をコントロール

して人の生死を弄んでいるというのだ。




「何? 高橋が餌にならず失踪した?」虫の巣のボス、クロの元に違法改造魔獣の研究をしていた

研究者から報告が入る。

「はい、高橋は魔獣を撃退しました。おそらくあなた達のお仲間がやったんではいですか?」

当時の映像を共有する。

「これは……」しかし、肝心の撃退した瞬間の映像は存在しなかった。

「申し訳ないが、生き餌にならなかった以上、この報酬は振り込めない以上だ」

「ちょっと! 待ってくれ!」魔力により共有されている映像が問答無用で途切れる。

「クソ!」



従うほかなかった。

「おい、お前の次の業務何だ?」高橋の業務を邪魔した人物の抹消を指示された末端闇バイト要員の

一人が同僚に尋ねる。

「俺? 俺は……ゆめ整理……」

「は? 何だそれ?」

「さあ? 俺にもよくわかんねえよ」下っ端のカシマも日本出身の転生者でこの世界の闇バイトに

ついてはよくわかっていなかった。

「なあ、もう脱走しねえ?」

「お前見ていないのか?」

「何がだ?」

「ミアのこと」

「は? 誰だ?」

「そうか、お前は、少しあとになってからこの世界に転生してきんだもんな。俺ほぼ同時期に転生してきた

日本人女性がいたんだよ。そいつが脱走を企ててなそして見つかって」

「殺された?」

「いや、今も生きてる」

「え? どこに?」カシマは、ミアなんて名前聞いたことがなかった。

「トイレだよ。手足を切り落とされて男子トイレに飾られてる」

「まじかよ……」心当たりがあった。エロいオブジェがあることには気づいていたしかし、まさか

本物の人間だとは思っていなかったのだ。

「おい、お前さっき(生きているって……)」

「ああ、彼女は、呪の回復魔法(ヒール)をかけられているせいで今の死ぬことができずに生きている」

「ということは、あのオブジェ今も……」

「ああそうだ……」

「……」脱走を企てた人間には、幹部たちが容赦のない拷問を異世界の魔法を使いおこなっていた。





「はぁ疲れた……」使用したことないアイテムを使用してシャドーハートは、疲労困憊していた。

「お疲れ様です」クエスト紹介所で今日の宿を探す。

「やすいところならどこでもいいです」

「では、ここなんてどうでしょうか」

「ここで」適当にやすい宿をとる。宿に入るとすぐに眠りにつく。


「あの……カシマです」

「ああ、カシマ君かよろしく。話は聞いているよ」ちょうどシャドーハートが寝ている宿の裏口から

闇バイト組織蜘蛛のの巣のメンバーカシマが宿の中に入る。そして三階に上がる。

「この部屋は?」一見なんの変哲もない部屋だった。ベットが一つあるだけの簡素な部屋だった。

「今日の君の仕事部屋だよ」

「ああ……ここで何をすれば」

「寝てくればそれでいい」

「え?」現実世界では、寝るだけでお金がもらえることなどまずない。せいぜい治験ぐらいだろうか。

「まあ、いっぱいどうぞ」水の入ったコップを差し出される。特に迷いなくその水を飲む。

「なんだこれ……まっず……ああ……眠くなってきたな……」飲むとすぐに睡魔が襲ってくる。

無意識に倒れ込むようにベット中に倒れ込む。


「最後の日本人である。佐藤元さんが指揮する南都は、劣勢に立たたされています」

ん? あれ? 日本に戻れたのか? 眠ってすぐにカシマは、明晰夢を見始める。

「どうして……こんな人生を……」カシマは、激しくうなされ始める。

「同世代の女性には全く相手にされない、金もない、安い給料の職場を辞めることもできない

もう、地獄だ……」これは……俺の人生いや、違う……。視界に映るのは見たことのない風景

懐かしい日本の風景なのだが、部屋の様子がおかしい自分の部屋ではないのだ……。

そうか……これが、夢整理の仕事か……。カシマは、状況を理解するも目を覚ますことはできない。

部屋では、TVがついていた。TVでは、なんてことないニュース番組が放送されていた。

「これで何回目だ……」一気に場面が飛んで数人の転生者に取り囲まれていた。

「さあなあ。お前らを始末してこの世界の頂点に君臨するそれが俺の目標。全ての女を奴隷にして

全ての権力を俺のものとする俺こそがこの世界の転生者の頂点に立つにふさわしい」

