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――ねぇ瑠衣たん、これどう思う?

――素朴な疑問なんだけど、これの色違いはない?

彼奴の会話の特徴。まず第一に結論から話さない。一番確信に近い部分をはぐらかし、輪郭でもなぞるように、中心へと進んでいく。

そしてそんなに会話が多くなるにつれ思うのは、『時間の無駄だ』である。


「ねぇ、瑠衣たん。これ、どう思う?」

渡されたのはコンパクトミラーが二つ。メタル調の、同じ装飾が施されたもの。女性が好みそうなガーリーなデザインであった。

意図が読めず俺は鏡花の顔を見る。恐らく冷めた目をしている。気怠げな目をしている。

「何が言いたい」

「あーほら、何か違いはあるかなーって」

そう言われ、また見詰め直す。強いて言うならば色が違う。ピンクゴールドとシャンパンゴールド。だが確実性を持って別の色だと断言する事は出来ないので、思わず口篭る。

色……色ねぇ……色。あれは人によって異なる……。

「……そんな深く考えなくてもさぁ。……色……とか」

「色は違うだろ。ピンクゴールドとシャンパンゴールド」

結局誘導される様な形で言うことになったが、この長々とした問答の前半部分、あまり有意義とは言えない部分、其れに対して非常に萎えてしまった。

「お前、最初から『色違いじゃない?』と言えば済むだろ」

「そしたら誘導してるし、意図が見えた人間が何か仕掛けて来るかも知れないじゃん」

顔を見上げる。訝しげな俺の視線に反し、何時は何故そんな事を聞くのかとぽかんとしていた。しかし此処である結論が出た。

「お前、結論から話し始めないのは、其れが原因か?」

彼奴は人懐っこい外面をしているが、人に対しては懐疑的なところがある。つまり信用してないのだ。バイアス、先入観、誘導尋問、意図、其れらをなるべく排した状態で、議題に持っていきたがる。其れは何も人間だけでなく、AIに対しても。

この間見せられたAIとの会話画面でも、決して結論から話さず、関係の無いところから出発点としている。

「だって逃げられちゃうじゃん? 人って怖いのよ。私が結論を話した途端、耳を貸さない人もいる。だから言質を取りながら駒を進めるの」

伊達にAIを言いくるめないな。

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