1220 仕事観の二択① 44/52

 タイミングがいいというべきか、今一番聞きたい問いが来た。


「次は仕事観の質問みたいですね。ではでは――『転職するなら、暇すぎる仕事? 忙しすぎる仕事?』……今より忙しいのは嫌だなぁ」


 俺のぼやきに五十嵐いがらしさんも頷く。


「今より大きな仕事ができるなら、とも思うけど、忙しくて死にかけるのは勘弁だな」

「五十嵐さんはこれ以上働いたら、過労で倒れると思います」


 かなり真剣な顔と声のトーンで春日かすがちゃんは言った。五十嵐さんの仕事ぶりを間近で見ている分、彼の多忙さを肌で感じて案じているのだろう。

 いいなぁ、かわいい後輩に心配されて、と羨望の眼差しを向けていたら、その本人に期待を打ち砕かれる。


「私は仕事が忙しい方がいいかもしれません。早く仕事を覚えたいので」

「俺の後輩、きっちり仕事をしたいタイプなんで」


 五十嵐さんのフォローも苦しくなってきてないか? 実は仕事の鬼かな、春日ちゃん。


「今より暇とか腑抜けるから、忙しい方で」


 いや、俺の横にいたわ、仕事の鬼。

 今より忙しいとかと呆れ半分に笑った桂木かつらぎ、頬杖をつきながら答える。


「じゃあ、忙しい方で」

「なんだよ、じゃあ、て」

「後輩として、センパイに馬鹿にされたくないので」


 理由を聞いた俺は、一瞬思考が停止した。聞き間違えじゃないよな? わざとだよな、と自分の中で確認してから、違和感を口にする。


「それを言うなら、先輩・・として、後輩に・・・馬鹿にされたくない、じゃないか?」


 そういうのもありますね、とかわいくない後輩ははぐらかした。今までのように説明する気ないんだろう。

 いーよいーよ、次に行くからさ。


「えーと、『上司にするなら、穏やかだが仕事ができない人? 態度は厳しいが仕事ができる人?』俺、誉めてくれる人ならどっちでも」

「選択肢を増やすなって言ってませんでしたっけ」

「こういう時ばっかは、はえーな、桂木。しっかしなぁ、考えてみろよ。上司にも向き不向きの仕事があるわけだし、上司を選べる立場でもないだろ? 理由もなく頭ごなしに叱られるとかやってられねぇじゃん」


 俺の正直な意見に、肝に命じとこと五十嵐さんがウーロン茶のコップに向かって呟いた。


「いやいやいや、五十嵐さんは穏やかで仕事ができる人だから大丈夫ですよ。ほら、春日ちゃんも頷いてる」

「まぁ、理想はそうだけど、厳しくても仕事ができる上司の方がいいかな。やり方を盗めるし、立ち振舞いとか参考にしたいし」

「私もできる上司」


 五十嵐さんに続いて成瀬なるせも同調する。

 うへぇ、できる人達は違いますね。鋼の精神なんかな。


「厳しい方ができていない所をちゃんと指摘してくれそうですよね」


 やわらかい表情と声音に騙されそうになるが、春日ちゃんもナイスタフと見た。


「できない上司なら、踏み台にすればいいんですよ」


 桂木、てめぇが一番こぇーよ。

 たまたま湧いた歓声で、皆には聞こえなかったみたいだけど、隣の俺はばっちり聞こえたからな?

 皆に便乗して聞こえなかったふりしたけど!



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