「そうか……今度こそは封印してやる!」若い転生者の賢者が攻撃を始める。強力な賢者の血筋なため

大地を突き抜けるような魔法攻撃が夢の中のカシマを襲う。もちろんこんな経験をカシマはしたことが

ないうえに記憶にもなかった。全身を激しい劇痛が襲う。ベットで寝ているカシマは声なき絶叫をし

体を悶絶させる。ステータス画面には、賢者がレベル100であることが表示されている。

「エリオス!」しかし、なぜか倒れていたの賢者の方だった。賢者は黒焦げになり煙が上がっていた。

なぜか、カシマま無傷だった。

「一体誰のなんの夢なんだ……」逃げ出そうとしても足が動かない。

「貴様!」 場違いなスライムが激昂する。なぜか分かる。ここにる転生者たちは、ただの転生者ではない

異世界を支配する。最強の転生者たち。スライムが変身して巨大な古竜が姿を現す。

古竜が舞い上がり空から数百キロのスピードで数トンの巨大をカシマにぶつけてくる。

「助けてくれー!」カシマが絶叫するが、全く足が動かない。巨大が直撃し爆煙が上がる。

しかし、またしても勝ったのカシマの方だった。古竜は、体がバラバラに切断されてしまっていた。

「た、すかった」激戦のさなかカシマは、目を覚ます。全身汗まみれで肩で息をしていた。

「恐ろしい夢だった……」カシマは、自分の体を思わず見る。

「い、生きてる……」夢じゃなかったらまず助からなかっただろう。



「おいカシマどうだった?」汗まみれでギルドに戻ってきたカシマに同僚の田中が心配して尋ねる。

「強烈なバイトだったよ」

「大丈夫か?」

「ああ、なんとか」げっそりとやつれていたカシマが部屋へ消えていく。

「ああああ!」部屋から絶叫が聞こえる。慌てて、虫の巣のメンバーたちが集まる。

「おい! どうした」何も起きていないにも関わらずカシマは、錯乱状態になり魔法陣を起動していた。

カシマは、昨日の夜見た悪夢でうなされ続けていた。

「精神汚染だな……」魔術に詳しい同僚が呟く。強烈な悪夢を見たせいでカシマの精神は破壊されてしまった。

「おい! 辞めろ!」カシマが魔法による攻撃を始めた。メンバーたちは、すぐに逃げ出す。


「おい、始末しろ」クロが部下にカシマの殺害を指示する。精神汚染により完全に壊れたカシマは、

利用価値のない存在として処理されることがすぐに決まった。

「はい」部下は、数回剣を振るいカシマを切り刻んでしまう。闇バイトで吸い上げたお金を使用して

手に入れた高級アイテムでカシマは、無惨にも切り刻まれた。


佐藤とシャドーハートの捜査で次第に組織のことが分かり始める。ほとんど転生者が高額案件に

騙され日本で消費者金融を使用して借金をして転生しており、そのお金がギルド蜘蛛の巣の幹部に

吸い上げられており、そして金銭的に困窮した転生者たちが、異世界での闇バイトに手を染めていた。

佐藤と、シャドーハートは幹部をおびき出すことにした。すでに、トップのクロの情報を引き出すことには

成功していたのであとは、本人に直接会うだけだった。


「君かい?」

「はい……」シャドーハートは、囮として蜘蛛の巣に入ることにする。酒場で蜘蛛の巣のメンバーと

接触する。もちろんこの酒場も蜘蛛の巣の息のかかった酒場だった。

「うちに入れば、すぐにでも金がはいるよ。それこそ天から金が降ってくるよ。いま、

所持金は?」

「2万jpyぐらいですかね……」

「そうか……それだと少し足りないかな。うちは預けた金に対して報酬を払うシステムを導入しているんだ

いわば、ギルド入会料金かな。そうだね。じゃあこの書類にサインしてくれる」借金の書類を出される。

「これにサインしないといけないんですか?」

「ああみんなサインしてるけど大丈夫だよ。すぐに報酬で返済できるから」シャドーハートは、

サインをする。ステータス画面にモザイク付きの借金が表示される。モザイクは、未登録の金貸しを

意味する。つまり脱法行為ということになる。しかし、根本はクロに会うことだった。

「あの……高橋さんの紹介でクロさんというリーダーがいると聞いて今回お尋ねさせていただいたんですが……

会うことはできますか……」高橋は、違法改造モンスターの生き餌にされそうなところを救った男だった。

