リトルビッチ・リターンズ
あらかも@IRIAM配信者
第1話
◇
これはどこにでも居る女子高生たちの青春を満喫するおはなし。
今か今かと待ちわびた終業のチャイムが鳴り響き、クラス委員の号令は倍速再生。
先生の制止も教室に漂う空気感でまったく意味をなさず、放課後になれば退屈な授業よさらば。
日課から解放された生徒たちは、さながら人民の軍勢のように我先にと教室を飛び出していく一方、教室に残ったものたちは後ろから銃を向ける督戦隊気取りなのだろうか?
「全くお前らは……気持ちはわかるけどさ、怪我したら元も子もないぜ?」
「イナ先生、保健室の美人な養護教諭はんがお目当てなんとちゃいますか?」
「男子からしたらご褒美なんだろうな。ああ、きっとこのあと保健室の前には、アリの行列が出来るぜ?」
「甘酸っぱい青春だな、ホウジョウ先生からしたらたまったもんじゃないけどな」
「せやな、ここに美人なうちらがおるっちゅうのに、うちの男子たち、ほんま見る目がありまへんな」
「ウィラ、美人だけど性格の悪いお前が怖いから逃げてるんじゃないのか?」
「ナギ、そらあんたも大概やろ?」
「「「HAHAHA!」」」
「って、イナ先生、あんたもなにわろうとんねん? うちらのどこが性格悪いか言うてみぃ?」
「ノイマン、コウサカ、先日印刷室のコピー機をぶっ壊した件についての始末書は書けたか? まだなら生徒指導室押さえておくぞ?」
「イナ先生、あ、あれな……別にうちらが悪いとちゃいますやん?」
「ああ、確かに最近調子が悪かったかもしれないな。それでノイマン、斜め45度でチョップしたんだよな?……おかしいな、あのコピー機、平成〇〇年製と記憶しているんだが、どう説明するつもりだ?」
「それはあれや、作っている人にまだ平成生まれはおらへんからな」
「なるほどね、コピー機の心は昭和と言いたいんだな。うん、それでトドメを刺したあと、コウサカはどうしたんだったっけ?」
「ああ、粗大ゴミ用シールを貼って、外に持っていったまでは覚えてる」
「うん、100kgぐらいはあるよな。コウサカ、よく1人で抱えて持っていったものだ」
「せやせや、ナギは力持ちやからな」
「これでも一応普通の女子高生なんだけどな」
「そうだな、ノイマンはチョップでコピー機を破壊して、コウサカはそれを1人で持ち運んだな。で、自称普通の女子高生のお前らはその後、俺に見つかって今日に至るわけだ……お前らのケツ拭き、大変だったんだぜ?」
「ほんますんません」
「悪かった、反省はしている」
「うん、それで反省文は?」
「イナ先生が生徒指導室を押さえてくれてめっちゃ助かりましたわ。クーラー使ってもええか?」
「もちろん音楽かけてもいいよな? ヘヴィメタルはまだ癌には効かないが、そのうち効くようになるらしいからさ……きっとあたしらの反省文の効率も上がるぜ」
「ここでは日常茶飯事やな」
「ああ、お前ら少しは反省しろよ!」
「「「HAHAHA!」」」
こうしてウィラ・フォン=ノイマンと香坂 凪沙(コウサカ ナギサ)は、担任の伊那 頼勝(イナ ヨリカツ)先生に生徒指導室まで連行され、彼の監視下で反省文を書いたのであった。
なお、翌日の職員会議にて、生徒指導室から爆音でヘヴィメタルが流れた件についての追及を受けたイナ先生は、「表現の自由、音楽性の違いまでもを否定するのは、健全な指導にあらず」とシラを切ったのであった――――。
◇
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