【二人は旅の途中、世界の交わり】
「ねぇリア、この手記…、どう思う?日記みたいだけど…。」
「……この廃墟に夢創造人がいたって話は本当なんだろうな。それにしても十年ちょっとでここまでボロくなるか?」
「そうかな、私は綺麗だと思うけど。あのステンドグラスも。」
「あの機械人形、…。それにこの日記…。」
「この男の人は夢をみていたみたいだね。」
「短い夢だよ。……悪夢が訪れる前の束の間の幸せに近いんだと思う。…だって、明らかにこの日記の二人は異常だ。能力も…歴代の夢創造人からかけ離れてる。」
「でも、昔のことは私たちには知る由もない。」
「ああ、俺たちには関係ないことだ。」
「ただこの人たちも私たちと同じように平穏に暮らしたいだけなんだよ。…夢創造人か。夢なんか、そんな特別なもんじゃないよ?蓄積した記憶の整理のために見る只の体のメカニズムだもん。」
「……誰しも自分が経験しないことを特別視したがるものだ。」
「そっか。リアも、お姉さんのこと特別に思う?」
「…記憶にないものは答えようもないよ。会えたら、いいなとは思うけど。」
その日、寂れた植物の這った館に二人の子供が訪れた。そして、光が差し込む図書館、日記を閉じて周りの埃を払って元あった本棚の奥深くに戻した。その日記帳は適当に〇七二八と番号を入れたら開いてしまった物だった。二つの栞が大切に挟んである。
図書館を後にした二人が通った廊下に隣接する部屋の中では、開いた窓から吹き込む風に壁にかけられたカレンダーが揺れた。それには消えかかったインクで外暦八十一年六月一日と刻まれている。
二人は同じ白い髪を揺らして歩いている。手入れされることになくなった畑で一輪だけ残った紫のスターチスは、二人をずっと眺めている。
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