その高橋を仲介にして今回組織に近づいた。

「ああ、そうだったね。もちろん今日来てくれるよ」

「どうも」クロが腰掛ける。

「!」

「ははは、驚いたかな」クロの正体は、この国を支配する王時廻りの王アランだった。

アランは、未来を救う救世主をこの世界で崇められている名君だった。今まで様々な

外敵をから国を何度も救い。英雄として崇められていた。


シャドーハートは、クロの正体について知り得た情報を佐藤に報告する。

「そうですか……。はやはりそうでしたか……」

「知っていたんですか?」

「ええ、ある程度は目星をつけていまいたから。ずっとアランの身辺を内偵調査していました。

彼も



彼が、クロだという情報が他にもよせられていたので」

「そうだったんですね……しかし、相手がアランとなると非常にやっかいですよ」

「そうみたいですね。彼のスキルをご存知ですか?」

「いや……」

「彼のスキルは、時空操作です。時間を操ることができます」

「そうですかそんな力が……」

「そして日本出身の転生者です……」そう言って捜査資料を手渡す。そこには、アランが日本では、

冴えないただのサラリーマンとして日々を送っていたことが書かれていた。

「サラリーマン?」

「平民ですね」

「なるほど」

「農民と言った方が近いのかもしれない。しかし、まいったな……王ときたか……」


「佐藤さん?」

「ん?」

「防衛省の神埼です……」

「あ……ハハハ」お互いに現実社会と違う姿に笑い会う。もちろんシャドーハートは、元の姿を知らない。

傍目にはダウナー系の魔法少女が喋っているだけにしか見えないが、日本での二人の姿は

また違ったものなのだろう。

「すいません。驚かせてしまって。核使用の許可が降りました」

「そうですか……」核? シャドーハートは、初めて聞くワードだった。

「核?」

「まあ、チーターにチートアイテムで対抗するということですよ」

「日本のチートアイテムですよ」シャドーハートは、転生者が好んで使う自動制御付きの剣や

リミッター解除付き魔法の杖などを思い浮かべる。


シャドーハートは、次の潜入に向けて虫の巣の高橋と打ち合わせをおこなう。

「では、虫の巣の中へ一旦入るということで」

「はい、その予定です」シャドーハートは、虫の巣のアジトへの侵入を計画していていた。

「あの……」

「はい」

「高橋さんは、日本出身なんですよね?」

「ええ」

「核って知ってます?」

「は?!」

「知らないですねよね。ごめんなさい」

「いや、核なんて異世界じゃ関係ないでしょ」

「なんでですか?」

「そりゃ私たちの世界でも禁じられている大量破壊兵器だからですよ」

「大量破壊兵器?」高橋が核兵器の映像をシャドーハートに見せる。

「嘘だろ……」シャドーハートは、頭を抱える。

「どしたの?」

「いや……なんでない……」これは、かなりまずいことになった。味方と思っていた日本人が、

転生者たちと大差ない破壊者だということが分かった。自分の手でなんとしてもアランを処理しないと

国ごと吹き飛ばされることになりそうだった。



しかし、大きな問題があった。言うまでもなくアランは、チーター。倒すには相当の能力が必要になった。

金なし、ステータスは、すべて低いシャドーハートには、相当の難敵だった。

シャドーハートは、あるコミュニティの情報を手に入れるためにクエスト紹介所を訪れる。

最近のクエスト紹介所は、無人であることが多かった。無人というのは、クエスト紹介所に冒険者たちの

姿がいないというわけでなく。クエスト紹介所いけば必ずといっていいほどいるはずのカウンター越しの

職員がいないのだ。クエスト紹介所の職員は、転生者たちから人気だったのだが、クエスト紹介所の

職員が、冒険やギルドで無双するシナリオが人気になってい以来職員が、冒険にでることが頻発し

常時無人状態になっていた。

しかし、今のシャドーハートの目的は、別にあった。シャドーハートの目的は、無課金コミュニティーの

情報だった。掲示板には、真偽不明の無課金プレイヤーの情報が書き殴られていた。その情報には、

これは嘘、騙された。などのコメントが寄せられていた。パット見どれが釣りでどれが本当の情報か

