こんにちは、僕は分身です

J.D

ep.1 君は選ばれた

ヒトゲノム計画から約20年の現在は2025年。

遺伝子工学の技術も、研究がなされてきた。

中国などでは、既にデザイナーベイビーの実験が行われ、社会的な議論がなされたことなどもあった。

そして、我が国でも秘密裏に、人間のさらなる可能性を見出すための実験が行われていた。


* * * * * * * * * * * * * * * * * * * 


「私が、被検体?」

ある日、突如として黒服の男の人たちが、私の家に押しかけてきて、

「あなたには今日から、我が国のさらなる発展のための被検体となってもらいます」

と言ってきた。・・・・何いってんだこの人たち?

言われた話はこうだ。

この人たちは政府のお役人で、授業などでやった、所謂クローン技術やデザイナーベイビーの開発のための被検体を探していたらしい。

「・・・いや、急に言われてもわかないですって・・・・まずなんで私が?」

「企業秘密、と言いたいところだが、まぁそうだね。一応お願いする立場だ。教えてあげよう。お父さん・・・最近経営が悪化されているんでしょ?私たちはそういう、経済的に困難な状況に陥った家庭の中で、特に信頼に足る人物をリストアップし、その中からさらに厳選して選んでいるんだ」

・・・父の運営する中小企業が、経営悪化を辿っているということを言っているのだ。なるほど、流石よく調べてるんだね。悪どい人たちだ。

「お父さんとお母さんからの了承は得ているから、あとは君だけだよ」

「・・・ごめんなさい、なんだか怖くて」

「当然だ。急に来られてこんな話、意味がわからないだろう?けど考えてみて?クローンだよ?色々想像してみてほしい」

俗な口調(わざとだろう)でそんなことを言われ想像してみた・・・便利だなと。

「けど、それじゃあ私とそのクローンの区別つかないじゃないですか?」

「ああ、そこは大丈夫。クローンの内部にはチップを埋め込ませるから、何かあれば緊急停止させればいい」

「緊急停止って・・・」

「まぁ、そうだね。生命活動を限りなく低下させるから・・・少し違うけど、コールドスリープみたいな感じかな?」

・・・この人たち、頭おかしいんじゃないか?とんでもないことばっかり・・・でも、経営悪化・・・・そうか、私は便利な思いをして、お金も入るのか・・・。そして冷静に考えても見ろ?こんな倫理観のないことを平気でいう人たちだ。断る=用済みな私たちを、そのままにしておくか・・・?

「・・・分かりました、いいですよ」

すると、黒服の人は安心したような顔をした。恐ろしい笑顔だった。

「ありがとう、ご協力、感謝します・・・それと、これはこの家の人以外には内緒だよ?分かっているね?」

・・・言われずとも、ここまでの倫理観のなさから、それは了承済みだ。


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