謎を解く話なのですが、読んでいると「人間というもののほうが、謎よりずっと面倒なのでは?」と思えてきます。
特に気になるのが汐入悠希さんです。違和感を見つけると放っておけず、ずんずん進んでしまう。その後ろを能見くんが「ちょっと待ってよ」という気配で追いかけていく。この二人の距離感が、探偵と助手とも、恋愛とも、単なる友達とも少し違っていて面白いです。腐れ縁とは、人間関係の永久機関なのかもしれません(笑)。
しかも高校時代と現在を行き来するので、昔はただの騒動だった出来事が、大人になった彼らの関係へ静かにつながっている感じもあります。怪談や盗難、ちょっと変わった仲間たちまで登場しますが、怖すぎず堅すぎず、どこか放課後の雑談を聞いているような読み心地。
謎解きだけでなく、「この人たちの次の寄り道を見たい」と思わせてくれる連作短編です。
本作のワトソン役は地元に戻ってまちづくりコンサルを営みはじめた若者、能見。ホームズ役は同じく地元で父親の探偵事務所の跡を継いだ私立探偵、汐入。この二人を軸に、地元の顔馴染みたちが絡んで謎解きをしていくマチナカ探偵物語ともいうべき作品です。
汐入の最初の印象は、名探偵にありがちな高機能社会不適合者かなと思ったのですが、頭の回転が速いリケジョだからそう思っただけで、人情にも篤い、粋なお姐さんでした。まず彼女がとても魅力的です。
物語は一話六千字くらいの短編集ですが、理系知識全開の謎解き、人間心理の盲点をついたトリック、依頼人たちの思惑のすれ違いなど、さまざまな切り口で展開され、飽きさせません。作者様の言うとおり、どこから読んでも大丈夫な設計。気になったタイトルのお話から、まずは読んでみてください。