判断が非常に難しかったが、貧乏を極めていたシャドーハートは、長年無課金コミュティーに

いたため界隈では、乞食のシャドーハートの二つ名をほしいままにしていた。そんなシャドーハートから

してみればどれが有益な情報でどれが偽情報か見分けるは造作もなかった。



シャドーハートは、モンスターの骨が非常に多く落ちているエリアに向かう。このエリアには、

骨が散乱していた。紹介所の無課金掲示板にあった。ボーン・ナイフの製造に骨が必要だった。

高級な剣や杖を手に入れることは、できなったのでなんとか、工夫するしかなかった。骨は、

この異世界でも簡単に手に入る素材だった。資本主義が、異世界に流れ込むと同時にお金で強さが

手に簡単に手に入るよになり。努力が意味をなさなくなってしまった。異世界の富の99%が、

1%の転生者やその転生者に協力している異世界の人間に占められていた。

よっし、さらにシャドーハートは、石に目をつけていた。石も異世界ではめずらしいものではなかったが

さまざまな使い方ができた。シャドーハートは、石を選別していき魔力を溜め込むことのできる

石を見つけ出す。そしてその石にモンスターの散骨から魔力を吸収していく。

ちゃくちゃくと準備を進めていく。


さらに、魔術も強力なものが必要だった。高価な魔術の杖を買ってしまえばお終いなのだが、

生活以外にお金をかけたくないので、武器にお金をかけたくなかった。

衣食住以外にお金を使用できる余裕は、もはや存在しなかった。そのため魔術の学校も

職業訓練高のような学校を選択した。ここは公的な学校であり年齢が比較的高い生徒たちが、

学びに来る学校だった。シャドーハートは、魔術を学ぶためにここに入学する。

「おい、シャドーハート」

「おい、シャドーハート」シャドーハートは、肩を揺すられ目を覚ます。

「あ、寝てたか……」

「寝てたかじゃねえよ。お前全く課題ができてないじゃん」シャドーハートは、魔術書を

読んでいるうちに眠っていた。

「俺さ、魔術書を読むのが大嫌いなんだよ。眠くなっちゃって……」

「いや、魔術書読まずに魔法を使うなんて無茶だろう」

「いやでもさ、俺魔術使うのは、好きなんだけどさ魔術書読むのは、大嫌いなんだよね

魔術は、大好きなんだよね。剣術や体術と違って体を痛めないじゃん」

異世界でも、剣術や体術も肉体労働のようなポジションにあり、逆に魔術は、デスクワークの

ような立ち位置にあった。


「お前、これじゃ落第だぞ……」帰ってきたペーパーテストの結果を見て隣の同級生が

いう。シャドーハートの点数は、二点。

「俺、数字や計算が苦手でな……」特に計算魔術の点数が低かった。魔術の世界では、

数学のできる人ほど出世すると言われており、魔術の力も基本的には、数学の能力と比例すると

言われていた。


「お! シャドーハート! こんなとことで珍しい!」図書館で魔術を漁っていた。

シャドーハートを見た同級生が珍しがっって声をかける。

「ああ」

「お前が、魔術書を読むなんて熱でもあるのか?」当然馬鹿にされる。

「ちょっと趣味で」

「趣味って、ちょっと何読んでいるだよ……って……」

「おい、辞めろって」同級生は、無理やりシャドーハートの読んでいる魔術書を見ようとしてくる。

「これって……古書? 正気かよ(笑)お前こんなの読んでどうするんだよ。

なんの役にも立たないぞ」



古書は、いわば現実社会では、哲学や純文学的な扱いをされており異世界では、全く役に立たないと

思われていた。

「それが、不思議と古書は理解できるんだよな」

「嘘つけ! それよりお前計算魔術で赤点補習確定だぞ。廊下に補習教室の情報書かれていたから

遅れるなよ」

「ああ」


「補習ってなんですか?」

「俺、魔法学のできが悪いから勉強し直さないといけなんだよ」

「そうなんですね……私も助けられればいいのですが……この世界からでられないので」

「いや……いいよ」


「おい! お前さっきから何と話してるんだ?」シャドーハートは、文字通り本と話していた。

「いや、見えない?」

「は?」シャドーハートの話し相手は同級生には見えていなかった。

「そうか……アルトには見えていないんだ……」

