003:敵機襲撃任務

 そんなわけでやってきたミロクちゃん。

 明らかに警戒しているようだが、武装の類は持ち込んでないようだ。

 俺は甲板に出て、彼女を迎えることにした。


「というわけで一応責任者のヤマト・タケモトだ」

「ふんっ、年端もいかない子供を前線に送り込んで、自分は高みの見物か」


 レッドキャップから出てきて、俺にくっついてるレイル。

 それを見て、やたらと憎々しげにせせら笑うミロクちゃんであった。

 まぁ、それを言われると立つ瀬がないんだが……。


「ああ、俺は血も涙もない小悪党だからな。だからこそ忠告してやる。ギャングに恨みを買っているぞ、おまえら。俺達が帰っても、今度は更に量を増やして刺客がやってくるはずだ」

「もちろん懸念はしていた。ろくでもない”商品”を詰め込んだ船を襲撃してからな」


 現状を把握できているようで、大変よろしい。

 あとはこっちの言う通り、シェルターに移動してくれるかだが……。


「で、シェルターへの移動はどうするんだ?」

「どのみち遺跡では冬は越せない。案内しろ。氷上船なら多少はある。スクラップ同然だがな」


 まぁ、破壊してましたもんね……。

 冬は吹雪などで視界不良を起こす。そのため、夏場のように輸送する者は著しく減るし、寒波などが来ればシェルター内に籠もらないと耐えきれない寒さになる。


 食料・環境、どちらにおいても厳しくなるということだ。

 街中のように巨大なジェネレーターがあるのなら話は別だが……。


「わかった。シェルターに案内しよう。ギャングどもには俺が上手いこと言っておくよ」

「チッ、本来ならそんな奴らぶっ潰してやりたいところだがな」


 血の気の多い女だな……。

 流石にゲームの登場人物ネームドではなかったはずだけど。

 いや、同じように番号で呼ばれるキャラもいたけどね?


 戦場で生まれた子供は、大体そういう扱いをされるそうだ。

 幼少期から戦っていたのだとしたら、この年齢で隊長の真似事をしているのも頷ける。


「では一旦、遺跡に戻ろうぜ」


 ……といったところでドローンが何かを感知した音を出した。こういう風に極めて原始的なAIなら稼働するんだが、対応まではできないのが虚しいところだな。


 ええっと、襲撃ポイントに置いていたドローンか。どれどれ……。

 俺はウィンドウを開いて、カメラを確認する。


 そこには何機かの空き缶ロボ、複数のタコさんウインナーロボ。

 そして空き缶ロボのふたまわりほど大きい長方形のロボがいた。ライトグリーンで、なかなかに目立つ。装甲が厚そうだからああやって敵のヘイトを買う役目をしているのかな。


 ……肩には企業”パシフィック”のエンブレム。

 あいつらまで調査しているとはな。

 ウィンドウを共有してたイーリエが、ヴァルチャーの内部から通信してきた。


『パシフィックなら会話できるんじゃないっすか?』

「だといいがな……」


 襲撃ポイントをわざわざ調べているということは、どう考えてもこいつらに用事があるということだ。おそらく企業の氷上船まで襲ったのだろう。向こうの社長令嬢と知り合いって言ったって、厄介なことになりかねない。さて……どうするか。


「あいつらにバレないように避難を済ませるしかないな」

「でも、もう痕跡を見つけたみたいだよ。遺跡に向かってる」


 俺のウィンドウを見て、レイルが言う(共有モードなので見れる)。

 その言葉を聞いて、ミロクちゃんが急いでロボに戻った。


「チッ……」

「どうするつもりだ?」

「決まっている。奴らを殲滅する。邪魔立てしてくれるな」


 なかなか難しいと思うが……、とはいえこっちは表立って敵対したくない。

 仕方ない。作戦を立てるか。

 俺はヴァルチャーに向かって、そのコックピットの蓋に手をかけた。


「ちょ、ちょっと!? なんすか!?」

「俺がヴァルチャーに乗ってひっそり狙撃する。イーリエとレイルはその間、氷上船で皆を避難させてくれ」

「またぁ!?」


 専用機が奪われることへの「またぁ!?」らしい。

 しかし狙撃に自信がないようで、結局は代わってくれた。


 ヴァルチャー………完璧な状態ではまだ扱っていないが、狙撃ポイントまで飛ぶだけだ。

 いけるか……!?


