1222 仕事観の二択③ 48/52
「『会社が副業を積極的に推進したら、副業する? しない?』副業って他で金を稼げってことですよね? もうちょい休みが欲しいからしないかな」
「副業に投資も入るってことなら、もうしてるし、『する』になるな」
順調に資産が増えてる感じがデスネ。
戸惑う俺の顔色を気にするわけもない左右は好き好きに話す。
「興味があるけど投資先がどんな所か気になって踏み切れないのよね」
「オルカンやS&Pに投資すればいいじゃないですか」
「ものによって、海外ばっかりの投資になるんでしょ? 日本にも投資したいじゃない」
日本国民だ、と
白々しいわね、と全く傷ついていない顔で、白ワインを飲み始めた成瀬の頬はわずかに赤かった。そりゃ、あんだけちゃんぽんしてたらな。どんだけ酒豪だよ、鬼かよ。
「何か言った?」
「ゼンゼン」
にっこりと誤魔化したが、無理があったらしく、白々しい目は俺にも向いた。
こういう時は次の質問に移るに限る。
「『給料が高いけれど自分に向いておらずやりがいのない仕事、給料が低いけれど自分に向いていてやりがいのある仕事、どちらがいい?』向いてる向いてないはあると思うけど、向いてないから、やりがいがないってことはないような? いや、待てよ? これは給料の高い低いの問題か?」
俺の優柔不断な意見に、うろんげな目を向けられた。美人の無遠慮なの攻撃はマジで致死レベルなのでやめれ。
あんだよ、と問えば、これ見よがしにため息をつかれる。
「あなた、適応能力だけはすごいから」
ピンと来ない俺に成瀬は続ける。
「私が苦手な仕事でも、向いてる向いてないとか関係なしに、すんなりやってみせるから感心するのよ」
強引に流れを自分へ向ける仕事の鬼とは思えない発言だ。やっぱり、酔ってるな、コイツ。
お冷やでも頼むか、と言いかけた時、机に人数分のお冷やが置かれた。
目を丸くする面々の中で、当然のように桂木はグラスを手にする。
「センパイのはゴマすりというのでは」
「桂木くんが一番苦手なものね」
桂木の切りつけに冷たさはなく、成瀬が軽やかに返してくれた。
あれ、俺、誉められてる?
俺達の様子に小さく笑った五十嵐さんがしみじみと言葉をつむぐ。
「向いてる向いてないはあるけど、やりたいやりたくないで仕事はするもんじゃないよな」
「やりたくないことでも仕事ですからね」
頷く春日ちゃんがかっこよすぎるせいか、五十嵐さんは満点の笑顔だ。
「やりがいは自分で見つけてなんぼ」
「ちょっと誉められたら、また次も頑張ろうってなりますし」
感謝されたりね、ですね、と仲のいい上司と部下は楽しげだ。
未だかつてない、あたたかい雰囲気にこそばゆい気持ちになった。これはこれとして、答えはそんな感じでいいのではないだろうか。
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