「何いやってるんだ?」

「いや、ちょっとでも勉強しようかなって」

「変なことやらずにちゃんと勉強しろ」同級生は、さっていく。


「私とまともに会話できる人を見つけたのは1000年ぶりですがらね無理もないです」

「1000年もさびしくなかったのか?」

「いいいえ、私には妹がいるので退屈はしませよ」シャドーハートは、魔術書を読むことはできなったが

古書とよばれる古典とは対話することができた。これは、シャドーハートが生まれ持った能力だった。

古書に住み着く精霊は、膨大な魔術の知識を保有していていた。


実技試験が、始まる。

「シャドーハート、補習大丈夫だった?」アルトが話しかけてくる。

「いや、寝ちゃった」

「おいおい、まじかよ……お前まじでなにかの病気じゃないのか?」

「やっぱりそうかな……」シャドーハート自身も思い悩むぐらいに魔術書が読めない、文字を

読むとすぐに眠くなるし一行も内容が頭に入ってこない。

「で、お前何しに来たんだ?」

「何って試験だよ」

「いや、お前補習受かってない時点でどうやっても卒業なんてできないだろ。諦めろよ」

「まあそうなんだけどせっかくだから実技試験もやってみたいなって思って」

実技試験は、シンプルで攻撃と防御の二項目。敵から攻撃を回避しそして攻撃を行い教官の

召喚したモンスターを撃破するれば終了となる。生徒たちが、課題を次々とクリアしていく。

召喚されたモンスターは、超強力なモンスターというわけではなかったのでみな対して苦戦しなかった。

「次、シャドーハート」

「はい」

「……」

「どうした?」教官が、モンスターの召喚を担当していた教官に尋ねる。少し召喚に手こずっていた。

「あれ? おっかしいな……」教官は、必死に召喚用の魔法陣を組んでいたが、いつまでたっても

モンスターが、召喚されない。


「おい、一体なにしたんだよ」シャドーハートが、古書の精霊に尋ねる。

「ようは、モンスターがいなければ課題クリアでしょ」

「は? どういうことだ?」

「召喚させなければ防御も攻撃も必要なよね」

「召喚封じたのか?」

「そうよ」


「シャドーハートすまんな後日に延期だ」古書の精霊は、教官たちにも見ていないようだった。



教官たちには、魔法ではなく。トラブルとして処理されてしまった。

「シャドーハート、就職どうするんだ?」ここは、ゲンジツ世界で言えば、職業訓練高に当たる場所

それ故に、卒業すれば就職することになる。というか、就職さえすれば卒業したということになる。

つまりあまり成績とは関係ないのだ。もちろん異世界にも東大や早慶に該当するような名門校も

存在したが、そのほとんどは、灰課金の転生者とそれに協力する現地人の巣窟と化していた。

そのためもともと異世界いた住人は、押し出されるように



無名の学校に進学するしかなかった。

「就職は、まあ無理だろうな。ソロでやっていこうと思っているよ」

「やっぱそうだよな。有名ギルドは全部課金勢と転生者で埋まってるしな……」

「王宮仕えは?」

※国家公務員

「無理に決まってるだろ。あんなところ転生者の巣窟じゃねえか」



「俺、ギルドを作ろうと思ってるんだ」

「は?」

「転生者殺しのギルドを作ろうかなって思って」

「正気か? 転生者殺しのギルドとか。めったに会わないぞ」

「そうだな。俺が聞いた話だと転生者が200万人でそのうち転生者殺し、狩りとしている

冒険者たちが、100人ぐらい」

「100人!? そりゃそうだよな。転生者に楯突くとかそんなバカなことするやつなんているわけないわな」

「どうだ? 第一号のメンバーとして入るか? 今なら速攻で幹部だぞ」

「御免被るよ」


言うまでもなく、シャドーハートの現在の目標は、アランだった。そのために今回学校に通ったのだった。

シャドーハートは、アランと戦うために魔導都市エルグラードに向かう。佐藤の紹介で街の情報屋

セラに会うことに成功する。

「シャドーハートね」

「はい、そうです」

「話は、聞いてるは。私は、セラみなは、私のことを観測者という」

「観測者?」

「まあその話はおいおい。乾杯」

「はあ、どうも」お姉さんの乾杯に乗っかる。

