【カクヨムコン11連載版】この夏、僕たちは「こい」という字をまだ知らない ~無自覚白豚王子はサバサバ系狼女子をとことん幸せにしちゃいます~
第19話 安芸白兎の〝れでぃお体操〟は特典も素晴らしいんだぴょん🐰
第19話 安芸白兎の〝れでぃお体操〟は特典も素晴らしいんだぴょん🐰
『今日の体操はこれでお終い。安芸市の美味しいものを食べて、この夏を乗り切りましょう! 皆さん、お元気でぴょん』
「「「「「「「「「「ぴょん!」」」」」」」」」
会場より見事なご唱和、そこでコール&レスッポンス。みなさん、ありがとうございます。僕はめちゃくちゃ恥ずかしい。
――兎。安芸白兎だから、兎をイメージした語尾があっても良いのでは? だったら、やっぱり「ぴょん」じゃない?
唐突な提案をしてくれたのは理彩さん。そんな提案を受けたら我らが豪腕プロデューサー(敏腕プロデューサーの誤字にあらず)の新汰さんですよ。理彩さんが、そんあことを言い出したら、力尽くで企画を通すに決まってる。安芸白兎誕生時を思い出す、誠に心が暖まるエピソードである。
かくしてラジオ体操会場が盛大な「ぴょん」が谺。これを新汰は許可済みで撮影するのだから恐れいる。君、昨日まで熱を出していた人だよね?
「折角だし、ラジオ体操のスタンプ押してもらおうぜ」
「えぇ、僕らも?」
運営側が押してもらうのは、どうなんだろう?
安芸白兎の〝れでぃお体操〟
こちら行政とのタイアップで、高齢者の皆さん向けには〝高齢者はつらつポイント〟対象事業。こういう地域での活動、健康教室、ボランティア活動に参加すると、ポイントを付与。奨励金や交通費に換金できるという仕組みなのだ。つまり、安芸白兎の〝れでぃお体操〟に参加したらポイントが貯まる。
さらに、小学生までを対象にフードバンク・パクパクモグモグがお菓子を寄付。これはパッケージが変ったりと言った理由で店頭に出せなくなった商品を、無償で受け取り、福祉施設へ寄付するフードバンク事業とのタイアップで実現。こちらには母さんの会社「white Pic」の協力により実現。
そして安芸白兎が取材した安芸市内の飲食点で使える、割引クーポン。安芸白兎クーポン。略してハクポンをラジオ体操に参加した頻度に応じて、配布するのだ。
……誰だよ、こんなバカなこと考えたの。はい、僕と安芸市商工会青年部の皆さんですね。サンキュー。
そんなこんなで、何故か各町内会で大盛り上がりを見せていたのだった。
「一応、市長のオッサンからも言質を取ってるぜ」
新汰、言い方が酷いよ。
「まぁ、でも、そうだよね。高天原君も折角来たし、スタンプ欲しかったよね」
幸い、僕は運営側。スタンプカードの予備は持ち合わせているのだ。
「……なに、言ってるの?」
何故か、呆れた顔をされる。運営側でスタンプを押しに来た新汰には言われたくない。
「そういうとこだぞ、白都」
「なにが?」
僕がそう聞くと、新汰は盛大にため息をつく。なおさら、ワケが分からない。
「どうして、人の悪意にここまで鈍感なんだかねぇ」
自分の金髪を掻き上げて言う。あれ、僕ってば呆れられてる? 呆れたいのは雨で熱を出した君の方ですけど!
「お前、忙しいだろ。台紙は俺もあるから、渡しておくって」
「……へ?」
僕は目をパチクリさせる。忙しいのは、これからバイトをする君の方なんじゃ――。
「落とし前もつけないとだしな」
「なんか不穏な言い方に聞こえるんだけど――」
「不穏なのは、あっちの姫さんじゃなくて?」
「へ?」
視線を向ければ、何故か不満そうに頬を膨らませる舞夏。そして全力疾走でアタックしようとする鳴ちゃん。あのオデコには要注意。天使の鐘を慣らすデコなのだ。(前話参照)
そして、明比ちゃんが、僕のシャツの裾を――。
「「え?」」
「お姉ちゃん、はやく早くっ」
ぶんぶん、明比ちゃんが手を振る。さも、僕の隣は舞夏だと指名するかのように。
「白都お兄ちゃんは、すぐフラフラ迷子になっちゃうから。だから、お姉ちゃんが気にかけてあげないと、なんだよね?」
「それはだから、ナイショだって――」
ん? 幼い頃は確かに迷子になることがあったけど。チビちゃんに誘導されたこともあったけれど。それも今は昔。白豚の翁というものありけり――じゃなかった。えっと? 舞夏がどうして僕の手を握っているんでしょうか?