「ええ!? ボク、戦わないの!?」

「レッドキャップが敵対してると思われるとまずいからな」

「彼らのロボ借りてこようか?」

「調整してないロボなんて乗るもんじゃないぞ……」


 一応、それレイル向けに改造してあるんだからな。

 渋々と言った様子で二人とも承諾してくれたため、急いで敵地へと向かうことに。

 遺跡へと近づいていると言っても、痕跡を探りつつだ。普通に間に合いそうだな。


「よし……」


 木々に登って、狙撃の準備を済ませる。

 ミロクちゃんはどう動くのかと確認していると、ワイヤーで枝を掴み、そのまま飛翔した。

 まるでニューヨークのご当地ヒーローだな……。


 動画で突然現れたように見えたのは、ワイヤーではるか上空から直角に降りてきたからか。

 たしかにあれならブースターも効かせずに済む。隠密性は高いだろう。


 次の瞬間、長方形ロボに付き従っている一機にワイヤーが飛ぶ。

 至近距離までミロクちゃんのロボ(ネイキッドとでも呼んでおくか?)が飛んできたかと思うと、ショットガンで撃たれてそのまま破壊された。


『うわっ!?』

『こ、こいつ!! ”魔女”か!?』


 さらに二機、矢継早にショットガンで撃ち倒したかと思うと――。

 次の瞬間には上の枝木にワイヤーを伸ばし、その場を離脱した。

 流石に速い。あの速度で縦横無尽に動いているのなら、突然現れたように見えるはずだ。


『き、消えた!?』

『狼狽えてはいけません。何らかのトリックがあるはずです』


 落ち着いた中年男性の声。おそらく長方形ロボから流れている通信だ。

 秘匿通信じゃないのは余裕があるからか、周囲に聞かせるためか……。


『し、しかしこのままだと全滅いたします!!』

『大丈夫です。吾輩”は”死にませんから』

『は!!??』


 再び、ミロクちゃんが近寄ってショットガンを放つ。

 今度はでかい口を叩いた長方形ロボに――だ。


 しかし、ショットガンの弾はほとんど装甲が弾いてしまった。

 そのまま旋回しつつ二発、三発と撃ち込むが到底致命傷にはいたらない。

 あの長方形ロボ……硬い!!


 だが、僚機が軒並み破壊されれば撤退せざるを得ないんじゃないか? 

 俺はカメラを接近させ、周辺の空き缶ロボを狙撃した。


 一機、二機、意図がわかったのか三機目を倒す前に、ネイキッドのショットガンで破壊された。

 さてこれで僚機はないぞ。どうする?


『チッ、一度撤退しますか……』


 長方形ロボがブースターを吹かし、若干遅めにその場から離脱する。

 あのロボ、パイルバンカーぐらいじゃないとダメージを負わせられないだろうな……。

 パルス系の装備でも突破できるか? 試してみないとわからないけど。


 まぁ、今のところは撤退したっぽいしいいとしよう。


『………………礼を言う』


 ミロクちゃんからの通信。お礼を言える子だったのか。

 てっきり、そういう事ができないツンデレちゃんだと思っていたぜ。


「気にすんな。それより戻って来る前に撤退しよう」


 そう言って、俺達は遺跡へと戻った。

 既に氷上船へと避難民達が乗り込んでいる。それほど数は多くないみたいだな。

 百……いや五十にも満たないだろう。


『隊長、準備できました!!』

『よし、移動しよう。おい、おまえ。移動ポイントのMAPをよこせ』

「ヤマトな」

『…………ヤマト、MAPをよこせ!』

「へぇへぇ」


 覚えている箇所にピン留めしたMAPをウィンドウで共有する。

 移動経路もそれほど変じゃないはずだ。


 遺跡を調べたい、が……それはドローンに任せておくとしよう。

 自動お掃除ロボ程度の性能はあるからな、こいつら。


『ふむ、では襲われないよう警戒しながら進むぞ!』


 二隻の氷上船、六機の空き缶ロボ。

 そこそこに大所帯になったまま、俺達は彼らの新天地に向けて出発した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る