「ん? 飲まないの?」豪快に一杯飲んだセラとは対照的に飲もうとすらしないシャドーハートに声を

かける。

「いや……酒はちょっと……」

「あ。そうなのねごめんごめん。この街は初めて?」

「ええ」

「どう? この街」

「まあ、平和そうですね……」実際治安が悪そうな気配は微塵もなかった。

「そうね実際表面上は平和そのものよ。表面上はね。他に何も違和感はない?」

「違和感?……まあ、ちょっとおかしいですよね……」

「感がいいわね」

「髪と目が……」この街に入ってから通りかかる女性の髪と目の色がみなオレンジか青色なのだ。

そしてなによりも最大の違和感は……。

「だ・男性は……」この居酒屋に入るまで一人も男性と遭遇することがなかったのだ。

「さあ、ここでなぞなぞです。正解できればお姉さんから特別プレゼント♡

なぜ、この街には男性の姿がないのでしょうか?」

「特別プレゼントってまあ、それはさておき……全員戦争に駆り出されているとか……」




「ハハハ。あなたひょっとして転生者じゃないの?」

「え……」一瞬居酒屋の空気が変わったような気がした。転生者が異世界に激増して以来

もともと異世界にいた現地住民への人種差別が横行するようになり一部地域では、激しく

現地の異世界人が攻撃が受けるような事例が発生していた。現実世界で大航海時代にあった

現地住民への差別のようなことが発生していた。

「いや答えたくないなら無理に聞かないけど」

「いや、現地の人間です」

「やっぱりね……。男性は、全てアランに消されたは」

「は?」

「アランが全て消したのよ」

「は?」

「アランの能力は、死に戻り。記憶を残したまま何度でも生き返ることができるその能力を

使いこの国の男性は、全て消された」

「……」

「と、言いたいとことだけど、まだ存在するは……」

「まだ?」

「この言葉の意味は、いずれ分かるはいずれね」


「そうここは、アランが長年ループさせて作り上げた理想郷よ。そしてあなたがこの理想郷の

ゆいつのイレギュラー」

「ちなみにあなたは、そのループが見えているのですか?」

「ええ。だからあなたにこの話ができるの。残念ならこの店の子達も街の女子たちも誰一人

アランの死に戻りを知らないは」

「あなたは。一体何者?」

「そうね……この国における神の一人かな」

「神?!……そうですか」すぐにシャドーハートは、冷静になった。神、本来なら極めて希少な存在だが

転生者が大量に流入してからは、神など珍しい存在ではなくなってしまった。


「ノワルこの国をどう思う」

「素晴らしい国ですは」アランは、町中を視察に出ていた。周りは彼の護衛をしているメイド二人が

付いていた。

「そう思うか」

「アラン様!」町人たちは、国の英雄、アランが通り過ぎると笑顔で手を振ってこたる。

街には笑顔が溢れておりみな幸せそうにしていた。治安も非常によかった。


「アラン様、隣国に不穏な動きが……」城に戻るとアランに部下が報告する。

「そうか分かったすぐに手をうとう」アランは、何度でもやり直しがきくので、全く焦っていなかった。

そもそも、何度も隣国との戦争をやり直しているので敗北するわけはなかった。

侵入ルートを完全に把握していた。あとは、侵入ルートに待ち伏せをし敵を殺せばいいだけだった。

当然、アランの国を脅かす国など出てこなかった。

「アラン様、まさか戦争をなさるおつもりですか?」メイドの片割れが驚く。

「アラン、人を殺すなんてことはこ国においてはあってはなりません」ノワルが冷静に呟く。

「ハハハなにを言ってるんだ平和の国エルグラードで戦争なんて起きるわけないだろ」

冷静にアランが答える。

「アラン様、目が怖かったから」

「アラン、あんまり妹を怖がらせないで」物騒な武器をチラつかせるノワルに説教をされる。

「あー怖い怖い」


「ここは?」セラは、アランの国エルグラードの外れまでシャドーハートを連れてきた。

「エルグラードの本当の姿が見える場所よ」その場所は、荒廃しており直ぐ側のエルグラードとは

似ても似つかない場所だった。

空を飛んでいたカラスのような生き物が突然白骨化してシャドーハートの足元に落ちる。

「な、なんだよこれ……お前幻術使いか……」