「だって、ハク。すぐに迷子になるでしょ?」
開き直ったかのように、舞夏がワルい笑顔を浮かべる。
あれ?
舞夏、僕が方向音痴なの、承知済み? もしかして新汰からの密告?!
「俺は何も言ってねぇからな」
「……ぼ、僕も何も言ってないじゃん」
見透かしたように言葉でピッチャー返しをするの止めて?
「後で、たくさん遊んでもらうから大丈夫。だって、明比は良い子だもん」
にっこり笑う。その笑顔に僕は弱い。
「うん、明比ちゃんは良い子。というか、それより素敵な子って言葉の方が合っているかな」
僕の一言に、明比ちゃんが目を丸くする。
「そういうとこだよ。お
新汰と一緒に、舞夏までため息をつくのどうして?
と――。
明比ちゃんが、目を潤ませたように見えた。
その双眸から、雫がこぼれ落ちそうになって。慌てて、ゴシゴシと拭う。それから、僕に抱きついてくる。
「お兄ちゃん、大好き」
ぎゅっとしがみつかれて――。
「スタンプ押すから、さくっと前に進んでね」
子ども会のお母さんに注意を受けた僕らだった。
■■■
すとん。
シュッ。
パン。
リズミカルに音が続く。
音哉君が、ボールを投げる。僕が受け止める。ただ、その繰り返しのキャッチボール。昨日の約束だ。いつか、キャッチボールしようね、って。いつかなんて言われたら、イツやるの。今でしょ! それがスタンスの僕だ。即実行と、相成った。
うん。僕が小学校時代に使っていたグローブ。よく似合っています。
見れば、舞夏と明比ちゃん、そして鳴ちゃんはゴムボールでキャッチボール――できずに、転がしゲームと相成った。取れなくてキャッキャ笑う。投げてキャッキャ笑う、そんなお年頃。こちらもボールを持ってきて良かった。僕のリュックは、某お手伝いロボットの四次元ポケットではとよく言われる。本当に四次元だったら、お菓子詰め放題。それはそれで、夢がある。
「……みんな帰っても良かったんだよ? お腹空いたんじゃない?」
音哉君が申し訳なさそうに言う。ありゃ、そうだったのか。ラジオ体操に出るために、前倒しで動いてくれたんだね。でも、今あるのはスナック菓子の【うめぇ棒】ぐらいなんだけど――。
「「「「「砕けたお菓子はいらないからね(な)」」」」」
「ごめん、みんな。あとちょっとだけ――」
「良いけど。俺もやりたいな」
そう言ったのは孔君だった。
「孔って、インドア派のイメージだったけど?」
「白兎たそとのキャッチボールだよ? やるに決まってるじゃん。こんなのプレミアムだよ」
「モロ、バレバレじゃんか」
新汰が頭を抱えているが、はて? 新汰、やっぱり病み上がりでキツいんだろうか。
「……まぁ、良いや。白都だし。それより、お前ら。俺ともキャッチボールするか?」
新汰が目配せする。確か二って思う。新汰は中学まで野球経験者。正直、僕よりも新汰が適役だ。
「ばーか。ローテーションだよ。でないと、姫さんが拗ねるじゃんか」
ニッと笑って新汰が向けた視線の先は――。
舞夏が少し不満そうに。でも、僕と目が合った瞬間、弾けるような笑顔を見せる。
すとん。
シュッ。
パン。
リズミカルな音が響く。
汗が頬を伝う。
もう、すでにジリジリと太陽が僕らを灼きつけて。
でも、あと少しだけ。
やけに、なんだか懐かしくて。
僕と舞夏のキャッチボール。あと、もう少しだけ――。
■■■
「そりゃ、妬くよな。
新汰の苦笑。そして美味く聞き取れなかった、その呟きは、明比ちゃんと鳴ちゃんの笑い声にかき消されたのだった。
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