if ~もしも、東京に10メートルを越える雪が降ったなら~

雷風船

第一部 ゆき ~もしも、史上最大の降雪が東京を襲ったら……~

第0話 プロローグ

※本日は、6話(0話~5話まで)投稿します

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 皆さんは世界で、一番雪が降った場所をご存じでしょうか?


 シベリア?、アラスカ?、それとも南極?…………いいえ、積雪量の世界記録は1927年2月14日、滋賀県の伊吹山で観測された11.82メートルです。この記録はギネス世界記録にも認定されています。

 ちなみに、日本国内の二番目の記録は、2013年2月26日、今では毎年冬に必ずと言って良いほど名前を聞く、青森県の酢ケ湯で観測された5.66メートルです。その差は倍以上。


 もっとも、これらは「観測記録」です。積雪が多い高所での観測を、世界中全ての地点で行われているわけではありません。あくまで、人が到達できる場所に限定されています。もしかすると、観測がされない未開の地で、これ以上の積雪が記録されていたことがあるかもしれません。

 それでも、伊吹山の記録は、人が足を踏み入れることが可能な地点での観測として、もっとも最高の記録が打ち立てられたことは確かです。


 なぜ当時の伊吹山で、類例をみない積雪が観測されたのか、その理由は戦前の出来事でもあるためか残されてはいません。

 単なる冬の気圧配置がもたらした光景だったのかもしれません。あるいは、「雪女」が突如現れたのかも…………


 人々に残されたのが、数字だけであることは確かなようです。


 最近は温暖化の影響もあってか、全国的な積雪量は、減少の傾向が見られます。

 記録を残した伊吹山は、今は観測所が残されておらず、最近の正式な積雪量の記録はありませんが、2025年の4月には、8合目付近で5メートルの積雪を除雪する作業の様子がニュースで取り上げられていました。


 果たして、これからの時代、積雪による危機は訪れないのでしょうか?


 ちなみに、一日の積雪量の世界記録は、これも日本の新潟県妙高市・旧関山駅で1946年1月17日に観測された2.1メートルです。


 さらに、世界の気候に関する情報を発信しているアメリカの「AccuWeather」というメディア企業が調査した結果によると、人口10万人以上の都市の年間平均降雪量は、その第一位から第三位までが、日本の都市で占められています。

 第一は、青森市で7.92メートル、第二位は札幌市で4.85メートル、第三位が富山市で3.63メートルです。以下は第4位、カナダのセイント・ジョーンズの3.32メートル、第5位、アメリカのシラキュースとカナダのケベック・シティで3.14メートルと続きます。


 日本では、昔から「雪国」という言葉が当たり前のように使われてきました。なぜ、雪の世界記録が日本に集中しているのか、その理由は明確にはされていませんが、もしかすると、日本は雪に、あるいは雪を生み出す不可思議な力のぬしに好かれているのかもしれません。


 伊吹山で記録されたのは標高1,377メートルの山頂でした。そして、妙高市の旧関山駅の標高は333メートル。


 では、温暖化すすんだ現在、平均標高が40メートルの東京23区では膨大な雪が降り積もることはないのでしょうか?

 もし、東京で10メートルを越える積雪が発生したら…………



 皆さんを、"if"の世界にご案内いたしましょう。


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