「違うわよ。私は、そんなことしないは」それだけではなく、至る所に骨が散乱していた。

「じゃあ一体ここは……」スケルトンもそこら中を彷徨っていた。

「ここは、2秒前にエルグラードと戦争をし、1秒前に国が存在しないことになったのよ」

「は?」



「アランは、時間を操ることができる。しかし、それは同時に大きな歪を空間に及ぼすこととなる

それが、この歪よ」眼の前に数分前まであった西洋ゴシック風の美しい街は、みるみるるうちに朽ち

果てていく。アランが、自分に都合のよいうに空間がいじればその代償をならんかの形で

払わなければならない。つまりアランがそのスキルを使用すればするたびに何処かの街、人が

朽ち果てて行くということだった。

「もう、この世界は、私達が自由に生きていける世界ではなくなったの。モンスターも

現実世界へ転生していっているの」異世界での競争の激化によりモンスターたちは、日本を

はじめ現実世界に脱走しはじめ、世界では大きな社会問題になっていた。

異世界で、転生者に服従するか、新天地を求めて現実世界へ逃げるか。シャドーハートにも

迷いはあった。

「あの娘は……」朽ち果てた街を眺めている女の子がいた。あたりには、スケルトンだらけに

も関わらず一人だけ浮いていた。ローブを深々と被っていた。

「気になるななら話しかけてみたら」セラは、彼女が誰なかをおそらく知っていた。

「いえ、いいです」話しかけたところで、アラン自体をどうこうできるわけなかったので

何も言わないことにした。

「アランのいる場所に案内してもらっていいですか?」

「ええ」


「アラン様今回も見事な勝利ですは」アランは、エルグラードを攻撃してきた敵国を見事に

退けることに成功した。メイドのリュミアがアランのことを褒め称える。

「いや、勝利なんて大げさだよ。今回もきっちり和平交渉がうまくいったよ。戦争ほど恐ろしい

ものはないからね」

「戦争になるんじゃないかと思ってハラハラしましたは」

「怖いこと言うなあ。戦争なんてこの国にはふさわしくないよ」

「アラン、お仕事よ」ノワルが冷静に告げる。

「全く人使いがあらいなぁ」

「お仕事してくださいよ」


和平交渉の調印式への出席への時間がせまっていた。

王宮の応接間には、両国の重鎮がみな顔を揃えていた。アランと隣国の王は、和平条約にサインをして

握手する。調印後、和平条約締結危険のパレードにアランは、メイド二人と参加することとなった。

「私達が、ここにいていいいの?」

「いいんだよ。二人は俺にとって大切な存在だがら」

「何かっこつけてるのよ」ノワルがツッコミを入れる。

「いいだろ」

「素敵ですは」リュミアは純粋に褒める。パレードでは、国民たちが総動員されみなから祝福される。


「パレードお疲れ様でした」パレード終えたアランとメイド二人は、王宮内の居住エリアに

戻って来る。

「いや、疲れたよ。でも二人に喜んでもらえたなら俺は、満足だよ……イタタ……」

「何かっこつけてるのよ」ノワルにアランは、ほっぺをつねられる。


「お見事でした」シャドーハートは、拍手しながらアランの前に現れる。

「どうしてここに……」アランは、シャドーハートがプライベート空間にあらわれて驚く。

「お邪魔します」セラも姿を表す。

「セラ!」

「知り合い?」メイド二人は、険しい表情になり物騒な武器を取り出す。

「いや、おそらくレゾナの残存勢力だ」レゾナは、和平条約を結んだ国の名前だった。

「また、時間を操作して俺を殺すか?」

「なんのことだ?」



アランは、転生者特有のノータイムチートスキルで、すぐに時空を歪め複数回の戦闘をやり直し。

シャドーハートを倒す。

「アラン!」メイド二人が血まみれになった武器と共にアランに駆け寄る。

「大丈夫だよ。ごめん。俺が弱いばかりに」

「いえ、いいのあなたのことは私が守るから」血まみれのメリケンサックをつけたリュミアが

アランのことを抱きしめる。

「アランまたかっこつけちゃって」ノワルは、涙を拭う。

「ごめんよ……」負傷したアランが力なく笑う。

「ほんとにこの世界には野蛮な人が多くいるから気をつけるのよアラン」

「ああ」荘厳な建築様式に美しい光が差し込む……。光が……!


