第53話 晩御飯を作ろう
その後もフリージアは何度か大量のオーガブルを引っ張って来ては爆破するのを繰り返し、ジェイドはその焼け焦げたオーガブルを安全地帯に運び込むので大忙しになった。アザレアはフリージアのフォローに徹しており、爆破でとどめを刺せなかったオーガブルをきっちりと処理していた。そのお陰で安全ではあったが、安全地帯にはオーガブルの山が出来た。
「これだけ狩って、取るのが核石と骨をちょっとばっかしってのももったいないッスねぇ」
全てのオーガブルから核石を採りだす役のジャクソンも大忙しである。
「うーん、でも血抜きどころか生きたまま爆破したオーガブルの肉って、美味しいだろうか……?」
「どうッスかね? つまんでみます?」
「私はそう言う魔獣の肉、持ち込まれたのを味見したことありますよ。やめておいた方がいいです」
その肉の味を思いだしたらしいトールが眉をひそめて忠告してくれた。
「やっぱダメか?」
「臭いがきつくて。香辛料まみれにすれば食べられるか? なんて言ってた商人も居ましたが。高い香辛料を使うくらいならまともに処理された魔獣買う方が安くつくんですよね」
「そりゃ駄目だ」
わいわい喋りながら処理を進めていると、フリージアとアザレアが戻ってきた。
「このくらいで大丈夫かしら?」
「十分です。ありがとうございます」
目的の物は手に入ったので、これ以上ダンジョンに籠る理由はない。このままダンジョンから撤退することになった。
ダンジョンから出ればジェイドは大忙しである。ジェイドが最初にやることをやらないと、先の作業が出来ない事案が多くある。クレイジーボアはジャクソンに託してロトスにソーセージを作ってもらうようにこと付け、まずはヤスリの制作を……と思ったところで夕食の準備もしなければならないことを思いだす。それに採集してきた食材もある程度仕訳けて食糧庫に仕舞わなくては。
「忙しいな……やることが多すぎる」
思わずため息が出る。ジェイドは好き好んで山奥に引っ込んで自給自足を目指し、しかもそれが途中で嫌になったりしないタイプだ。忙しない生活は得意ではない。
「ジェイド様、何かお手伝い出来ることはありますか?」
声を掛けられて振り返ると、マリーとトールがいた。
「手伝ってくれるのか?」
「当然じゃないですか。私たちに出来ることであれば、なんでも申しつけてください」
「じゃあ……今日採取してきた食材、仕分けと、保存方法を知ってたらそれに合わせた処理をして食糧庫に仕舞って貰えるか?」
品物に詳しい二人であれば、この作業は確実に任せられるので助かる。ジェイドの頼みに、二人とも嬉しそうに笑って頷いてくれた。
その作業を任せられるならば、夕食の準備にすぐに取りかかれる。色々食材は増えたが、メニューを増やすにはスープのだしを長時間煮込んだり、香草に付け込んだりと時間がかかる物が多い。今日はそこまで時間がないので、チキンを窯で焼いたグリルチキンを作ることにする。時間があれば小麦粉をこねた生地で包んでパイ包み焼もどきにしたかったが、そこまでの時間はない。
採取してきたキノコ類とニンニクを刻んでラードで炒め、塩コショウを振る。鶏肉は切り込みを入れて叩いて平らにし、炒めたキノコとニンニクを包んで窯に入れる。窯の温度を火魔法で調整して、規定時間焼き上げれば出来上がりだ。
本当は上にかけるソースも作りたかったが、このソースづくりも時間がかかる系の料理なので今日は無理である。
後は茹で卵を作ってみじん切りにし、茹でたブロッコリーとレタスのサラダの上に散らしてミモザサラダにすればサラダも完成だ。酢と塩と油でフレンチドレッシングを作れば、今日の夕食としては十分だろう。
「何か他にもお手伝いを、と思ったんですけど……ジェイド様、本当にお料理上手ですね」
マリーに声を掛けられて振り返ると、仕分けを終えたマリーとトールがジェイドの作業を眺めていた。
「こういうのは慣れだからね」
「そうなんですね」
何故慣れているのか、なんて余計なことをマリーもトールも詮索しない。その上でジェイドのやることを無条件で受け入れてくれるのだから、本当にこの二人については人に恵まれたなと思っている。
「マリーとトールは料理ってやったことあるか?」
「多分、ソニアよりかなりマシだと思います」
「比較対象が悪い」
ジェイドが笑えばマリーもトールも笑った。
「行商をやっていたころは、道中で野宿することもあったんです。そういう時は料理の手伝いをしていたので、野菜の皮はむけますよ」
「そうなのか!? だったら最初からソニアに頼まないでマリー達に頼めばよかったな」
むしろソニアには、キッチンを荒らされただけだ。
「これからもお料理されるなら遠慮なく声を掛けてくださいね。もうちょっと色々やれますから」
にっこりと笑ったマリーにジェイドも頷く。
「ありがとう。今からチキンを切り分けて皿に盛るから、配膳の方頼めるか?」
「はい」
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