「クソ! やられた!」そう今は、夜のハズだった。しかし、存在しないはずの日の光が。

「貴様! 転生者か!」眉間にシワを寄せ。そう現実世界の人間しか決してもたないあの醜い

表情をアランが浮かべる。俺のハーレムが愛が、権力が! 自由が! 誰にも!

誰にも邪魔されてたまるか! 絶対に絶対に俺! この世界で成功してやる!

もう俺は絶対にあんな世界に戻らない! 日本人としてわたくし自らの欲望がアランの表情を支配する。

そして、瞬時にあたりの時がとまりメイド二人は、動きを止める。


「パチパチ」シャドーハートは、拍手をする。血まみれのシャドーハートは、何事もなかったかのように

立ち上がる。

「ど、どうやって……天賦のスキル持ちか!」

「文字通り血塗られた平和、そして血塗られた偽りの愛実に素晴らしい」



「アラン下がっててここは、私たちに任せて!」メイド二人は、物騒な武器を取り出す。

「おい!」アランは、固まる今の状況は、なんとしてもこの二人には見せるわけにはいかなった。

すぐにスキルを発動してて二人の記憶から今の事態を消そうとする。やり直しをしようとする。

しかし、状況は、何も変わらない。

「馬鹿な……」

「ごめんさないね。この空間は、あなたたちのお仲間によって今ハッキングされていてね。

現実がそのまま現れちゃうのよ」その場に負傷した兵士たちが入ってくる。

「アラン? いったいこれは?」リュミアが負傷した兵士に疑問と恐怖を感じる。そう、

この国は、平和の国で戦争など一度も行ったことがないはずだった。

「お嬢様方それはあんまりですぜ。先程、虐殺を行った国の兵士に向かって言う言葉じゃありませんぜ」

「アラン?」メイド二人は、当然アランの方を向き説明を求める。

「違う、俺は知らないこいつらは……殺せ!」

「ノワルどうする?」

「プライベート空間への侵入者は、消すだけよ」

「そうだ、今すぐこの不届き者たちを消してくれ!」

「そうですか……では、この顔を見てもそれが言えますかな」兵士の一人がローブをとる。

「国王?」今日、和平条約を締結したはずの国王が目の前にいた。

「よかったです。どうやらそこまでは記憶をいじられていないようですな」


「ノワル! リュミア! 早く! そんな幻術に惑わされるな!」

「そうですかこの目を見てもそれが言えますかな」国王は、戦争でアランとの戦争で失った目を見せつける。

「ノワル! はやく!」アランは、構わず絶叫する。日本の異世界担当課の人間がハッキングを行っている

ためにアランのスキルは全く意味をなさなかった。

「うっ……!」兵士の一人が鮮血をあげながら倒れる。ノワルが斬り掛かっていた。

他の兵士たちも慌てて剣を抜く。

「ノワル! 分かってくれたんだな! これは全て幻覚だレゾナ王国とは、さっき条約を結んだ

ばかり騙されたらいけいない!」

「オガーが!」ノワルとリュミアは、その後も兵士に次々と斬り掛かっていく。戦闘力に大きな差が

ある兵士たちは、メイド二人の前になすすべなく殺害されていく。あたりには、切断された腕や

足が散らばる。

「さあ、侵入者よ! 今この場で幻覚を解けばすべて許してあげようしかし、私にファミリーに

をこれ以上貶めるようだったら容赦なくいかしてもらう」

「それは、こっちのセリフだ。今すぐこの馬鹿げたやり直しをやめれば許してやってもいい」

「何を偉そうに貴様のスキルは無効化か何かしならにがこっちに最強の二人がいるからな。もういい

話は終わりだ。ノワル! リュミア! やってしまえ!」

「野蛮なオーガーの二人にはやはり敵いませんな」

「オーガー?」リュミアが動きを止める。

「耳をかすな!」アランが絶叫する。部屋全体が全て鏡張りに変わる。鏡に写ったのは、二人の小柄の

男性と体長3メーターのオーガーだった。

「何これ……」リュミアが自分の姿を見て固まる。

「やめろおおおおおお!」

「ああああああああああ」自分の変わり果てた姿を見たリュミアが絶叫する。二人には、

自分たちが鬼であることは、伏せられていた。それもそのはず虐殺の記憶は、やり直しによって

全て消されたいたからだ。つまり二人は、自分たちのことをかわいいメイドと誤認識させられたまま

日々を過ごしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る